第17話:ドーモ、ゴブリン=サン主人公です。 ※残酷描写有り【改稿版】

――現在1階層――

 ダンジョン内をゆっくり歩いていくとゴブリンが居た、そろりと近づき剣を抜き盾を構える。

するとこちらに気付いたのか「ギャッギャッ」と騒ぎ始める。


 (まずは小手調べ……盾でいなしながら戦おう……)


 じりじりと近づいていくと木の棒を振り上げゴブリンが飛び掛ってくる、一直線に飛び掛ってくるためいなすのは簡単だ。


(棒が盾に当たる瞬間、左に弾く!)


――バキンッ!


 弾いた木の棒が鈍い音を立てて折れる、隙を見せたわき腹へ魔力を込めた足で蹴り飛ばす。


「ブグギャ!」


 骨の折れる感触が足に伝わってくる、数メートル飛んだゴブリンの方を見ると口から緑の血を流しながらよろよろと、立ち上がり這這の体で逃げ出そうとしている。


「逃がさない!」


 ゴブリンに追い付き右手の剣で首を落とす、短い断末魔を上げて頭が転がった。


「ふぅ……思ったより体は動くね。おっと先に討伐部位を取っちゃわないと」


落とした首から討伐部位の耳を切り落として持ってきていたビニール袋に入れる。

その後は胸部にある小さい魔石を取り出す。


「この世界は魔道具が無いから魔石は使わないだろうけど、取っといて損は無いからね……」


 魔石を取り終えると、ゴブリンの血糊をボロボロのタオルで拭う、その間にゴブリンの体は灰になって消えていく。ダンジョンに出るモンスターは、ダンジョン内で死ぬと灰となってダンジョンへ還元される。

外に出ると死体は残るんだけど、燃やしたりしないといけないから処理が面倒なんだよね……。


「さて、次へいくか……」


 ヒカリゴケで明るい通路を奥へ進む、それからしばらくの間モンスターとは出会わず次の階層への階段が現れた。


「今の時間は……18時30分か……まぁゴブリン一匹だけだしな……」


 ぼやきながら下の階層へ降りていく。



――現在2階層――

降りてからも一向に敵と遭遇しない……


「おかしい……敵が居ない……」


 普通のダンジョンは割りと敵が多く出てくるし、雑魚はリポップは早いんだけど、全然見ない。


(これだけ会わないなら早めにもう1階下に降りるか……)


 少し足早に下の階層を目指す、浅い階層であれば迷い辛い構造となっているためササッと進む。


(直近で人が通ったのかな……でも1階層丸々というのはおかしいよな?)


そんな事を考えていると、3階層への階段が見えた、モンスターと会わないせいで15分程で踏破してしまった。


――現在3階層――

3階層へ降りると早々にゴブリンと遭遇する、今度はナイフと槍を持った2匹である。


「初心者に武器持ちは厳しいだろうなぁ……」


 とりあえず勘を取り戻す為、盾を剣でガンガンと音を鳴らしながら近づく。こちらに気付いたゴブリンは臨戦態勢になる。


「ギャウギャウ……」

「ギャギャ!」


 槍ゴブリンはそこまで間合いを計ることに慣れていないのか闇雲に槍を突き出してくる。

それを盾でいなし、無防備になったゴブリンの首へ剣を滑らす。


「ギャウッ!?」


 刃は簡単に吸い込まれゴブリンの首が転がる、そのまま踏み込みナイフを構えたゴブリンを体重を乗せ、魔力を込めた盾で弾き飛ばす。ゴブリンは3メートル程吹き飛び転がる。


「はぁっ!」


 起き上がり逃げようとするゴブリンへ、ゴブリンが落とした得物ナイフを投擲する。

風切り音と共に飛んだナイフは、そのまま後頭部に吸い込まれ命を散らした。

 それから2体分の討伐部位と魔石、さらに落ちていたゴブリンのナイフを回収する、やはり投げ物はあって困らないなぁ……。


(まぁ期せずしてナイフが4本手元にあるか……次の戦闘で使ってみよう……)


進んでいくと今度は槍と棒を装備したゴブリンが歩いている。


(この距離なら……行けるか?)


