エピローグ:誘拐事件終了

宝石獣カーバンクルの少年が言う通り座敷牢の階下には首輪をされた奴隷達が沢山居た。


「お、お客様でいらっしゃいますでしょうか?」


奴隷商と勘違いされたのかおっかなびっくりながらセレーネと同じくらいの歳の少女が足を引きずりながら声を掛けて来た。


「あーちょっとちがうけど……君達は奴隷なのかい?」


「は、はいとは言っても売れ残りや主人に反抗的で返された子達です」


「優希様、彼女足が……」


リリアーナが少女の足を見る、この際問題無さそうだし聞いちゃおう。


「そうだったんだね、それでその足は?」


「あっ……これは前の御主人様が夜盗に襲われた時についたもので、そのせいで売れ残りになってしまったんです」


「そうだったんだね……それで、君達の中に馬車か魔獣車を動かせる子は居るかい」


「そ、それなら私が……」


片腕を肘から下が無くなった少年が手を上げる。


「わかった、もう一人くらい居ると良いんだけど……」


「わ、私……魔獣車でいいなら……」


片目が無くなった少女が手を上げる。


「よし、それじゃあ。皆こっちに来て」


片っ端から欠損や傷を治していく。


「さすがです優希様♪」


「あはは……これくらいはね」


そうして奴隷達を治すと、きびきびと準備を始める子達。少し気の強そうな人族の女の子が種族関係無く指示を出して行く。


「すみませんお客様、私この屋敷でメイド長を務めていたミミルと申します、先程は喉を治していただいて感謝しています」


鈴を転がすような声で少女が綺麗に一礼をする。どうやら特殊性癖の主人に特殊な薬品で喉を潰されてしまい使い物にならないからと売られた様だ。


「そうだ、頭目はどうなりましたか? 私達は処分されるとこをあの方に助けていただいたのです……」


「あぁ……うん……」


「あの……えっと……」


俺とリリアーナは言葉を濁す、すると察したのか少し悲しそうな顔で笑う。


「そう……なんですね……」


「ごめん……」


「ごめんなさい……」


「いいえ、私達に良くして頂いていたとは言え世間的には多くの人を殺している大罪人ですから……人間の国からも魔族の国からも追われる立場でしょうし、生きていたら斬首か縛り首でしたから。これで良かったと思います」


「うん……」


言葉に悩んでいるとリリアーナが一歩前に出る。


「彼女のやった事はとても悪しき事ですが、貴方達奴隷に対して行ったやさしさの分、手厚く葬らせていただきますわ」


「ありがとうございます……」


そう言って彼女は他の奴隷達を集めて話をし始めた、中には頭領の死に啜り泣く子も居る位だ。


「無力化してでも話を聞くべきだったかな?」


「それは……難しい所ですわね、彼女の悪しき部分は生来のものですから。温情で生きていてはより問題や禍根を残すことになりますわ。それに彼女も言った通りその行いによって人間からも魔族からも恨まれていたでしょうから……」


「完全な悪は居ないし完全な正義も無いのはわかってるけど……こうして犠牲になっちゃいけない子が犠牲になるのは見ていて苦しくなるんだよね……」


「そうですわね……ですが優希様はお優し過ぎます。それに甘えて他の者達が犠牲になるのはもっといけませんわ」


リリアーナに言われて思い出す。そうだった、それで一度失敗してるんだ。


「そうだった……思い出したよ。時には厳しい判断が必要になるって。」


「そうなったときは、ひっぱだいても止めて下さいと頼まれておりますので♪」


「え? 誰に?」


「耀さんですわ、耀さん曰く『優希様は甘い部分があるから裏目に出ない様にフォローしてあげてと』」


「あはは……よくわかってらっしゃる……」


「それにあの子達は、ここに居てはいけないですから……」


「そうだね、俺も出来る事ならもっと広い世界を見て欲しいと思うよ」


するとミミルは奴隷の子達を連れてきた。


「お客様……えっと……」


「上凪 優希だよ」


「リリアーナ・ノーブルブラッディですわ」


「カミナギ様・リリアーナ様、お二人は奴隷契約の規定により私達奴隷全員の所有権が移ります、これからよろしくお願いします」


「「「「「よろしくお願いします!」」」」」


一礼して顔を上げると複雑そうな顔をしている子から喜んでいる子も居る。


「君達の頭領については非常に申し訳ない」


「これからは私達が貴方達に不自由はさせませんわ」


「勿論、ご両親の元に戻りたい等あれば、奴隷契約を解除して出来るだけ叶えたいと思う。寧ろいらないかな?」


「「「「「「え?」」」」」」


いやいやなんでそんな普通そんなことする? みたいな顔しないでよ。


◇◆◇◆◇◆◇◆

そうして館の皆を連れて魔獣車で出発する、館に着けた火の手が上がる。


「カミナギ様、改めてありがとうございます」


後から顔を出したミミルが言う。


「ん? ミミル、どうしたの?」


「頭領の埋葬とお墓作りです」


「うん、皆には大切な人だからね」


「それでもカミナギ様達には好ましくない相手ですから」


「まぁ、それでもやらない理由にはならないから」


そういう言うとミミルは軽く笑い、もう一度お礼を言って後ろに戻って行った。


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作者です!

章自体が伸びたのでここで一旦区切ります!

このまま続く次章が【魔王誕生編】になりますのでお楽しみに!

多分ファン投票の小話はタイミングが無さ過ぎたので次章終わったら出しますね……


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