第36話:土御門さんからの提案
件の問題は数日前に遡る……。
「最近、私の両親が調子に乗ってるんです……」
土曜日の練習後、遅くなったので皆で食事に向かう、その車内で土御門さんに詰められる。
「えっと……そういう事?」
「最近私を、十条の家のどこかに嫁がせる! とか息巻いてるんです」
「うん? それは良い事なのでは?」
「問題大ありです!」
「えぇ……」
よくわかんないけど、物凄くご立腹らしい……。
「そうですわね、私も今の十条の方とは縁談の話が出てもお断りすると思いますわ。まぁ、私の家の基盤はもっと西ですし、恐らくは婿取りが主になるでしょうね」
西園寺さんまでそう言う、というか西園寺さんの家はグループとしては大きいみたいだしそうなると婿取りなんだね……。
そういえば、俺巴ちゃんを嫁に貰ってるけど、会社の権利とか大丈夫なのかな?
「優希さん、大丈夫ですよ。保有株の半分はお父様ではなく私の方に既に譲渡済ですから」
「何でわかるの巴ちゃん……」
「それは優希さんの事ですから♪」
「ともかく、十条の男性は皆初老……既に結婚していてご家庭もあるのです。というか私自分より弱い人には興味ありませんし」
溜息を吐きながら言う西園寺さん、というか皆結婚してるの?
「ちょっと待って、この間来た【六条家】の人は?」
「あれはひ孫ですね、当主は今80歳越えで当人はもう30歳近い様な……」
「マジか……というか30歳で……」
呆気に取られていると、巴ちゃんが笑いを堪えながら俺のことを見ている。
「いえ、優希さんも幼女に手を出していますよね?」
巴ちゃんがそう言うと皆が引いた顔や下種を見る様な目で俺を見て来る。
「誤解ある表現は止めてくれぇ!? 皆の視線が痛い!!」
「ロリコン……」
「確かに、ゲs……上凪さんの異世界でのお知り合いは皆身体も小さかった様な……」
「最低です……」
「その、人の趣味は様々だが……犯罪は止めとけ……」
「弁明させてくれ! ユキにはまだ手を出して無いし!
少なくともエアリスのお爺ちゃんのが在位中には既に真龍になってたというし、劉英さんは子供だったみたいだけど少なくとも長命種だし明らかに長命の次元が違う……。
「まぁ、冗談なのは判ってますわ。巴さんを見ていれば……やっぱり駄目なのでは?」
確かに巴ちゃんは胸こそ大きいけど顔つきや身長は幼い……。
「そ、そんなに見ないで下さい……」
細川君は視線を逸らしていたが、土御門さん達は巴ちゃんの胸を凝視する。
「何食べたら、ここまで成長できるんでしょうか……」
「わからないですわね、遺伝の様な気がしますわ」
「いいなぁ……」
賀茂さんと土御門さんは自分の虚無空間を掌で切っている。
「っと、そろそろお店ですわね」
その言葉通りお店の前に車が滑り込む、少し外れた所にある貸し切りの和食料理店との事、西園寺さん曰く「商談の時、ここは人の目がありませんので」と言う事らしい。
その年である程度の商談を任されてるって、凄いな。巴ちゃんとも話が合ってたし、お嬢様って凄いな。
そんな事を考えながら席につく、すぐに「アルコールは?」と聞かれたので丁重にお断りした。
「お任せで、よろしいでしょうか?」
「「大丈夫だよ(です)」」
「アレルギーは無いので大丈夫です」
「食べられん物は無かけん、大丈夫や」
「ふひっ、匂いの強くない物なら大丈夫です」
それから運ばれて来た料理を食べ終える、そのタイミングで土御門さんの雰囲気が変わった。
「優希さん、先程のお話の続きなのですが……」
「うっ……」
こちらを見る土御門さんいつになく真剣な顔をしている。
「私、【六条家】の権威を落としながら、今のお父様達に無理な結婚をあきらめさせる方法を考えてました」
「そんな方法があるんですの?」
「呪う?」
「それやと、根本的な解決にはならんのやなか?」
「ち、違いますよ、相手に余計な危害を加えるのもどうかと思うので……」
慌てて訂正する土御門さん。でも、何があるのかな?
土御門さんの次の言葉を待っていると、その口からとんでもない発言が飛び出した。
「優希さん、私達を殺してください」
「「「「「は?」」」」」」
土御門さんの言葉に唖然とする俺達。
「優希さんは。死んだ人を生き返らせられる、蘇生を使えるんですよね?」
「いや、使えるけどさ……そんな物騒な事しなくても……」
「でも、以前私達を殺せるとおっしゃってましたよね?」
「それは言葉の綾で、実際に殺せるかとなったら、よっぽどの事をされない限りは無理だよ?」
それに
「確かに……御前試合での人死には罪に囚われないですし、上凪さんへの嫌がらせで私達を呼びつけた【六条家】にとっては確かに外聞が悪いですわね。私もお父様より『万が一の事は無いよな?』と聞かれてますし」
「俺は聞かれんだったが、後継者がおらんくなると流派としてはほぼ失墜は逃れんやろうな」
「わ、私も危険は無いのか両親に聞かれました……」
「と、なると、万が一のことがあれば各家からの突き上げがあるでしょうし、もし万が一の事があれば、燐様を通して三条様等からも【六条家】への弾劾をして貰えると言質を得ました」
そこまで仕組んでるのか、でもなぁ……。
「私は良いですわ、死んで生き返るなんて。文字通り生きてる間に出来る事ではありませんので」
「あぁ、俺も大丈夫や、ティアニールしゃんの訓練で何度か死によるし」
「わ、私は……あんまり痛く無ければ……」
「と、巴ちゃん……」
皆の視線に耐え切れず、巴ちゃんに助けを求める。
「いいと思いますよ、皆さん覚悟はあるようですし……友達の為にしてあげれる中で身分を用いた最大限な活用法だと思いますから」
皆を見ると強く頷く。
「わかった、一応準備だけはしよう。土御門さんは両親と直前まで交渉して、もし駄目そうなら……」
大きくため息を吐いてシナリオを考えるのだった。
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作者です。
【ファンタジー長編コンテスト】中間選考突破してました!!
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