第62話:素戔嗚尊
翌朝になり、朝食の前に一ノ峰に様子を見に転移する。
「あ、おはようございます優希さん!」
「おは……よぅ?」
駆け寄って来る
「どうしましたか?」
「あぁ……いや、いつの間にかおっきくなってるから」
60㎝位だったのが1m位になっているのだ。
「はい! 皆さんが寝ている間に妾の方でこの大木に入っている力の一部を解析して吸収しましたので!」
「そうなんだ、解析が出来たらこの大木のサイズが戻ったりしない?」
山の上だし大木を切り倒すのは危ないだろうし、元に戻せるならそっちの方が良いんだけど……。
「すみませぬ、妾が解析できたのは、優希さんに傷をつけられた表層の一部なのです」
そう言って指を
「つまり、傷付けても少しだけしか解析できないし。かなり時間がかかるって事か……」
「はい……それと、解析すると枯れてしまうので、いざとなると物理的に危険が増してしまうのです……」
指差された枝葉を見ると、確かに一部が枯れている。
「じゃあ伐らないと不味い訳か……」
「そうですね……お手を煩わせしまいすみません」
「仕方ないよ、ツクヨミさんもその為に準備してくれてるみたいだしね」
「はい……」
そう言って気を落としてしまう宇迦之御魂さん。
「そうだ、ここに来たのは朝食を誘いに来たんだ」
「朝ご飯ですか? 妾は食べなくても……」
「いやいや、折角だしコミュニケーションは取らないと。それに、そうやって体があるって事はご飯食べれるんでしょ?」
「は、はい……ですが……」
気にしている感じに大木を見る宇迦之御魂さん、このまま押し問答だと朝食が出来てしまう。
「あーもう、ちょっと失礼するよ」
「はへっ!?」
ひょいと抱えて皆の所に転移する、連れてきちゃえば問題も無いだろう。
「おっ、かえってき……なんかウカノミタマさんおっきくなってない?」
「なんか、一晩かけてあの大木から力を取り戻したみたいだよ」
配膳をしている耀が目を丸くする。俺も彼女を降ろしながら答える。
「へぇ……まぁいいわ、ご飯できたから手を洗ってきてね」
「はーい」「は……い……」
ポカンとしている宇迦之御魂さん多分、こういった事態に慣れてないと思ったんだろうけど、生憎俺のせいでウチの家族はもう慣れっこなのだ。
「という訳で手洗ってきて、朝ご飯食べようか」
手を引いて洗面所に向かうのだった。
◇◆◇◆
「さて……宇迦之御魂さん、ツクヨミさんにどのくらいしたら大木の所に行けばいいか聞いてくれる?」
朝食を食べ終えた俺達は炬燵で、お茶を飲みながらまったりしている。特にユキとセレーネの獣人組は船を漕いでいる。
「は、はい! そろそろ『素戔嗚尊』様が来られるそうです」
その時インターホンが鳴る。
「来たかな? 俺が出てくるよ」
腰を上げようとすると、エアリスに裾を掴まれる。
「メアリーさんお願いします」
「はイ」
そう言って、スッと玄関へ向かった。
「ユウキ様、これからは身分が高い状態で人前に出る事が多くなるので。無暗に出迎えをしない様にお願いします」
エアリスの発言にリリアーナも頷く。
「そうですね、待たせるという行為が価値を持たせる事がありますからね」
「あーそういえば……私もお父さんに言われたなぁ……『相手の位に応じて待たせるという事は相手の格や品位を損なわない重要な行為』なんだと」
「そうなの?」
「うん、例えば身分の低い人と高い人の待ち時間が同じだと高い人から不満が出るんだって」
「面倒だな……」
「公の場だけですから、その為に私室にて会う事がありますから」
「じゃあ、今は良いんじゃない?」
「それは、初対面の相手ですから。初対面の相手でこちらが身分が上ならば待つ方が相手も気楽なのです」
「そういうものなのか……」
そんな事を話していると、襖が開きメアリーと共に少年が入って来た。
「こちらが上凪 優希様でございまス、スサノオ様」
そう言って俺を紹介するメアリー、それを聞いて正座をして頭を下げるスサノオ少年。
「私、素戔嗚尊と申します! この度は姉である月読尊の命にて優希様の剣となるべく馳せ参じました!」
(ん? 剣になる? 力になるの間違いじゃ無くて?)
聞き間違いだろうか……。
「わ、わかった、期待してるよ」
そう言うと、目をキラキラさせて顔を上げたスサノオ君。
「それじゃあ、早速決着をつけるために、皆行こうか」
「「「「「はい!」」」」」
とは言っても、皆で転移をするだけなんだけどね。
◇◆◇◆
「それでは優希様お手を!」
スサノオ少年に言われ手を差し出す、その瞬間スサノオ君と魔力で繋がる感覚が起きる。
「この感覚……式神契約?」
「はい『素戔嗚尊の名において、天地の理に従い、今ここに契約を結ぶ。八卦・五行の力を持って、我が力を我が主の為にしたまえ!』」
契約の
「これって……」
『はい! 私の姿です!』
「うわぁ!? 喋った!?」
『はい! 喋れますので!』
「凄い……私達にも聞こえる……」
「でも、どこで喋っているのでしょうか?」
「ん、どこで発声してるか興味がある」
皆が興味津々に
「っと、それよりさっさと伐ってしまおうか。何か注意点はある?」
『ありません! 思い切りやって下さい!』
「あぁ、わかった……はぁ!!」
剣を大木に打ち付ける、昨日とは違いすんなりと飲み込まれ、そのままぐるりと一回転する。
「凄い……」
宇迦之御魂さんがポツリと呟いた。
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作者です。
【ファンタジー長編コンテスト】中間選考突破してました!!
読者の皆様ありがとうございます!!
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毎日、そしてここまで読んでいただける方、ありがとうございます!
読んでいただける方には感謝しかありませんが!!
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