第25話:双子姉妹救出【改稿版】

 ともえちゃんから落とし穴の場所を聞いていたのでそこまで走る、穴に着くと底の見えない不気味さがあった。


(底が見えないなあ……巴ちゃんには絶対助ける、って言っちゃったし)


地図に書き込んでもらう間にかけた言葉を思い出す。


「手ごろな石は無いかな……あったあった、ほいっと」


――ヒューーーーカツンカツン……。


石を投げ入れると最初は落下していたが途中から転がる音に変わっている、下は滑り台みたいなので、とりあえず飛び込む。


(最悪は回復するし、こっちのが速いもんな……)


「とう……って!!――――――長いなぁぁぁぁ!?」


音を立てて滑っていく、昔耀と滑った長野のとても長い滑り台を思い出す。

 

「ぐえっ……」


長い滑り台を終えて出口から吐き出される、立ち上がり埃を払うと奥に一本道があり石扉の部屋が見える。

そして、その部屋から戦闘音がする。


(あそこか……よしっ!)


身体強化した状態で助走をつけ扉を蹴破る、室内では大量のゴブリンを捌きつつ、数を減らしてる双子の姿があった。


「このっ!こっちに来るな!」

「はあああああ!」


 弓と盾のコンビだが上手く立ち回りゴブリンを寄せないように立ち回ってる。

だが、どんどん不利な部屋の角へ押し込まれていた。


「二人とも! 助けに来たぞ!」


 ゴブリンの注意を引く為、あえて大声で叫ぶ。


「はぁぁぁぁあ!!」


 突っ込みながらゴブリンを蹴り飛ばし、剣で凪ぎ払う。

背後から仕掛けられたゴブリンの集団は体勢が崩れ始める。


「どけぇぇぇぇぇえ!」


そのまま蹴散らしながら、二人の元へ辿り着く。


「大丈夫か二人とも?」

「は、はい!」

「うん! 大丈夫!!」


二人を確認する、砂ぼこりや細かい傷で汚れているが二人共大きな怪我は無い。


「ギャギャッ!」

「ギュギュギュ!」

「ゴブゴブゴブ!!」


どうやらモンスターハウスらしく次々とゴブリンが這い出て来る。


「二人共、まだやれるか?」

「行けます!」

「だいじょうーぶ!」


元気いっぱいな二人の声に力を貰う。


「俺が切り込むから援護は任せて良いか?」

「っ大丈夫です!」

「まっかせてよ!」


 すると、不思議と身体の底から力が沸いて来る懐かしい感覚、これが【英雄譚】の力なんだろう。


「行くぞ!!」

「「はぁぁぁぁあ!!」」


 飛び込んだ一払いで3体のゴブリンを纏めて屠る、俺の背後を取ろうとするゴブリンは青髪の子の弓で撃ち落とされる。


(すごいな……1発で急所を貫いてる。盾の子も攻撃のいなし方が上手い、しかも隙を見て的確にナイフでダメージを与えてる)


剣を振るい矢が背後を守ってくれる、異世界で賢者のユフィとのコンビネーションを思い出す。

 そのまま3人の連携で、あっという間にゴブリンは倒しきってしまった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 ゴブリンの湧かなくなった部屋で、3人で座り一息つく。

「はぁ……お疲れ様二人共」

「よかったぁ……」

「たすかったぁ~」


時間にして十数分だが、出てくる数が半端ない、途中で青髪の子の矢が尽きてしまい走り回りながら回収をしたりした。


「とりあえず自己紹介からかな? 俺は上凪 優希、巴ちゃんに頼まれて助けに来たよ、よろしくね。」

「私達は小鳥遊たかなし 春華はるかと「冬華とうかだよ!」」


桜色の髪色の子は春華ちゃん、空色の髪色の子は冬華ちゃんだ。


「とりあえず二人が無事でよかった……っと怪我してるのか」


 春華は太ももと二の腕に少し大きめの切り傷が付いていた、いくら大盾の防御力があるとはいえ限界はある。

冬華は足と手に傷が付いていた、掌も絶え間なく糸を引いた為か、マメが擦り切れて血が出ている。

決して女の子の太ももとか見てた訳じゃ無いぞ!?


