第24話:編入試験③※残酷描写有り【改稿版】

 綴さんへかけると半コールで出る。


『あ、上凪君!? どうしたの!?』

「綴さん、問題が起きたというか終わったというかなんですが……」

『えっと……とりあえず何が起きたの?』

「上位種と変異種が出ました、それと報告されていた数よりゴブリンの数が数倍になってました」

『ちょっと待って……思考が追い付かないんだけど……上位種と変異種のオークと数倍の数のゴブリンですって?』

「はい、もう倒しちゃいましたけど……」

『は? へ?』


 綴さんが抜けた声をする


「倒しました!」

『えっと……マジ?』

「はい、マジです、それよりも気になった事が一つ」

『気になる事?』

「はい、あくまで予想なんですが。もしかしたらダンジョン内で異変が起きている可能性があります」

『ちょっと待って……それってどういう?』

「捕食のし合いや、ゴブリンの異常発生、ボス個体での変異種や上位種の発生。かなりおかしいですよね」

『そうね……これだけおかしい条件が揃っているのがわかったら気持ち悪いわね』

「一応全員の無事を確認した方がいいかもしれないですね……」

『えぇ……連絡を取ってみるわ』

「それじゃあ俺は戻りますね」

『えぇ、上凪君も気をつけて……』


 電話を切ってポーチへ入れる、帰りも急いで帰るか……。

 来た道を戻る、3階層まで戻って来たが道中の敵と全く会敵しない。

 オークくらいは居るかと思ったのに、居るのはゴブリンだけ、しかも錯乱状態だ……。


(何かに怯えてる? これは不味いかも……)


 異世界で何度かあったモンスターがダンジョンに怯えるという行為。

 これは確実に異常進化個体イレギュラーが生まれてる。

 走りながら携帯電話を出して綴さんに電話をする。


『上凪君、どうしたの? 何か問題が?』

「綴さん、皆への連絡は?」

『全員の無事は確認されたわ、2パーティーは既に戻って来ているわね』

「まだ一組帰って来てないのか……不味いな……」

『どういう事?』

「今3階層なのですが、ゴブリンしか居ないんです。しかも錯乱状態になってます」

『おかしいわね……先に戻って来た子達も3階層で複数のオークは見てると言っていたわ……』

「もしかしたら、恐ろしい個体かかなり上位のモンスターが生まれてるのかも……」

『わかったわ、自衛隊を手配します。上凪君は遭遇しても戦わないで逃げてきてね』

「わかりました、急ぎます!」


 話してる間に1階層まで戻って来た、とりあえずいったん外に出ないと。


「きゃっ!?」


 出口に近づく最中、曲がり角で人とぶつかってしまった。

 身体強化も解いてランニング程度に速度を緩めていたとは言え、そこは男女差があるので押し飛ばしてしまった形だ。


「ゴメンね、大丈夫?」

「いててて……あ、ありがとうございます」


 手を差し伸ばすと、尻餅をついた少女は先程俺を起こしに来てくれた三人組の巨乳の子だ。


「急いでたけど何かあった?」


 怖がらせない様に優しく聞く、すると俺を見た彼女の顔に涙が溜まる……。


「はっ、助けてください!」


 その子は涙が混じった顔で助けを求めてきた、他のパーティーメンバーが見えない……と、いう事は何かトラブルに巻き込まれたのか?


 もしくは異常進化個体イレギュラーに出会ってしまったか……。


「とりあえず落ち着いてくれ、一体何があった?」

「ひぐっ……それが、2階層で見たことない大きな銀色のモンスターが現れて……」


 俺の中で嫌な予感が増していく。


「そ、それでどうしたんだい?」


 最悪の事態を想定しつつ、出来るだけ緊張を出さない様に問いかける。


「1階層まで逃げてきたんですが……二人がトラップに引っかかって、落とし穴に……」

「落とし穴か……下はどうなってた?」

「わからないです、ロープとかは春華ちゃんが持っていたので、一緒に落ちちゃったんです。それで、取りに戻ってる所でした」

「とりあえず、ダンジョンの出口はそこだから戻ろう、地図は持ってるかい? 詳しい場所はわかる?」

「はいっ!」

「それで…君の名前は?」

つむぎ ともえです」

「わかった、巴ちゃん、場所を教えてくれる?」


 地図に場所を記してもらいダンジョンの外へ出る、するとこちらを見た綴さんが駆け寄って来る。


「上凪君! 巴ちゃん!!」

「綴さん! 春華ちゃんが! 冬華ちゃんが!!」


 へたり込んだ巴ちゃん、そして俺を見る綴さん、顔色が青くなる。


「そんな……」

「二人は落とし穴に引っかかったようです、まだ生きてると思うので助けに行きます」

「無茶よ! 上凪君がどんなに強くても。ダンジョンは未知の領域なのよ!」

「わかってます! でも助けられる命を見捨てる程、俺は大人じゃないんです!」

「わかってる! わかってるのよ! この中で、恐らく日本で一番強い事も! でも、あなたのお母さんから頼まれてるのよ!」


 そして、銃を抜いて俺に照準を合わせる綴さん含め職員さん達。


「それは、あの二人も同じですよね……」

「テーザーガンよ、一歩でも動いたら止めるわ!」


 本気の目だ、俺の事を案じてるのもわかる、でも俺も簡単には引き下がるつもりも無い。


「ごめんなさい、後でお叱りは受けますので……『わが魔力ちからよ、砂を生み、石と化し、数多のものを創造せよ——クリエイトロック!』」


 地面を踏み抜き砂を撒き上げる、その瞬間テーザーガンが撃たれる。

 それを砂から生み出した薄い壁で止めダンジョンの入り口に走り出す。


「待って!! 優希君!!」


 その制止を振り切り、ダンジョンの中へ飛び込んだ。



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