第7話:優希動く

王様たちとの夜会を終えた3日後、俺とアミリアはいつもの訓練と模擬戦を終えて自室へ向かっていた。


「うぅ……今日も3分切れなかった……」


肩を落として隣を歩くアミリア、そうは言っても一昨日までは訓練後寝落ちしてたのに比べれば凄い成長だ。


「着実に成長はしてるから落ち込まないで良いよ、今だって隣歩けてる位だし」


「う~、それはそうだけど~」


唇を尖らせてぶーぶーと抗議するアミリア、背中で寝られると胸押し付けられるのがなぁ……。


【潜在強化】によって身体的成長もしているアミリアは若干肉付きが前より良くなってきている。かといって太ってると言うよりはアスリートの様な肉付きに変っていた。


「ね~ユウキ~おんぶ~」


疲れたのか甘え始めるアミリア、腕にぶら下がって来る。


「聖女様! 聖騎士殿!!」


背後から焦った声が響く、振り返ると近衛の1人が慌てて走って来ている。


「!?」


「どうしました?」


慌てて立ち上がり外向けの顔を作るアミリア、それを俺が前に立って隠す。


「将軍ヴァリシウス殿が戻られました! ですが問題が起きてまして!」


「将軍様ですか? それと問題というのは?」


バッチリと整えたアミリアが背後から顔を出す。


「ヴァリシウス将軍の言によりますと最前線の砦が崩壊、駐留軍は大打撃を受け撤退。更には副官や将軍の近衛部隊が壊滅しました……」


「っつ!?」


「そうか……将軍さんの傷は?」


「それは……」


気まずそうに口を閉じる彼の様子を見るに、余程酷いのだろう。


「わかりました、将軍さんの所へ連れて行って下さい、それと彼の部隊の人達を集めといてください」


「畏まりました! 将軍は謁見の間におります! 私は医務室で状況確認をしてきます!」


「ありがとう、使いっ走りになっちゃうけど頼むよ」


そう言うと彼は喜色を浮かべ返事をした後、走って行った。


「じゃあアミリア行こう……あれ?」


「ユウキ! 早く行くわよ!!」


いつの間にか遠くまで行っていたアミリアが振り返り声を上げる、いつの間に……。



◇◆◇◆◇◆◇◆

謁見の間に入ると片手片足を無くした魔族の男性が息も絶え絶えになって横たわっていた。


「おぉ、聖女様・聖騎士殿!」


「将軍さんが戻ったと聞きまして」


「えぇ、ですが……」


女王様が将軍を見る、痛々しい姿に悲しそうな顔をする。


「君達が聖女様と聖騎士殿か……このような醜態ですまない……」


申し訳なさそうな顔でこちらを見て来る将軍さん、止血している布が変色している、恐らく傷を焼き固めたのだろう……。


「大丈夫ですよ。それと、失礼しますね」


「んな!?」


「「え?」」


空間収納アイテムボックスから出した刀で患部を切り落とし、回復魔法を同時にかけ、治療する。その光景に皆唖然としている。


「ふぅ……これで両手足と傷は治りましたね」


「い、いや……え?」


「そうだ、神経繋がってると思うんですが、手足動きます?」


「あ、あぁ……動く、動くよ!」


涙を滲ませて立ち上がる将軍さん。


「聖騎士殿……貴殿は一体……」


「そんな……人の身体がここまで綺麗に治るなんて……」


「流石ユウキ♪」


「そ、そうだ!部下に何名か私と同じ様な者が居るのだが……」


「それじゃあ、先に医務室で皆さん治して来ますね」


「あ、あぁ……」


「頼みます……」




◇◆◇◆◇◆◇◆

その後医務室で兵士たちを治療した後、謁見の間に戻ると国の重鎮や軍務宰相達が集まっての軍議が始まっていた。


「そうか……最前線はもう……」


「はい……ロムレも私を逃がす為に……すみません軍務宰相殿」


「そうか……だが貴殿を救えたのならば、我が甥も心残りは無かろう……」


軍務宰相が酷く落ち込んだような顔をしていた。


「それで、現時点での戦況は?」


「はい、第二砦が半壊。撤退を含め第三砦へ戦力の集中を行っております」


「わかった、すまない聖女殿……初陣がこういった準備もままならぬ、悲惨な状態の防衛線で……」


「いえ! 大丈夫です! ユウキが居ますし!」


「い、いや。いくら聖騎士殿が優れているとはいえ相手はかなりの軍勢、一人の力では限界があろう……」


「大丈夫です! ユウキが居ますので!」


「その聖女様が時折見せる聖騎士殿への異常な信頼は何なのだろう……」


「という訳でユウキ! 時間を稼ぎに行くわよ!」


「うん、話が読めないけど。敵の軍勢を一度押し返せば良いんだね? どのくらいの時間があればいいの?」


「うむ……1週間程あれば遠方の領地からも派兵が出来よう……」


「わかりました、じゃあ2週間程持たせますので準備をお願いします」


「「「「「にっ、二週間!?」」」」」


皆が一様に驚いた顔をしている。アミリアも想像以上と思ったのか同じ様に唖然としている。


「えっと……とりあえず今から向かいますので……方角はどっちですか?」


そう聞くと将軍さんが地図を差し出してきた。


「聖騎士殿こちらが前線までの地図です、今城がこちら向きで、あの山がこれになります。ですのであちら側が砦になるかと」


「わかりました、それじゃあ窓を開けてもらえますか?」


「「「「「窓?」」」」」


アミリアまで首を傾げてる、そういえば見せた事無かったな。


「えぇ、『——魔装、ホルス』」


魔力を纏い翼を広げると周りが騒然とする。


「それじゃあ、アミリア。先に行って待ってるよ」


「えぇ! 私もすぐ行くわ!」


「そうだ、これを渡しとくね」


以前理映から貰った指輪を右手薬指に通す。


「え? ちょ、ユウキ!?」


「ちゃんとしたのは今度ね。それ、アミリアの居場所に転移出来る目印だから着けといて。それとこれ何かあったら防御魔法が出るから忘れずに持ってる事」


チョーカーに似た首飾りをつけて、一度抱きしめた後離れる。


「わかったわ、いってらっしゃい」


「あぁ」


「聖騎士殿!これでよろしいか?」


大きく広げられた窓から飛び立つ、そこから風魔法で追い風を起こして加速した。



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