「あっ、はい……いつやられたんだろう?」

「さっきかな……痛っ」


鞄から救急セットを取り出す春華ちゃん、用意が良いのか色々な応急道具が入っている。


「春華ちゃん、それは今使わなくても大丈夫だよ」

「え? でも?」

「おにーさん、持ち物無いじゃん?」

「二人とも、これから見ることは他言無用でね『我が前に傷つきし者達よその傷を癒せ――エリアヒール』」


 淡い光が周囲に満ちて二人の傷が癒えていく、それと同時に二人の顔は驚きに変わる。


「傷が…」

「ええええええ!?」

「これでよし。じゃあ少し休憩したら、急いで帰ろうか?」

「は、はい!」

「すっごーい!」


それから、春華ちゃんの作った軽食を御馳走になったり、冬華ちゃんが使ったの矢の中で使えそうなものを回収したりしていると綴さんから電話が来た。


『優希君! やっと出た!!』

「あー、はい……すみません……」

『全く! 優希君のせいで後処理が大変なんだから!!』

「すみません……それでですね、二人とも見つけて保護しました」

『本当!? 良かったぁ……』

「とりあえず二人に代わりますね」


携帯電話を春華ちゃんに渡す。


「綴さんから、心配してるから声を聞かせてあげて」

「は、はいっ! もしもし綴さんですか?」


春華ちゃんが電話しながらぺこぺこしている。


「おにーさん、上手く逃げたねぇ~」

「うっ……冬華ちゃんにはお見通しか……」

「それで、何をしたのさ?」

「えっと……後で話そうと思ったんだけどね……」


今の状況と予想される最悪を話すと、飄々としていた冬華ちゃんの頬が引き攣る。


「マジ……?」

「うん……」

「冬華! 綴さんが変わって欲しいって!」

「はーい、春華にも話しておいてね!」

「あぁ……」


そう言って無理した笑顔を一瞬見得たがすぐに元通りになり、春華ちゃんから携帯電話を受け取り、話始める。


「優希さん、冬華とは何を話してたんですか?」

「えっと……実はね……」


先程話した事を春華ちゃんにも話す、すると春華ちゃんの顔が青くなる。

話し終えたタイミングで通話を終えた冬華ちゃんが戻って来る。


「おにーさん、綴さんがカンカンだよ~無事に帰れたらたっくさん怒られるだろうねぇ~」

「うっ……」


通話の切れた携帯電話を受け取る、怒られる事は覚悟していたけど胃が重たくなる。

だけどそれよりも重要な事がある。


「聞いてくれ二人共」


二人の顔を順番に見て目を合わせる。


「先程、二人に話した通り。今この状況は正直言ってかなり悪い、最悪とも言える」

「うぅ……」

「うん……」


二人共明らかにトーンダウンする、俺も心苦しいけど言わないといけない。


「だけど、俺が守るから。俺が死んでも二人は死なせないし、親御さんの元へ絶対届ける。だから心配しなくて良いし、俺をめいいっぱい頼ってくれ」


二人の頭を撫でて目線を合わせる、すると不安な表情が和らいでいく。


「はい!」

「かっこい~!」


冬華ちゃんがからかって来る、先程の明るく取り繕ってた感じとは違う、スッキリとした顔だ。


「もう冬華! 優希さんをからかっちゃだめだよ!」

「え~こんな時なんだし、明るく行こうよ~!」

「全くもう……」


溜息をついて軽く笑った春華ちゃん、そして吹っ切れた様な顔で俺に向き直る。


「優希さん、ありがとうございます。私も優希さんが守ってくれるように、私も優希さんを守ります、ですので帰るなら三人で帰りましょう!」

「そうだよ、私も守られてばかりじゃない。優希さんを助けるから皆で帰ろう!」

「春華ちゃん……冬華ちゃん……。そうだね、後ろ向きな事よりも前を向かないとね!」


死んで帰ったら耀にどやされるし、生きて帰っていう事を言わないとな!



◇◆◇◆◇◆◇◆

それから、簡単な動きの確認や出来るとを共有する、最悪の時は戦う事を考えた訳だ。


「それじゃあ無事に帰るぞ!」

「「おー!」」


 二人を連れモンスターハウスを抜けると広い回廊へ出た、それからゴブリン等の敵とは会わず1階層への階段へ向かう。

だがそこには、今一番見たくない相手が居た。


「クソッ、あと一歩なのに……」


 銀色の体表を備え大盾と大剣を装備した戦鬼、異世界でもかなりの強さを誇るハイオーガの異常進化個体イレギュラーだ。

その成り立ちは好戦的なオーガの中でも、歴戦の猛者が辿り着く境地、その銀の体表には異世界でもかなりの苦戦をした。

今の弱体化した俺じゃ、2回死んだ所で勝てないだろう。


「グルルル……」


 こちらを見据えたシルバーオーガはニヤリと邪悪な笑みを見せる、逃した獲物が再度目の前に現れたからかそれとも、このダンジョン内で、自分に見合う相手を見つけたからか……。


⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤

作者です!

もし良かったら☆や♡貰えると、作者のモチベアップになります!

ですので貰えると嬉しいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る