第1話:宝石獣の里へ帰還
館からの戻りがけに魔族領の駐屯地へ寄ると、妹と弟が攫われた兵士達が迎えてくれた。
「「魔王様!! 妹(弟)は!?」」
慌てて荷台を覗いているが二人の
「えっとあの魔族の方と同じ種族の子ですよね? それでしたら……」
何でも獣魔族好きの女性貴族が居てその人が保護をしているらしい。
「元々すぐに売られてしまい交流は無かったのですが、なんでも獣魔族がお気に入りで酷い扱いを受ける事は無いと思います私達の中でも評判が良くその貴族様のお屋敷で雇われていたりしますから……」
「そうですか……無事ならばいいんだけど……」
「そうだな……何も手掛かりが無いのに比べれば良かったです、ありがとうございます魔王様」
「ありがとうございます!」
「ううん、こっちでも情報は収集しておくから出来るだけ早く取り戻せるようにするよ」
そう言うと二人共不安ながら喜色を見せてくれた、だがその背後から鬼が近づいていた。
「二人共いい加減にせんか!! 姫様を前に自分の事ばかり考えおって!!」
そうして二人の頭にゲンコツが降り悶絶し始める。
「すみませぬ姫様、とんだ醜態を!!」
「良いですよ。二人共、自分の家族の事が心配でしょうし」
ニコリと笑うリリアーナ。
「ありがとうございます。そうしましたら、今日はこちらでお休みください」
「ありがとう、それじゃあ今日はお言葉に甘えますわね」
「ユウキさん、魔獣さんのお世話終わりました!」
セレーネが魔獣のお世話をしている子達と戻って来た。
「ありがとう皆、今日はここで休むよ~」
そう言うと馬車に乗り疲れした子達がほっと息を吐いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
そうして翌朝一部の奴隷達はバルドルさんの部下の元、王都へ連れて行ってもらえることになった。
「それではよろしく頼んだよ」
「はい! 魔王様!!」
大きいコブを作った二人の兵士が御者台から答える。
「それではお父様にこちらをお渡しして下さい」
子供達の事が書かれた手紙をリリアーナが渡す。
「畏まりました姫様! 命に代えても!」
「ユウキさん! こっちも準備が終わりました!!」
セレーネが駆け寄って来る。
「ありがとう、他の皆は乗ってる?」
セレーネの頭を撫でながら聞く。
「はい! 皆さん乗られて準備完了ですっ!」
「それじゃバルドルさん、道の復旧お願いしますね!」
「あいわかった、魔王様、姫様、奥方様もお気をつけて」
「ご主人様、お先に王都でお待ちしております」
「うん、気を付けてね。少し位の間勝手がわからなくて不自由になるかもしれないけど……」
「大丈夫です、お任せ下さい」
そう言ってミミルが頭を下げて、王都行きの奴隷達の乗る馬車へ乗り込む。
鞭を打たれた馬が走り出し奴隷達が顔を出す、この数日で仲良くなったので皆手を振ってくれている。
「それじゃあ俺達も向かおうか」
「はい!」「えぇ!」
リリアーナとセレーネが荷台に乗り、俺は御者台へ。手綱を持ち出発のサインを送ると走り出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから数時間程走らせると
「あれ? 道が出来てる……」
「そうですわね……」
「何かあったのでしょうか?」
荷台から二人も顔を出す。
「でも、これで馬車が通れるから良いか」
「ただ、このままですと危険性がありますね」
「そうですね、場合によっては対策を考えないといけません」
ともかくこの状況を少し不安視しつつ馬車を走らせると何事も無く里に着いた。
「見て下さいユウキさん! 里に煙が!」
里に沢山の煙が上がり一同騒然となる。
「俺は先に戻るから二人は子供達を頼む!」
「「はい!!」」
馬車から飛び降り風魔法を唱え滑空する。
(皆は洞窟に避難してるはず! 一体何が?)
煙突より煙の上がるセレーネの家に飛び込むと、そこには……。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「あ、おかえり~ユウキ。他の皆は?」
「アミ……リア……?」
エプロンを着けてセーレさんと楽しく料理をしているアミリアが居た。
「一体なんて顔してるのよ……私がここに居たら……おかしいか……」
むむむと顎に手を当て考え込むアミリア、いやどうしているの?
「そりゃこの里が襲われたって言うし、リリアーナが攫われたって言うんだもの。そりゃ心配して駆けつけるわよ」
「お、おう……」
「それで、皆は?」
「あー、里に煙が上がってるから俺一人で先に来たんだ」
「そうなの? それじゃ攫われた子達のご両親呼んで広場に居るから、ユウキはゆっくりでいいわよ」
そう言って家の外へ出て行ったアミリアだった。
「ふふふ、ああいってますが、アミリアちゃん、ずっと『心配だ~』っていってましたよ」
セーレさんがニコニコと笑いながらやって来る。
「そうなんですか、それとセーレさん、全員無事に帰ってきました」
「良かったわ、それじゃあ今日はお祭りになるわね。皆と話してこないと」
竈から鍋を上げてセーレさんも外へ出て行った。
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