第21話:ダンジョンの帰りと学校での反響。【改稿版】

 ダンジョンの外に出ると、もう日が傾いていた。

 とりあえず対象部位を提出しないと……って混んでるなぁ……。

 人の流れに乗り受付の列に並ぶ。


「疲れたわ……」

「疲れたねぇ……」

「お疲れ様二人共」

「上凪君は平気そうなんですね……」

「すごいねぇ……ついこの間まで体育の授業とか嫌そうだったのに」

「そうなんですか?」

「うん、1年生の時とか同じクラスだったじゃん!」


 風間さんが首を傾げる、まぁ俺も耀絡みでやっかみとか酷かったし、空気みたいな生活してたからなぁ……。


「ほら、上凪君って水城さんの幼馴染の」

「あぁ! 水城さんの旦那さんですね!」

「違うよ!?」

「違うんですか?」

「違うからね!」

「でもいつも一緒にいるお邪魔虫と、ウチのクラスのダメ男子達が言ってましたよ?」

「ダメ男子って……」


 うん、まぁ体育祭の借り物競争ですら全部断って動こうとしなかったし。

 仕方なく俺ごと連れてかれ、皆の前の告白ですら「あ、そう言うの良いんで」と食い気味に撃墜したからなぁ……。


「でも、今回のお陰でわかりました。水城さんが好きなだけありますね!」

「へ!?」

「だって、自分の秘密がバレたら危険になるのに、見ず知らずの私をこうして助けてくれましたよね?」

「そうそう、普通だったら見捨ててもおかしくないのに、わざわざ危険を冒してまで来るなんて相当だよ!」


 二人に詰められる、いや俺もそんなにお人好しじゃ……。


「いやでも、助けれるのに助けれないのは寝覚めが悪いじゃん!?」

「そうだとしても、一人で戦おうなんておかしいですよ?」

「それは、助けられるのがわかってたし……自分に出来る事があるならやりたいじゃん?」


 そう言うと二人共、きょとんとする。


「ふふふ……」

「あはは……」

「え? 俺おかしい事言った?」

「いや、ふふふ……面白くて……」

「そうだね、あはは……学校でも、よく皆を手伝ってるもんね……」

「えぇ……そこまで笑わなくても……」


 そんな事を話していたら、俺達の番になった。


「えっと……三人はパーティーですか?」

「あーえっと……」

「いえ、学校の友達です、中で偶然会ったので一緒に出てきたんです」

「私と、加奈がパーティーです!」

「それですと、分けての報酬加算になりますがよろしいでしょうか?」


 受付の人に「はい」と答える二人、でもそれだと……。


「いえ、やっぱり。三人共一緒で、臨時でパーティを組みましたから!」

「「上凪君!?」」

「かしこまりました、では討伐部位をこちらに……へっ!?」


 背負っていた荷物から討伐部位を出す、ゴブリン65体くらいとオークの討伐部位だからかなり多い。


「嘘……」

「凄い……」


 周りもざわざわし始める。


「はい、じゃあお願いします」

「かしこまりました、それでは……」


 職員二人で持ちながら奥に向かう、数が多いので番号札を渡された。


「えっと……上凪君……」

「どうして……」


 二人が聞くのも当然だ、討伐の追加報酬はパーティーで共有される、数は基本的に人数分で割る、そうなると報酬も3分割される。


「いやぁ、風間さんは服買い直さないといけないし、山長さんは家の手伝い休んじゃったでしょ?」

「それは……」

「そうですが……」

「それに、二人が居たからオークも狩れたし!」


 そう言うと周りが余計ざわつく。


「なぁ今オークって……」

「いやいや、そんな訳……」

「デカいゴブリンの見間違いだろ……」


 周りがざわつく中、受付の奥から俺達の番号が呼ばれた。


「えっと皆様、奥のお部屋によろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です」

「はい……」

「えぇ……」


 そして連れて行かれた先はお偉いさんぽい人と綴さんが居た。


「おー、やっぱり上凪君か~」

「綴さん、彼を知ってるんですか?」

「うん、ちょっとね」

「えっと……どうして綴さんが?」

「あはは~いやね、上凪君から連絡が来て迎えに来て職員用のスペースで待ってたらさ『高校生がゴブリン72体倒して、追加でオークまで倒してるんです!!』と言われたらさ、そりゃーねぇ……」