魔力を込めたナイフを構え2本投擲する、1本は綺麗に頭部へ吸い込まれもう1本は目を潰す。


「やっぱり、連続で投げると後者は狙いがブレる……なっ!」


もう1本投げ残ったゴブリンへ致命傷を与える、動かなくなるのを確認するとナイフを回収する。


「さてと、魔石と討伐部位を回収して……っと」


突如聞こえた足音に息をひそめる、どうやら逃げてきた人が居るらしい。


「クソッこの階層までは余裕だったのに!」

「良いから走れ走れ!」


どたどたと走っていく二人を見送ると、奥から5匹のゴブリンが走って来た。


(5匹か……あれをやってみるか……)


 体の筋を痛めないよう伸びをしてから、身体全体に魔力を行き渡らせる、いわゆる身体強化魔法という奴だ。


「こっちだ!!」


 限界まで引き絞った弓から放たれた矢の様に飛び出しながら、1体目に先ほど拾ったナイフを投げ込む、ゴブリンはこちらの急襲に驚いていたが狙い定めた1匹目には頭部にナイフが刺さりその衝撃で吹き飛ぶ。

そこから剣に持ち替え跳躍する、4体の真ん中に入るとぐるりと体を回転させ、そのまま4匹纏めて両断する……つもりだった。


「あちゃー、駄目だったか……」


3体は綺麗に切れていたが1匹は半分で切り口が止まっている。


「グギギ……ゴブッ……」

「ごめんな……」

「グヒッ……」


すかさず剣を引き抜き止めを刺す、短い断末魔を上げ崩れ落ちた。


「うーん、向こうだと7~8匹は綺麗に切れたんだけどなぁ……」


やはり、腕前……というか練度が落ちている……。

斬り痕を見ると3体目から斬り口がガタガタだ。


「もっと、鍛えないと……」


そしてゴブリンの討伐部位と魔石を剥ぎ取るとお腹が鳴った。


「腹減った……今何時だ?」


 時計を確認すると、現在時刻は19時30分、直行したし軽食を食べていないこともありお腹が空いてるので戻ることとする。

 それから身体強化の訓練ながら道中で出会うゴブリンを1撃で倒す、魔石と討伐部位を回収しながら外へ出ると20時30分だった。

 詰め所に戻るとあの男性とは別の男性が受付をしていた。


「戻りました、これ討伐部位です」


 ゴブリンの耳が入ったビニール袋を渡すと係りの方はびっくりしていた。

 初日にソロでこれだけの数を倒してるのは初めてらしくとても驚かれた。


「シャワー等は無料で貸し出しておりますのでもし良かったら使って下さい」

「あ、はい。ありがとうございます」


 その後、施設内でシャワーを借り、汗で汚れた服を鞄に詰める。

 それから寄ったファミレスで夕食を済ませて帰宅する、蒸し暑い部屋だったのでクーラーを入れる。


「べったべただな……シャワー浴びるか……」


こんな時耀が居たら風呂沸かして待っててくれるんだろうなぁ……。


「ん? よくよく考えるとそれって……」


じりじりと顔に熱が灯る、やばい暑いな……。

クーラーをガンガンにしてシャワーを浴びる、部屋に戻ると綴さんからメールが入っていた。


『やっほー優希君。以前言っていた試験の日なんだけど、〝3週間後〟に決まったよ~。詳しい場所や移動の手続きは直前になっちゃうけど大体1週間前には決まると思うよ!』


と、いうことだった。


「3週間かぁ……まずは体を鍛える事からだな……」


そのままベッドに倒れ込むと、魔力と肉体の疲労で眠気が襲ってきた……。


「ぐぅ……」



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