第31話:浮遊式魔道砲台

「コホン……そ、それじゃ浮遊式魔道砲台の実験を始める」


耳を撫で繰り回され、顔を赤くしたユフィが気を咳払いをしつつ言う。


「は、はい!」


満足げだった土御門さんが、緊張した面持ちになる。


「ユイナ、緊張しないで良い。最初は魔力を込めるところからだから」


「すぅーーーーはぁ……はい!」


深呼吸した土御門さんが真剣な顔に変化する。


「まずはこの魔道砲台に魔力を込めて、浮かせる所から始めようか」


「う、浮かせる? 出来るんですか?」


「ん、この魔力砲台は2種類の魔道具を組み合わせてる。一つは浮遊魔法、もう一つは色に応じた攻撃の魔道具両方が一つの魔道砲台に合わさってる」


そう言ってユフィが魔力砲台に触れる。


「そうなんですね……なんか凄く高度な物に見てきてました……」


「大丈夫、原理は簡単だから。それじゃあ最初は、手に乗せて魔力を流す」


「いつもの練習の通りに流すだけで良いからね」


「はい!」


精神統一した土御門さんが魔力を込める、すると魔道砲台が宙に浮き始める。


「ユウキ、彼女は魔力の流れをコントロールするのが上手。この世界の人でも稀、何かした?」


「うーん……身体強化の訓練と、そういえばさっきまで、向こうの世界で式神召喚の時に龍脈から魔力を引き出してそれを使うって訓練をした様な」


「龍脈? 風水学で使われるエネルギー帯の事?」


小首を傾げる、相変わらずの感情が顔に出づらいが可愛い。


「そうそう、世界に流れてるそれを使って召喚をするんだ」


「ふーん、興味深い……今度詳しく教えて」


「了解、まぁ詳しい人を交えた方が早いだろうし、その人も紹介するよ」


「わかった、それよりユイナが限界みたい」


ユフィが指差すと、顔を真っ赤にした土御門さんが尻餅をつく……直前に受け止める。


「あ、ありがとうございます……」


「流石ユウキ」


目を回してる土御門さん。


「うーん、魔力の使いすぎだね。午前中から色々やってたし仕方ないか」


「ん、魔力切れは仕方ない」


「そうだね、うーん折角だし俺が使って可動実験の続きをしようか」


「お願いする」


「っとその前に……」


土御門さんをお姫様抱っこで持ち上げる、そのまま雛菊さんの元にゆっくり歩いて行く。


「ユイナちゃん大丈夫なの?」


「えぇ、朝から魔法を使いまくってたから、限界が来たみたいです」


「そうかい、それなら私がユイナを看てるよ、まだやるんだろ?」


「そうですね、すみませんがお願いします」


「任されたよ」



◇◆◇◆

それから各種砲台の起動実験や魔法発動、搭載してある魔法鎧の耐久性の確認してから実験は終了となった。


「ん、魔力砲台も、もう少し改良が必要かも」


「そうだね、今のままだと魔力のロスは少ないけど威力が少し弱いもんね」


「うーん、魔法鎧との干渉も起きちゃってるし、そこら辺も改善しないとなぁ……」


三人で使用感や見ていた感じを話し合う、そこから出た改善点をまとめるとユフィと雛菊さんが立ち上がった。


「ん、私の家に来る?」


「そうだねぇ……お邪魔するよ」


「それじゃあ日本まで送るよ、土御門さんもここじゃ休みづらいだろうし」


土御門さんを抱えて立ち上がる、西園寺さん達にすぐに戻ると伝え一度日本に転移する。


「到着っと、実験室までの送りは大丈夫?」


「ん、車で行く」


「了解、事故しない様にね」


「任せて」


そう言って車の鍵を持って駐車場へ二人で行った。


「さてと……」


土御門さんを抱え直す、家には誰か居るし引き継げば良いだろう。


「おかえりなさイ、旦那様」


「うわぁ、びっくりしたぁ!?」


いつの間にか背後に立っていたメアリーが振り返ると同時に声をかけて来た。


「メアリー……いつの間に?」


「旦那様がご帰還なされたタイミングでス」


「気付かなかったんだけど……」


普通なら気配で気付くのに……。


「それは私の特殊スキルですね、クロコちゃんの影魔法を覚えましたのデ」


しれっと何か重大な情報が飛んで来たんだけど!?


「マジで?」


「はイ、とは言っても潜伏とこうして壁を通過する事くらいですガ」


「それでもすごいよ……」


「ありがとうございまス、旦那様の力添えが出来るのが最善ですのデ。それを怠らない様に精進しておりまス」


最近メイドさんが各所に増えた結果、メアリーは紡家に修行に行っているのだ。


「それは嬉しいけど、無理しない様にね。メアリーとも一緒に居る時間増やしたいし」


「は、はイ……」


顔を赤くするメアリー、相変わらずキリッとしている時に見せる照れ顔が愛らしいなぁ……。


「ソ、それデ、そちらハ?」


土御門さんへ視線を向ける、今だに起きない彼女をソファーに寝かせる。


「あぁ、魔法を教えてる京都校の生徒でね。向こうの世界で魔法の練習してたら魔力切れを起こしたから、ユフィ達をこっちに送るついでにウチなら誰か起きた時に相手をしてくれる人が居ると思ってね」


「そうなんですネ、では土御門さんハ、私が看ておきますネ」


そう言ってブランケットを掛けてあげるメアリー。


「ありがとう、他の皆は?」


「耀さん達は皆で中級ダンジョンヘ。綴様からの要請らしいでス」


「そうなの? 何か事件かな?」


「いエ、定期掃討の予定してた人達がインフルエンザデ、人員が足りなくなってしまいそれの穴埋めだそうでス」


「そっかー、そういえば優羽やクロコちゃんは大丈夫?」


「はイ、学校ではまだ流行の兆しが見えないのデ、問題は無さそうでス」


「そっかそっか、そろそろ旅行だし皆体調は崩さないと良いなぁ……」


ウチの学校は基本各種ワクチンを接種している、これはダンジョンに入って感染症を貰わない様にする為や、その逆で何か起きた時に原因を調べやすくするために記録している為だ。


「あノ……優希さン?」


「ん? どうした?」


もじもじとしながら、こちらを見るメアリー。


「そノ、魔力切れなら土御門様はまだ起きないと思いますのデ……」


そう言って隣の部屋に影魔法で引っ張り込まれた。



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作者です。


【ファンタジー長編コンテスト】へ出しております!読者選考期間も終わりまして中間突破が出来ればと思います!


228万1000PV超えました!!ありがとうございます!

毎日、そしてここまで読んでいただける方、ありがとうございます!

読んでいただける方には感謝しかありませんが!!


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感想も新規ブクマもありがとうございます!!

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