 苦笑いをする綴さん、まぁ確かにそんな数倒したら問題だもんな。


「まぁ上凪君なら大丈夫だね、現時点での高校生日本最多ゴブリン討伐数を出してるし」

「え!?」

「そうなんですか!?」


 山長さんと風間さんが驚く、まぁ俺も今日聞いたばかりだし……。


「そうみたい、良くは知らないんだけどね……」

「ともかく、上凪君だし問題無いよ。手続きをお願い」

「は、はい!」


 そう言って職員さんは走って行った。


 それから討伐報奨金の分配で二人が驚いた顔をしていたり、帰り道中のファッションセンターで買い物に付き合わされたり、大変だった。


「はぁ……疲れた……」


 ベッドに潜り込み耀のメッセージを確認する前に寝落ちしてしまった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 翌日珍しく耀からの連絡が無いので心配のメッセージを送り学校へ向かう。

 教室へ向かうと山長さんが駆け寄って来た。


「おはよ! 上凪君!」


 駆け寄って来た長山さんが放ったその言葉に、教室がざわつく。


「あ、あぁ……おはよう山長さん……」

「昨日はありがとうね! 私も加奈もすっごく助かっちゃった!」

「あぁ、うん……どういたしまして……」


 テンション高めに寄って来る、大型犬みたいな雰囲気だ。

 と、同時にクラス内の視線が鋭いものに変わっていく、特に女子から……。

 針のむしろと言われてたら納得する様な空気だ。


「えっと……恭代たかよ、何してるの?」


 背後から声が聞こえた、風間さんの声だ。


「あ、加奈。上凪君に昨日のお礼を言ってるんだけど……」

「それだったら少し離れてあげなよ……」

「あ、うん……ごめんなさい……」

「ゴメンね上凪君、恭代の性格的にこうなりそうだったから来たんだけど、正解だったね」


 苦笑いをする風間さん、さっと長山さんの口を抑えててくれる


「あ、うん。ありがとう」

「それじゃあ今の内に席に行くと良いよ」

「んーんー!」

「ありがとう。それと、おはよう」


 そう言って席に退散する、解放された長山さんをひっぱって風間さんは教室の外へ出て行った。

 あとに残された俺はクラスメイトからの、「浮気?」「浮気だよね?」「しかも二人……」「あれって3組の風間さんだよね?」「あぁ……結構人気なんだよ……」「どうしてアイツが?」「催眠術でも使えるんじゃね?」「いやいや……そうかも?」、といったひそひそ話に晒されていた。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆

『上凪優希浮気事件』そんな感じの空気が5分ほど経った頃、長山さんと風間さんが帰ってきて来た。


「えっと……長山さんと……」

「風間ですけど……どうしました?」

「あっ、えっと……上凪君と随分仲良さそうだけど……なにかあったの?」


 クラスのゴシップ好きで有名な女子が一人、長山さんに聞きに行った。


「あーえっと……ちょっと待ってね? 上凪君、話しても大丈夫?」


 長山さんが大きな声で俺に聞いてくる、仕方ないか……。


「えっと……全部じゃ無ければ大丈夫」

「おっけー、えっとね。昨日私と加奈が二人でダンジョンに行ったの」

「ダンジョン? ってあのダンジョン?」

「そうそう、今話題になってるダンジョンね、そこで私と加奈がモンスターの不意打ちに遭って絶体絶命になっちゃったの」

「絶対絶命って……」

「あーうん……オークとゴブリンに囲まれちゃってね、突き当りの部屋だったから逃げ道も無かったのよ」


 二人が深刻そうに言うと、聞き耳を立てていたクラスメイトが息を呑む。


「それでね、そこに上凪君が助けに来てくれたんだよ」

「しかも、強いのなんの、一人でオークを相手取ってさ。お陰で私達は体制を立て直して危機を脱した訳なんだ」

「へぇ~」


 二人の説明にクラスメイトの視線がこちらに向く。


「えっと……上凪君、今のって本当なの?」


 近くにいた男子が聞いてくる。


「あーうん……本当だよ……」


 そう言うとクラス内が突如湧き、担任の先生が来るまでお祭り騒ぎだった。


⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤

作者です!

もし良かったら☆や♡貰えると、作者のモチベアップになります!

ですので貰えると嬉しいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る