第7章【魔王誕生】

プロローグ:暗躍する魔王

夜半を過ぎた頃、鮮血の翼を広げて宵闇の街を飛ぶ。


「確か……城の鐘楼に直接飛んで行って良かったんだよね」


「はい、ウルベリック様からのお手紙にはその通りに」


隣を飛ぶリリアーナが手紙を取り出して答える。


「おっ、あそこみたいだな」


カンテラの明かりが見えるのでそちらへ飛んで行く。


「お待ちしておりました魔王様、そして王妃様」


「ウルベリック殿自らありがとうございます」


「ウルベリック様こんばんは、『魔王』上凪優希の妻であり魔王領王妃のリリアーナ・上凪・ノーブルブラッディです」


綺麗なお辞儀カーテシーをして頭を下げるリリアーナ。


「それでは案内をしよう」


鐘楼を下りながら最近の話をする。どうやら最前線基地が壊滅してから魔王領への進行中止を叫ぶ派閥と早急に大規模な戦争の準備をしようと言う派閥に大きく別れている様だ。


「しかも私が反戦派の神輿にされて、担がれているんだよ……」


「うっ……それは面倒ですね」


「あぁ、恨むぞ魔王様……」


からかう様に言って来るウルベリックさん。


「支援を中止しても良いですか?」


こちらも冗談めかして言うとそれは参ったという様なふりをする。


「まぁそうだね、私としてもこのまま戦線を長引かせるのは好きでは無いからね、戦争を終わらせられるならそれでもいいよ」


「国が無くなっても?」


そう聞くと鼻で笑うウルベリックさん。


「国なんて正直どこでも良いよ、民が安寧を保てて以前と変わらないかより良い暮らしになるのならね。それに貴国領は文化や人種を重んじるだろう? その観点においては人間の国よりも発達しているからね」


「そうですわね、我が国領は数多の種族が入り乱れますからね、文化や風習は非常に重んじる傾向ではありますので。それに他の国なら頭を抱える宗教においても我が国は貴国と同じですからね」


ドヤ顔で言うリリアーナ、正直国については彼女のが詳しいので頼りになる。


「そういえば宗教は同じでも宗派ってあるの?」


「そうですね、我が国の主流は神意経典しんいきょうてんというものが主流で神の意は経典に記されている、それ故に神の言葉の代理人である神の使いや司教は絶対というものですね」


「私達の魔王領は神の意は神が伝える、それ故にその意に反しない限りは伸び伸びと暮らすのが良し。聖女や神の使いには敬意を払うって言うのが基本ですわね」


「なんかそれだけ聞くと人間領は宗教でお金集めしてる気がするんだけど……」


「あっはっは、その通りですな、流石は神使様だ」


「ちょい待ち、その名称どこから出てきたんですか!?」


「え? 妻からですね」


しれっと答えるウルベリックさん。確かに一度アミリアとの会話の時に会っただけだけどしっかり覚えられてたんだな。


「あはは、私の妻は少し情報通でして、人間領の殆どに情報網を持っているのですよ」


「そうなんですか、というかそんな事話して良いんですか?」


「え? 構いませんよ、もう国王からは反戦派として目をつけられてますし。魔王様とは一蓮托生ですから」


「うわぁ……」


清々しい笑顔で親指を立てている、そんなに責任押し付けられても困るよ。


「わかりました、人間領側での根回しは頼みますね」


「うっ……これまた私の苦手な分野を……」


「俺だって兵としては戦い方は得意ですが、将として戦うのは苦手ですしお互い苦手を解消すると思って……」


「まぁ、妻任せなんですけどね」


「うっ……俺も皆に任せようかな……」


「何言ってるんですか優希様、聖女様と私に挟まれてるのですから貴方様が軍の主役ですわ」


目を爛々と輝かせながら大げさな振り付けで言うリリアーナの姿に苦笑いが出る。


「でも、性に合わないのは事実なんだよなぁ……」


「そこは、ほら。後ろでどっしり構えれば良いんですよ」


白い歯を見せながら再度親指を立てるウルベリックさん、よくこの人総指揮官とかやってたな!!


とりあえず、会議の場に着いたので切り替える。


「それでは、行くぞリリアーナ」


「はい、魔王様」


開かれた扉の中に身体を滑り込ませた。



◇◆◇◆◇◆◇◆

「おーっす久しぶり~」


「旦那ぁ! お久しぶりです!!」


「うるさいっ! あ、お久しぶりですカミナギさん」


「久しぶり二人共」


翌朝、ミローズの大通りから一本離れた住宅街に久しぶりの声が響く。


「それにしても、見ない間に身なりが良くなってるね」


「あはは……旦那が預けて下さったどれ……仲間たちが優秀で」


「依頼の成功率も高いですし、みんなさん優秀なんですよ。お陰で私達もかなり助かってます」


「そうか、それは良かった」


「それで、今日は何しに来たんですか?」


「ん~色々と計画の種まきだね~」


「種まきですか……それは聖女様と関係があるんですか?」


「そうだね、アミリアの事もだけどこの国の事もかなぁ……」


若干濁して言うと二人の顔色が悪くなる。


「あー旦那……今の聞かなかった事には……」


「凄く嫌な気がするんですが……」


「あはは~逃がさないよ?」


「「ひぃぃぃぃぃぃ!?」」


二人の肩をガッチリと掴んで、奴隷達の住む集合住宅へ向かった。


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作者です!

新章【魔王誕生編】になります!

遂に国盗りへ向けて物語が動き始めます!

因みに今章の大まかな道筋は決めてあります!

次章の内容も実は決めてあります!


155万1000PV超えました!!ありがとうございます!

毎日、そしてここまで読んでいただける方、ありがとうございます!


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新規ブクマもありがとうございます!!

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