第6話:悪神と王

「さて……聖騎士殿よく来ていただきました」


アミリアをの夕食を摂った後、爆睡している彼女の部屋に防御魔法をかけた後、王様二人との夜会に出ていた。


「すまぬな、昼間は兵士たちとの模擬戦に夕方は料理長に乞われ未来の料理作りと……」


「聖女様とも凄まじい模擬戦をなされてたとか……」


「ちょっと厳しめですが、あれ位じゃないと練習にはなりませんから」


そう言って笑うと二人は若干引いたような顔をしていたが、切り替える様に夕食の話をしだした。


「そうだ! 美味しかったです! あの『シチュー』というスープ!」


「私はラムカツが気に入った、それにあの柔らかいパンは画期的だったな」


「そうですか、酵母はあげましたので。あの料理長なら上手く活用してくれるかと」


年始に優羽達とパン作りした時に残ったレーズン酵母をあげたのと作り方は教えたので大丈夫だろう、いざとなればワインもあったしそれを活かせることも教えたし。


「そうか、ありがとう……それでなのだが。聖騎士殿には話しておかねばならない事があってな」


「という事で貴殿をお呼びしたのは、ついでにいくつか聞きたい事があったのよ」


「俺に答えられる範囲であれば……。それで話しておかなきゃいけない事は?」


そして二人の空気が重くなり口を開いた。


「実は悪神と呼ばれる存在は元、人なんです」


「それも王族、ワシの兄なんじゃ」


「そうなんですか……それでどうして『悪神』なんかに?」


「それが――」


王様がいきなり身の上話を始めた。まぁ要約するとこの国は魔族側より一人、人間側より一人の王を選出し、二人の王で統治をする国で二人は伴侶という事だった。


そこからが問題で、王兄は昔から女王の事が好きだったのだが生来の傲慢な性格や治政を学ばす女遊びを繰り返す日々だったらしい。そこに愛想が尽きた前王によって継承権をかけた一騎打ちで弟が勝利し兄は追放される事に。


そして30年経った一昨年、数万の魔獣や魔物を引き連れた兄によって国の北半分は壊滅、人々を奴隷や魔物の食料とし城を築いたらしい。


「それから3度の討伐軍を編成して挑んだのだが、あと一歩届かず敗北してしまったのじゃ」


「そうなのです、あの悪神は姿形こそ人間でしたが得体の知れない存在になっておりました」


「切られても死なず、魔法で焼かれても平然としているのじゃ」


(なんか思い当たる節が……それって邪神の事だろ……)


あれは世界の悪意が顕現したものだと思ったけど……何か理由があるのかな?


「あーそれなら倒したことがありますね……」


「「本当か(ですか)!?」」


身を乗り出してくる二人、勢いに思わず仰け反る。


「ま、まぁ俺の思い当たる存在に近いので、想像ですが……」


「そうですか、それでも光明は見えました」


「そうじゃな……残された手立ては巨大な防衛線を張って人類は籠るくらいしかなかったからな……」


「それで、俺に聞きたい事って何ですか?」


二人共ほっとした顔をしている所へ聞くと、顔つきが変わる。


「聖女様についてだ」


そう言われて昼間に軍務宰相へ伝えた事が伝わったのだろうと理解した。


「聖女様のご両親は謀殺されたと聞きましたが本当なのですか?」


「本当ですよ、アミリアの両親は行方不明と聞いてます。俺自身つい最近アミリアの元に召喚されましたから」


「そうですか……ありがとうございます」


「まぁ直接アミリアに聞くのも気まずいでしょうからね」


「それと、近い内に将軍のヴァリシウスが帰って来る、彼なら今の最前線の情報を詳細に知っているはずなのでな、その際は軍議を行うので力添えしてくれると有難い……」


「わかりました、俺でよければ手伝いますよ」


そしてその後はこの国の事や文化についての話を酒のつまみに話すのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆

◇マリアンside◇

「すみませんでしたぁ!!」


私は優希さんの奥さん達と理映さんの前で土下座をする。


「うーん……まぁ仕方ないよ、今回はアミリアちゃんに引っ張られただけだし」


「あ、あの……その時期は丁度他の世界を作るのに夢中で……」


汗をダラダラと流しながら答える。


「あーそれはまぁ……私もやらかした事があるから……」


遠い目をしながら理映さんも言う。


「まぁ優希さんが居て良かった? のかな?」


「少なくともアミリアちゃん達の世界は続いていますし、優希様が呼ばれるのは必然かと」


「そうね、歴史として続いてる世界だし優希の行動は全部過去のものとして観測できるでしょうし」


「ん、最近見たSFアニメのやつ」


「と、いう訳でこれからの事をみてみよー」



◇◆◇◆◇◆◇◆

◇???side◇

「クソッ! 撤退だ! 最前線の砦は放棄する! 油を撒き火を点けろ!」


総崩れになった軍を率いて私は撤退する、今までは魔物との戦いも拮抗していたのにここ数日強さが増している。


「どうしてだ……なぜこんな!」


「将軍!! うわぁ!?」


「ロムレ!」


丘上からの突然の奇襲で横撃される、今ので近衛の1人が騎馬より落とされた。


「今助けに!」


「何言ってるんですか!! 俺は大丈夫です! 早く逃げて下さい!!」


「っつ! すまない!!」


私は馬を翻らせ少ない手勢と共に駆け抜ける。


(こんな戦い方今まで無かったのに……どこで知能をつけた!?)


奥歯がミシミシ言うが今はそんな事言ってられない、この状況を立て直さねば……。


振り返ると最前線の砦から丁度火の手が上がったのだった。


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