第9話:会敵と殲滅②

残存の敵を砦の兵達に任せ俺は森までやって来た。


「さて、それじゃあ『——風切』と『躁血魔法』!」


風切で斬った木を躁血魔法で倒れない様に数珠つなぎにしていく。


「それで……生木だと燃え辛いから……『——抽出』!」


周囲の木から水分を抽出する。周囲の気からパキパキと音が鳴る。


「おー良い感じ……ってこれ堅い木だよな……まぁ良いか」


そしてわざとらしく木を無くして獣道を作り誘導する。


「よし……これで準備完了。後は上手く引っかかってくれよ……」


準備を終え日が暮れ始めた頃、草を掻き分け進む音が聞こえた。


(軽く仮眠も取れたし、魔力も結構回復した。これなら何かあっても対処が可能だな。


「魔獣が先行して、その後ろを歩兵が道を均してるのか……」


歩兵の大群が歩き踏み固められた所を騎兵もどきが進んでる。


「これなら歩兵部分はほっといて、騎兵とその後続を狙うか」


メモに書き込みつつどこで仕掛けを発動させるか考える。


(騎兵の後はチャリオットとあれは工兵?)


鈍重な採掘装備を備えた大型の兵士が進む、どう考えもこの世界の技術と会わない部分がある。


「向こうのが技術が上なのか? だとしても明らかにおかしいよな」


手回し式のドリルなんて中世には無いはずだ。そんなものを使われたらこの世界の石を積んだ建築は簡単に瓦解する可能性がある。


「騎兵の通った半分くらいで発動して後続を丸々潰せればいいか」


後は自力でなんとかしよう!


「それじゃあ躁血魔法、解除!」


――――バキバキバキバキバキ。


「「「「「ギャアアアアアア!?」」」」」


「さて、ここからが本番だ……『溶け落ちた太陽よ、その力を表しこの地を地獄に変えよ――零落れいらく陽恵ようけい』!」


大きな炎球から零れ落ちた炎が地面を、森を焼いて行く。


「ギャウ! ギャウギャウ!!」


混乱している敵の中で一際豪華なチャリオットに乗った敵が騒ぐ。


「残念だけど……逃げ場なんて無いよ? 二回目の躁血魔法、解除!」


「「「「「ギャアアアアアア!!」」」」」


混乱しているのもあり、一度目より効果的に被害が出る。



「案の定、指揮系統が頭の兵士のみだけだからもうぐちゃぐちゃだな」


後は最後尾に向かって……後ろから追い立てれば終わるかな……。


「とりあえず『——広域探知』……あれ?」


敵が散り散りになって逃げていく……。


「これじゃあ殲滅するのが大変なんだけど……」


これなら兵士の皆でも倒して回れるでしょ。


「とりあえず今日はこの火を消して休むか……」


轟々と音を立てて燃える森を眺めながらため息をついた。




◇◆◇◆◇◆◇◆

「おはようございます! 聖騎士殿!!」


翌朝唐突な大声で目が覚めた。


「あ゛~うん……おはよー」


まるで筋肉痛から痛みだけを抜いた日の様な感覚で身体が重い。


「めっちゃだるい……」


久々に魔法を滅茶苦茶使ったから仕方ないんだけどね。


「大丈夫でしょうか?」


「あぁ、大丈夫、最近は魔力の上限が上がりまくってるからゴッソリ消費する事は無かったから、こうして思いっ切り使うと反動がね……」


「お食事が出来ておりますが、どうなされますか?」


「あー昨日の報告も聞きたいし行くよー」


「畏まりました! では食堂でお待ちしております! 案内は必要でしょうか?」


「大丈夫だよー。離れの1階だよね?」


「はい! ではお先に向かわせていただきます!!」


そう言って指揮官は退室していった。


「うーん……とりあえず朝食食べてから動きを考えるか……場合によっては掃討は兵士に任せて、この先に砦奪還用の拠点作りに行っても良いからなぁ……」


都合のいい事に昨日切りまくった木材が滅茶苦茶あるので、簡易の拠点づくりは可能である。


「問題は壁の強度だよなぁ……後、防火性が欲しいし……」


となると漆喰だろうか? 日本のお城でも防火用として使われてるのは小学校の修学旅行で見に行ったから覚えてるし。


「あの時の姫路城めっちゃ綺麗だったよなぁ……」


と思い出しながら着替えを終える、寝癖が付いてるけど後でで良いか。


部屋を出ると丁度通りがかった兵士の青年が心配そうな顔をしている。


「聖騎士様……お顔の色が相当に悪いようですが大丈夫でしょうか?」


「あー大丈夫……魔力の使い過ぎだから……」


そう言うとあぁ、と納得された。


「やっぱり一般の兵士まで伝わってるの?」


「はい! 聖騎士様が森を焼き数千の敵を葬ったと!」


「えぇ……でもそれだけ聞くと誰も嘘だって疑問に思わないの?」


そう聞くと青年は苦笑いをしながら笑っている。


「確かに、最初聞いた時は耳を疑いましたが、散り散りになって森から出て来る敵がとても多くこの砦もに歩兵が多く押し寄せたので納得しました」


「え? 大丈夫だった?」


「はい! いつもならあの数は面倒なくらいなのですが。あいつら何か恐ろしいものから逃げる様な感じでしたから!」


「あはは……そこまでだったんだ……」


思わず乾いた笑いが出てしまった。



⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤

157万7000PV超えました!!ありがとうございます!

毎日、そしてここまで読んでいただける方、ありがとうございます!


♡も3万5000超えました!!毎日ありがとうございます!!

☆1130超えました!!感謝!!

新規ブクマもありがとうございます!!

ブクマも4990超えました!!

減ったり増えたりで5000が遠い!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る