第64話:戦いの決着と頭目の最後
「石化された手足が!? クソッたれ何なんだよお前ぇ!!」
声を荒げた妙齢の魔族が、憎しみを込めた目で睨みつけて来る。
「何って? 次代の魔王様ですが?」
「んなぁ!? 何をふざけた事を!! 『——エメ・エクスタァ!!!!』」
再度石化魔法を乗せた光の矢を放ってくる。
「だから無駄だっての……」
そして再度発動したウジャトの目で石化魔法を乗せた光の矢は消える。
「クソックソッ!! 『——エメ・エクスタァ、エメ・エクスタァ、エメ・エクスタァァァァァァァァ!!!!』』」
エジプト神ホルスのウジャトの目はすべてを見通す力と共に、癒しや再生の意味を持つ、その為すべての状態異常や身体的欠損等を治すことが出来る様にした訳だ。
無論対象は味方全体にしてる為リリアーナの切り落とした腕なんかも治療対象の様だ。
っとそんな事を思い返してると完全復活したリリアーナが立ち上がる。
「優希様、この後は私が……」
「大丈夫?」
「はい、相性は凄く悪い相手ですが勝って見せますわ!」
「それじゃあリリアーナ、任せたよ」
リリアーナの背を押し一歩下がる、今のリリアーナなら負けることは無いだろう。
「はん! 男の力を借りなくて良いのかい王女様!!」
「えぇ……もう勝負は決しましたので」
そう言ってニヤリと笑うリリアーナ、それに対して苛立ちが隠せないおばさん。
「なら! こっちも終わったよ!! 『——エメ・クアドロスタァ!!!!』」
残りの魔力全部なのだろう部屋全体に散りばめられた数百はあるだろう光の矢を構える。
それに対してリリアーナは、ピクリとも動かずに優雅に佇んでいる。
「びびったかぁ!! これで終わり……だ……!?」
おばさんの体がリリアーナの血の刃によって瞬間的にバラバラにされたのだった。
「だから言ったじゃないですか……『もう勝負は決しました』と」
呆れたように言い捨てるリリアーナ、ド派手な殺人現場になってるけど片付けないで良いよね?。
「さて、子供達を助けに行きましょう!」
「そうだね、でも少し待っててくれるかな?」
「はい? わかりました……」
止めた事で首を傾げながら俺を見るリリアーナ。
「うーんっとね……ここかな?」
書斎の中に入り本を動かしていると『ガコン』という音と共に本棚が動く。
「まぁ! 隠し金庫ですわね」
「あったあった、取引履歴と出納帳、ついでにお金も結構溜まってるな」
重要書類とお金を空間収納に仕舞いこみ書斎を後にする。
「優希様、お金なら何も回収しなくても……いくらでもあげますのに……」
「いやいや、さっきのお金の大半は人間領のお金だし、この後少し人間領での交渉事に使うからね」
「そうなんですの?」
「大体こういった事は黒幕が居るからね~そう言った人間の炙り出しや情報収集にお金が欲しいのよ」
「それは……魔族領のお金ではダメなのですか?」
「うーん……駄目という事は無いけど。情報提供者の立場からしたら人間領のお金は持っていても違和感のないお金だからバレ辛いんだ」
「そうなのですね……」
「まぁ、酒場で奢ったり。ギルドに匿名で頼むにしても人間領のお金なら話が速いからね」
そう言うとリリアーナは感心したように頷いていた。
「さて、ここからは外に出るからフードは忘れない様にね」
すっかり良くなったとはいえリリアーナ達吸血鬼は陽の光に敏感で目に対してのダメージが大きかったり日焼けをしやすいから羽織っていたりするのだ。
「ありがとうございます、でも優希様のお顔が見づらくなるのは寂しいですわね」
「あはは……だからといってリリアーナの綺麗な目が痛んじゃうのは悲しいよ」
「もう……そう言われると何も言えないじゃないですか……」
軽く頬にキスをしてきたリリアーナはフードを下ろす。いつの間にか旦那様呼びしてるし結構したたかだよなぁ……。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それからセレーネと合流するために向かっていると、部屋の外にまで男達が伸びていた。
「あっユウキさ~ん、リリアーナ様~!」
両手をぶんぶんと振って来るセレーネ、部屋の中に居る子供達は座敷牢の様な檻に閉じ込められていた。
「セレーネ! 大丈夫だった?」
飛びついて抱き付いてくるセレーネ、若干むっとしたリリアーナが腕に抱きていて来る。
「はい! 敵が多かったので大変でしたがなんとか守れました!」
「うん、凄い数だね……」
生きてるのか死んでるのかわからない男たちの山を横目に見つつセレーネの話を聞く、子供達も無事で全くの無傷な様だ。
「さて……このままだと馬車の運転ができる人が居ないんだよなぁ……」
「どうしましょうか……」
「困りましたねぇ……」
三人で頭を抱える、俺は操作できるのでもう2台分の人が必要だ。生きてる人間探して従わせるかなぁ……。
「す、すみませんカミナギ様!」
悩んでいると一人の
「ん? どうしたの?」
「えっと……多分この屋敷捕まってる人がまだいるかもです!」
「あ、ほんとだ……」
ウジャトの目を発動させて捕まってる人や奴隷を調べると子供達以外にも結構な数が居た。
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