第26話:最悪の敵【改稿版】

 シルバーオーガがニヤリと笑い剣を構える、その直後、瞬く間に顔前まで迫ったハイオーガが剣を振り下ろす。


「優希さん! がぁぁ!?」


 春華の声と共に体が押し飛ばされる、盾で剣戟を弾く音と共に春華と一緒に吹き飛ばされる。


「春華!?」

「言ったじゃないですか……守るって……」


 シルバーオーガの攻撃を防いだ春華の盾と下半身は大きく裂かれ血が溢れだしていた。


「くそっ!『私の前で傷付きし者、私の力をもって癒やせ!その力はすべての傷を直し給え!――パーフェクトヒール!』」


「大丈夫か春華!」


「はい! 優希さんのお陰で大丈夫です!」


 春華と共に立ち上がる、気を抜いては居ない筈だったが考えが甘かった。

 ハイオーガを睨みつける、ハイオーガは瞬く間に回復した春華をや俺を見て自分の予想が外れて無かった事か骨のある敵が現れた喜びか。

 はたまた余裕だと思ったのか「ガアハハハ」厭らしい笑いを浮かべて高笑っている。


「てめえ……」


 剣と盾を強く握り身体強化を体中へ巡らせる、飛び込み、シルバーオーガの持っている盾へ全力で蹴りを入れる。


 ――バキバキバキ!


 盾は金属が入っているが、木製なので割れていく、そのまま踏み台にして首を狙う為体を捻る。


「はぁぁぁ!!」


 ハイオーガも仰け反り首への攻撃をかわして来る、背後へ飛び距離をとる、向き直るとこちらへ向ってきた。


「ガアアアアアア」


 こちらの番とばかりに雄叫びを上げながら突っ込んでくる。


「うおおおおお!!」


 こちらも魔力を高め盾で受け流す……が、流石と言わんばかりの威力で手が痺れる。


「このっ! 馬鹿力め!!」


 返す刃で、敵の柔らかい関節の内側部分を狙い攻撃する、そこまで深くはないがハイオーガに傷を作り血を流させることが出来た。


「ガァァァァァア!!」

「はぁぁぁぁぁぁ!!」


 激しい剣戟の打ち合いで次々と傷を作る、俺の隙が出来るタイミングで冬華の矢がシルバーオーガへ飛び動きを制限する。


「ウガァァァ!!」


 それにイラついたシルバーオーガが岩を冬華に投げ込む、だが春華の盾により全て防がれる。


「ウガァァァ!!!」

「行かせるかよ!!」


 焦れているシルバーオーガが二人の方へ向かおうとする瞬間に致命傷になりそうな場所へ攻撃を差し込む。


「ガアァァァァァ! ガァァァァァァァ!!」

「クソッ! 暴れるだけでもこれかよ!!」


 振り回される剣の内こちらに向かうものだけを弾く、だが見境が無く振り回すので厄介過ぎる。


「確かに! 隙は! 増えたけど!!」


 ――ガキン・ギャリン!


 剣を払ったり盾の上を滑らせる音が響く、その音を奏でながら何合も激しく打ち合う。

 段々と傷が増え、傍から見ると血を流させ、有利に進んでいるように見えるが俺は内心焦っていた。


(決定打を作る隙が、生み出せない……)


 大魔法を使えば有利に働くが撃つためには足止めが必要になる、この攻撃を俺が防ぐだけでも相当なのに、春華一人だけに任せるのは無理がある。

 だからといって短縮詠唱じゃ威力が下がる、それじゃあ奴に致命傷を与えられない……。


(与えるなら渾身の一撃じゃないと!)


「春華! 合わせてくれ! 弾き返して距離を取る」

「はい!!」

「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


 ――ギャギャギャギリン!!


「オマケだぁ!! 冬華!」

「任せて!!」

「グギャアアアアア!?」


 弾き返して無防備になった片膝に俺の投げナイフと冬華の弓が突き刺さる、初めて有効な一撃だ。


 距離を取り息を整える、このままじゃジリ貧だ、体力はシルバーオーガのが何倍もある、このままじゃこちらがいずれ押し切られるだろう。


「やるしか無いか……春華・冬華、こっちに!」


 二人が寄ってくる、視線だけはシルバーオーガから目を離さない様に作戦を伝える。


「出来そうか春華?」

「任せて下さい!!」

「冬華は?」

「当っ然!」

「よし、それじゃあ任せた!」


 三人が離れ各々武器を構える。


「とりあえず視界をもらうぞ!『氷の礫よ、鋭き弾丸となり、敵を襲え!——アイスバレット!』」


 短縮詠唱だが氷のサイズを石ころぐらいの大きさする、これくらいならシルバーオーガも防がないわけにはいかないだろう。

 アイスバレットを撃ち込むシルバーオーガには大したダメージにはならないが無視できる威力じゃない、それに数が多く鬱陶しいのだろう、嫌がる素振りを見せる。


「冬華! 今だ!」

「待ってました!」


 ――ヒュイン!


 冬華に合図を出すと複数の矢が放たれた、凍りの礫の間を翔け抜けハイオーガの左目を奪う。

 その攻撃をに合わせ肉薄した俺の最期のナイフをもう片眼に捻じり込む。


「グギャォォォォォ!!!」

「ぐふっ……」


 視界の潰れたシルバーオーガは闇雲に剣を振りまわしている、それに弾き飛ばされた俺を春華がキャッチしてくれる。


「ありがとう春華……『我が魔力よ、我の傷を癒したまえ――ヒール』」


 痛む腕を回復し立ち上がる。


「春華、守りは任せた!」

「はい!」

「『我が魔力よ、絶対零度の氷槍よ! 我が前に立ちはだからる敵を穿ち、我が敵を凍て尽かせ、その命を奪い去れ――アイストライデント!』」


 魔力が集まり巨大な氷の三叉槍を創りだし構える。


「これで! 終わりだぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 巨大な氷の三叉槍をシルバーオーガへ投擲する。

 視界を奪われた今、核を確実に仕留められる!!


 そしてシルバーオーガとぶつかり合った氷の槍による衝撃波は冷気を撒き散らし、煙を上げながら数メートル引きずり止まった……。





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