第36話:奴隷と冒険者

プロローグ後半からの続きです。


レギル、ライラと合流した俺達は皆が使っている屋敷にやって来た。


「まぁ、これが俺達の屋敷です」


苦笑いして言うレギル。


「まぁ全部でかなりの数になりましたからね、どうしても狭い家を複数借りるより、こうやって一つお屋敷を借りた方が安上がりですから」


ライラが説明してくれる、家の相場はわからないけどしっかり者の彼女が言うならそうなのだろう。


「という訳で、まずは入ってくだせぇ、奴隷の皆も待ってますぜ」


すると家の扉が開いて奴隷の皆が出て来る。皆一様に顔色が良くなっていて健康そうだ。


「丁度出て来たみたいね、行きましょう」


皆で門を開け、中に入る。対面すると少し気まずい空気が流れる。


「えっと……元気だった?」


「はい! ご主人様に助けていただいて以降はレギル様、ライラ様の下で冒険者として研鑽を積まさせています!」


イキイキとして答える奴隷の男性、他の皆の顔を見ていると不満はない様だ。


「そうか、それは良かった。少し心配ではあったんだ」


「いや、そう言うなら見に行ってあげなさいよ……」


アミリアに釘を刺される、確かにそうなんだけど……。


「あはは、聖女様は手厳しいですねぇ。まぁそうは言ってもこの家を借りる事が出来たのもつい数日前でして」


「それまでは、ダンジョンとギルドの往復だったからねぇ……」


「そうなんだ、それで皆階級は?」


「はい! 俺・フィル・エナ・シドリスは中級で、それ以外は皆中級試験前です」


嬉々として答える奴隷の彼、そう言えば自己紹介してなかったな、後でで良いか。


「そうなのか……わかった。立ち話もなんだし中で話そうか」


「わかりやした! それじゃ皆、中で旦那をもてなす準備の続きだ!」


レギル言うと奴隷たちは中に入って行った、それを確認した後はライラに向き直る。


「えっと……俺、凄さがイマイチ伝わらないんだけど……どのくらい凄いの?」


ライラに話を振ると、困惑した表情をしつつも話し始めてくれた。


「えっと……約一月で中級は異例よ、私でも三カ月はかかったもの……それに皆農村や平民の生まれでこれはありえない。はっきり言って異常だわ」


「そうなのか……後で一人一人と話し合ってみるか」


「そうしてみるのが良いわね、カミナギさんなら何かわかるかも」


「わかった、ありがとう。それと彼女ロップルさんが職人ギルドを見たいらしいんだ。案内を頼める?」


後でぽけーっとしていたロップルさんがいきなり名前を呼ばれて慌てだす。


「えぇ、獣人だし絡まれるだろうからね……私の肩書があれば不用意な事は起きないと思うんだけど」


「そうしたらこれを使って。居場所がわかると言われたからね」


昨日ウルベリックさんから貰った防犯魔道具を手渡す。


「あら、こんな高価なもの……まぁカミナギさんだからね……」


「ちょっと待て、その認識は酷くないか?」


「ユウキだし」「ユウキさんですし」「聖騎士様ですし」


相変わらず信頼性? の無さだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆

屋敷に入った後はお茶をしたり軽く食事を摂ったりしていた。


「という訳で、これから個人面談を始めます」


「はいっ!」


話に一区切りが着いた所で俺はひとりひとり面談をする事にした。どうせこの後の事とか、個人の話じゃレギル達には話せない様な事もあるし簡単な話だけだ。


「えっと、ラディー君はこれからどうしたい?」


「どうしたいと言いますと?」


むっ、質問が悪かったな……これじゃあ漠然とし過ぎだな。巴が居たら呆れられただろう。


「えっと、これからの生活の事だね。このままここで冒険者を続けてもいい、実家に帰ってもいい。勿論、冒険者以外の仕事がしたいならしてもいい。奴隷時契約自体は今日破棄するから自由に生きていいんだよ」


そう言うと目をまん丸くするラディー。


「えっと……俺は正直この生活が気に入ってます。それに実家に帰っても畑は継げないし。安い金額じゃないとはいえ売られた家に帰るのは嫌です。それと……実は……」


そこで言い淀むラディー、どうしたのだろう?


「何か言い辛い事があるのかい?」


「っ……!」


言いだそうかといった感じで悩むラディー、数分間沈黙が支配している。そして意を決して顔を上げると俺を見て決心したと言わんばかりに口を開く。


「えっと……ライラさんと結婚しようと思ってて……(ボソボソ」


ちっさ! 声ちっさ!! 最後の方は俺じゃなきゃ聞き逃しちゃうよ!。


「えっと……確認しよう。ライラとはそういう関係なの?」


「そういうって?」


察せよ! 鈍いなぁ!!。


「えっとね……一夜を供にしたというか……」


「はい、それはもう何回も」


「何回もぉ!?」


「え? おかしなことでしょうか!?」


い、いや? 結婚予定なんだもんな、俺の世界とは常識が違うのも当然だ。


「おかしくないだろうけど……婚前交渉は早急過ぎやしないか?」


そう言うとラディーが顔を赤くする。


「婚前っ……そんなことしてるわけ無いじゃないですか!!」


「え? だって一夜を供にしたって」


「野営の事ですよ!!」


「あっ、そういう事か……すまんすまん」


その後何故かラディーからの恋バナを受けていた。



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