第35話:御前試合当日

「それでは先生、ありがとうございました」


俺と耀が優羽のクラスの担任の先生にお辞儀をする。


「はい、私も上凪さん達とお話しできて良かったです。お二人もまだお若いですし、何かあれば私達に相談して下さい」


にっこりと笑う先生、教師歴も長い為俺達の事も教え子の様に接してくれる。


「ありがとうございます、何かありましたらご相談させてください」


「はい。それでは優羽さん、また明日。時間も遅くなってしまったけど、宿題は忘れない様にね、まぁ心配は無いと思いますが、一応は言っておかないといけませんので」


「はい、先生。また明日です、宿題も家に帰ったらすぐに終わらせますので大丈夫です」


そう言えば、優羽が宿題やってるとこ見た事無いなとは思ったけど、毎日俺達が帰って来る前に終わらせてたんだな……。


――――ヴヴッ――ヴヴッ。


着信があったようで耀がスマホを見る。


「あ、優希。皆、もう着てるって」


「そうか、それじゃあ急がないとな」


それから先生に見送られ、商店街の喫茶店に向かう、そこはこちらの世界に帰って来た鳳さん夫妻が初めた喫茶店で最近皆でお邪魔する様になっている。


「ほら、お父さん。急がないと」


「そうよ優希、夜から約束があるんだし」


商店街に入り、先に歩いていた二人が俺の所に戻り腕を引く、二人に挟まれ引っ張られ進むと喫茶店の看板が見えて来るのだった。



◇◆◇◆

それから夕食と、簡単な俺の壮行会が行われた。その後は京都に戻り、三条さんと共に京都御所に到着した。


「皆、お待たせ~」


控室に到着すると、支度を終えた華組の皆が待っていた。


「あ、優希さん。優羽ちゃんの方は大丈夫でした?」


「うん、お陰様でちゃんと面談には出れたよ」


そう言うと皆の顔がほっとする。


「良い事ですわね、親も中々出て来れませんもの」


「ふひっ、お父さん達は仕事で忙しいのが普通ですからね……」


「そうそう、俺ん家は試合は見ぎゃ来てくるるばってん、保護者参加ん行事は来んだったけんな……」


皆、苦々しい顔をする。やっぱり仕事でも休んで来てくれてたウチの両親や耀の両親には感謝しないとな……。


「そうそう、優羽もお礼を言いたいって言ってたし、今週末にはこっちに春休みの旅行に来るから紹介するね」


「確か、そう言ってましたね。楽しみです」


「そうなんですの? それでしたらおもてなししませんと」


「うぇひっ……小学生くらいの子にお勧めの呪いの本探しとか無いと……」


「そんなら、ウチん名産ん馬刺し食べさせてやらんばな」


「ずるいですわね、それなら鯛めしを……」


わいわいと話す皆、なんかウチの優羽が凄い歓待を受けそうなんだけど……どうしてだろう……。


「と、とりあえず。皆、装備はどう?」


「あ、そうでした、優希さんどうですか?」


土御門さんが胸を張る、狩衣風の魔法鎧に加えポニーテールにまとめた髪、腰には小型の茅の輪を括っている。

移動式の魔道砲台は手に持ってはいないがとある方法が上手くいったので装備は最低限になった。


「うん、似合ってるね。可愛らしいよ」


「っつ!? あ、ありがとうございます……」


褒められ慣れてないのか土御門さんは顔を赤くする。


「西園寺さんはどう?」


「そうですね、動きやすさはありますが……こうもう少し布面積があっても良かったと思うのですが……」


恥ずかしそうにする西園寺さんは、チャイナドレスにスパッツで、自身の機動性を上げた魔法鎧を装備している、それに魔銀鋼ミスリルのガントレットを装備している。

ガントレットには防御魔法を刻み込みガリウスさんの拳すら弾き返せるような仕様である。


「うーん、西園寺さん綺麗だから似合ってるし良いと思うんだけどなぁ……一応刺繍が防御魔法になってるから刃物で直撃受けても弾き返せはするよ」


「そ、そうですか!? むぅ……でもこれ以上装備を重くするのは鈍りそうですわね……」


顔を赤くしたらと思ったら。考え込み、ぶつぶつと言う


「わ、私は特に問題無いです、ただ少し杖が重いのですが……」


賀茂さんはローブに、基礎的な魔力が上がったので身の丈程の杖を装備している。

杖自体に魔石を取り付けると効果を発する常時発動型の強化(硬化)魔法が備えられており打撃武器として扱える、それ以外にも前衛メンバーの藁人形が付いておりすぐに支援が出来る様になっている。


「そうなのか……ごめんね急造品で、今度合う様に作り直そうか」


「ふひっ! ありがとうございます!」


ぎこちない笑いをしながら、精一杯の笑いで喜びを表す、ローブも相まって小動物みたいだ。


「細川君は大丈夫?」


細川君は道着袴のシンプルな魔法鎧を着ている、余計な装飾が付くと動きづらいとの事だ。

武器は古今伝授行平こきんでんじゅゆきひらという家の家宝を持ち出してきた、それにいつもの剣太刀を佩いている。


「あぁ、大丈夫や。すまんなこれも特注品て聞いたんやけど……」


「うん、まぁ特注だけど実は出来上がった品を見てガリウスさんも欲しがったからね結果的にはプラスで良かったよ」


「そうか、そんなら良かったばい」


ほっとした顔をする細川君、それと同時に西園寺さんが声をかけて来る。


「あの、上凪さん少しよろしいでしょうか?」


「うん、大丈夫かな?」


「あぁ、大丈夫や。俺は少し感覚ば慣らすために素振りしてくるばい」


「少しでも違和感あったら教えてね」


細川君は右手を上げてから出て行った。


「それで、どうしたの?」


「どうしたも……例の事ですわ」


「あぁ、その事ね……それは西園寺さんが次第かなぁ……」


二人で西園寺さんの方へ視線を向けた。




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作者です。

昨日はすみませんでした、書いていた分が丸々飛んでしまったので更新できませんでした……。

因みに御前試合編が終わると、優希君がより陰陽師らしい事をするパートに入ります!お楽しみにぃ!!


【ファンタジー長編コンテスト】中間選考突破してました!!

読者の皆様ありがとうございます!!


232万4000PV超えました!!ありがとうございます!

毎日、そしてここまで読んでいただける方、ありがとうございます!

読んでいただける方には感謝しかありませんが!!


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