第12話:前線砦作成③

前線基地の予定地点まで来た俺は目印用の杭を地面へ穿つ。


――ズズンッ。


「うへぇ……これを120本かぁ……」


予定だと4面で120本の杭を打ち、それを起点に左右に石を組んでいく予定だ。


「杭の正面は堀だから……とりあえず刺して行こう」


空中から杭を投げて地面へ刺していく、毎回凄まじい音が鳴っている


「しかしこれ、大群相手に仕えそうだよなぁ……よっと!」


――ズズンッ。



◇◆◇◆◇◆◇◆

それから1時時間ひたすらに杭を投擲する、意外と疲れるなこれ。


「後、半分! どっこいしょー!」


――ズズンッ。


「ふぅ……」


普段使わない筋肉を使うので汗をかく、少し休んでから再開するか。


椅子とお茶を出しながら一息ついていると声が聞こえた。


「おーい聖騎士どの~!」


昨日のドワーフさんを筆頭に職人の皆だが走って来た。


「あれ? 皆さん? 早いですね」


「おう! あんなすげえの見せられちゃ気になってしょうがねぇ!」


「あんなのどうやってるんだ?」


「馬鹿、聖騎士様だぞ! きっと凄い力を持ってるんだ!」


「おめぇそれじゃ答えになってねぇべ!」


「なんだとぉ! 表出ろや!!」


なんか揉め始めた、走って来たのに元気だなぁ……。


「聖騎士様、お疲れ様です」


「護衛ありがとうございます」


「いえいえ、連日の聖騎士様による哨戒のお陰で道中は安全でしたよ」


「それなら良かった。よし、のこりをやっちゃうか……」


「お手伝いは……流石に無理ですよね」


「そうだねぇ……近づかないでもらえる様に徹底してくれれば良いかな」


「了解しました!」


そう言って敬礼をした後戻って行った。


「さて、もうひと頑張りだな……」



◇◆◇◆◇◆◇◆

「聖騎士様次はこっちを頼みます!」


「おう! その次はこっちを頼むべ!」


「おーい、聖騎士様~!」


「ちょい待て! 何で俺こんなにコキ使われてるの!?」


杭を刺し終えた俺は、皆に頼まれセメントと漆喰作りをしていた。


「そりゃぁ聖騎士様すげぇんだもんなぁ、コツを教えんでも技術を習得しよる」


「そうそう、聖騎士様俺の数倍は早いんだぁ」


「そりゃおめーが遅いだけだぁ~」


「んだとぉ! おれは丁寧なんだよぉ!」


また先程の二人が喧嘩をしだす。


「お前達! 喧嘩するなら街へ返すぞ!」


そこに何故かついてきたグランツさんが怒り出す、というか仕事はどうしたんだ……。


「「はいぃ! すみませんでしたぁ!!」」


「全く……幼馴染とはいえあまり聖騎士様に、みっともない姿を見せるんじゃない」


へぇ……なんかいがみ合ってるっぽいけど本当は仲が良いんだな……。


「はい、じゃあこれ出来たんで塗って来てください」


「すまない……こんな雑事まで……」


「まぁ疲れてますけど、これ位なら魔法で出来ますから」


右手でセメント、左手で漆喰を攪拌している、人力ミキサー車になった気分だ。


「ギルマス! ここのチェックお願いします!!」


「わかった! それじゃあ聖騎士様、行ってきます」


壁を塗っていいる職人さんがグランツさんを呼ぶ、すると隣で鉋がけをしていたグランツさんが俺に一礼して歩いて行った。


「まぁ皆働いてるし、俺だけ休むのも気が引けるからなぁ……」


攪拌を終わらせたバケツを担ぎ、先程足りないと言っていた職人さんの元へ向かうのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆

◇アミリアside◇

「ぐはぁ!?」


「はぁ……はぁ……次ぃ!!」


剣戟の音が止み、近衛兵を倒して私は叫ぶ、今は模擬戦を連続でひたすらに行っている。


「聖女様……もう4時間も休みなくやっております、そろそろ休みませんと……」


「はぁ……はぁ……ユウキが時間を稼いでいてくれるのに私が遊んでなんて居られないわ……『——回復ヒール』」


回復魔法で身体の痛みを取り、剣を構える。対戦相手の近衛兵も私の姿を見て剣が揺れている


「ほら! いくわっよ!!」


「うわぁ!?」


――ガキンッ!!——ガランガラン。


私の剣戟で相手の剣が弾き飛ばされた。


「す、すみません……流石に手が……」


よく見ると相手の兵士は手に力が入らない様だった。


「こちらこそごめんなさい、『——回復ヒール』」


淡い光に包まれた相手の傷が回復していく


「他の皆様も回復します、並んで下さい」


ユウキが以前見せてくれたように片っ端から回復していく、30人程なのでそこまではしんどくない、寧ろ最近は能力が上がっているのか魔力も余裕が残るくらいだ。


そして全員を回復し終えると皆に一礼して部屋へ戻る。


「聖女様、お湯の支度ができております」


「ありがとう、助かったわ」


「はい、それでは失礼いたします」


一礼して出ていくメイドさんお言葉に甘え、お風呂の部屋へ向かう。


「はぁ……ユウキ……」


湯船に浸かりぼーっと考える、今頃は何してるんだろうとか怪我してないかなとか考える。


「まぁあのユウキだし、心配するだけ無駄よねぇ……」


昨日は伝令からド派手に地面を壊したり森を燃やしたりと破天荒な事をしていると聞いて笑ってしまったのだ。


伝え聞いた所によるとあと二日で兵が集まるらしい、そこから1日休養を入れて第一軍から出発するらしい。


「後4日かぁ……はぁ……」


少し手の皮が厚くなった部分を無意識に撫でる、王族時代とも孤児時代とも違う剣ダコに不思議な感覚を覚えた。


「待ってなさいよユウキ、驚かせてやるんだから! くちゅんっ!」


どうやら冷えてしまったらしい、風邪をひく前に布団へ入ろう。


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