|幕間|報告書【改稿版】

 ◇綴side◇


「ふう…疲れたああああ」


 現在私は、春華ちゃん達三人を病院へ送り届け、深夜のホテルで報告書を書いていた。


「出来た! って……こんな報告書誰も信じないわよね……」


 ベットに倒れこみ、書き上がった報告書を読んでも荒唐無稽としか思えない。


「うん! 信じられないわよねぇ!」


 小鳥遊姉妹と巴ちゃんの報告と討伐証明での推察だが、完全にオーガの特異種であると想像できる、優希君は〝イレギュラー〟って言ってたけど。

 それと、後に判明したが、神楽組は戦闘こそしていないものの、パーティーメンバーの一人がその姿を見かけて、撮影をしていたらしい。

とはいっても、移動が早すぎて、カメラに一瞬しか映らなかったので気のせいだと思ったらしい。

確認をすると白銀の体のモンスターの残像が映ってただけだった。

 神楽組の全く詳細のわからないぼやけた映像の結果と、特異種オーガ自体と戦った小鳥遊姉妹の話を聞いても、殆どの部分で報告例がわずか数件しかないオーガと特徴が一致する。


「よりにもよってオーガとはねぇ……しかも両目潰しても額に目が現れて攻撃止めるとかいうとんでも能力があるとか……普通の探索者じゃ勝ち目無いわね……」 


傍らにある通常種オーガの資料を見る、アメリカやロシアのダンジョンで発見された際は十数人の犠牲者を出しながら討伐したという報告。

オーストラリアではダンジョンの外に釣り出した所を十数発の戦車砲で仕留めたという報告されているだけだ。

第三の目を宿したとか銀色の身体だったとか聞かないわね……。

そんなモンスターを、高校生のそれも子供3人で討伐するという異常な事態、こんなの報告しても上層部は虚偽としか思われない。


「でも、実際に見たオーガの討伐証明となる首飾りは本物だったし……」


そして100人規模の自衛隊員を裂いて、くまなくオーガを探したが見つからなかった。


「つまりはオーガ自体が倒されているって事よねぇ……あー! もうわけわかんない!」


枕に顔を押し付け叫ぶ、もう叫ばないとやってられん!!

 それにもう一つ気になる事がある。

優希君の怪我の報告を見てみても、全身の打撲及び骨折と輸血だけで済んでいるという点だ、あれだけの怪我なら内臓の破裂や最低でも損傷をしていないとおかしい。

それに春華ちゃんの服の傷も普通におかしかった、服を脱がされてから下腹部の部分のみ裂かれたとかじゃない限りありえない破れ方だ。


「肉体のみ修復する……まさか……」


 思い当たるのは漫画やアニメ等で見る〝回復魔法〟という存在が頭をチラつく、だけど使える人は居るのだろうか? 魔法使いですら世界に一人しか居ないのに。


「いや? 耀ちゃんの魔法はもしかしたら優希君由来?」


そうなると全部に納得がいくと私の中の【戦術師ジョブ】で強化された勘が騒ぐ……。


「まぁ、鎌をかけてみますか……あんまり考えても仕方ないし。明日、起きてたらだけど……報告書には不確定事項は書けないわねぇ……」


 そんな事を考えてるといつの間にか私の意識はそのまま落ちていた。


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                報告書

                               綴縫衣


編入試験で発生したダンジョン内での強個体の発生と討伐、その後の調査について。


この度の犠牲者

・高校生1名、全身骨折(現在治療中)。

・高校生2名軽傷

その他被害者は無し。


発生した原因は不明、ダンジョン内にて異常事態が発生した可能性が有り。


最大の被害原因である、オーガ変異種かつ〝イレギュラー〟と呼ばれる仮名称【シルバーオーガ】については、不明な点が多く、現時点での他のサンプルが無い為定かではない。


ただ、従来のオーガより発見されている討伐証明の首飾りが大きく従来の物と異なる造形である、よって、この個体はより強固な個体だった事が推察できる。


モンスターの該当ランクは特~上級に分類されると思われる。


討伐者、及び戦闘をした、『上凪 優希』『小鳥遊 春華』『小鳥遊 冬華』は観察対象として新設される探索者学校への編入を申請。



以上を報告とします。        


以下特記事項


上凪 優希(以下:甲)に関しては特級戦力として推察される。


5階層あるダンジョンをほんの数時間で踏破し戻って来る、更にはシルバーオーガ戦では主戦力として戦闘をしていたとの事。


実力は未知数の為経過観察が必要である。

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◇◆◇◆◇◆◇◆

◇優希side◇

目が覚めると、何故か神様に膝枕をされていた。


「あ、起きた。おはよー」

「おはよーございます……」


「全く……ムチャシヤガッテ……」

「やめてください、生きてます……」

「………………」


無言で目を逸らす神様。


「えっ?、ちょ!?、生きてるよね!?」

「結構危ない状態だったけどね……」

「よかったぁ……」

「全く……どうしてあんな無茶をしたんだい?」

「えっと……助けられる相手だったし……何より、見捨てたら一生後悔すると思ったから……」


そう神様の目を見て言うと、大きくため息をつく。


「はぁ……そりゃそうだよねぇ……優希君はそういう人だもんね……僕の時もそうやって簡単に助けちゃって……ほんっっっとお人好しなんだから……」

「あはは……すみません……」


男なのにぷりぷりと可愛く怒る神様、危うく女の子と勘違いしそうになるよ……。


「それで神様、聞きたかったんですが。どうしてあんなとこにシルバーオーガなんて居たんですか?」


俺が聞くと、苦々しそうな顔で口を開いた。


「邪神の影響だよ、僕の力になった君を殺す為に邪神がやったんだ」

「それって……見抜けなかったんですか?」

「お恥ずかしい限りで、僕も未だに本調子じゃないんだ……だから世界の均衡を保つために神力を使っててね。僕の力で歪みを調整してるんだけど、その歪みを直していくとあるタイミングで歪みの特異点が出来上がるんだ、それを利用された……」


苦々しそうに言う神様、じゃしんって頭いいんだな……。


「それであんな奴が生まれたんですね……」

「もうちょっとすると、歪みも直って安定性のある状態が維持できるんだけどね……もう一度は現れないと思う……」

「そうなんですね……あんな奴がもう一度……」

「あくまで可能性の話だから! 可能性の!」

「頑張って下さい……俺は、力になれるかどうかわかりませんけど……」

「あはは……頑張るよ。それと、君の力はこの状況で最良の力とも言える、申し訳ないけど力を借りるかも……」


神様が悲しそうな顔をする、罪悪感が凄い……。


「わかりました、もっともっと鍛えて神様の力になれるように頑張ります!」

「うん、でも。無茶は厳禁だよ、まだ本調子じゃないんだから」

「わかりました」

「じゃあ、頑張ってね~」


ふっと、落ちる感覚と共に現実世界での意識が覚醒する気がした。






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作者です!

今回も読んでいただきありがとうございました!

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