第53話:結婚式の翌日

結婚式はつつがなく終わり、その日の夜酔いつぶれたセレーネをベッドに寝かせるとセーレさんとレレイさん、それとリリアーナでリビングに集まっていた。


「すみません、カミナギ様。新婚初夜なのにあの子は深酒をして……」


セーレさんが頭を下げて来る。


「いえいえ、それよりここから話すことはかなり重大なことなのですが……」


「それは、王女殿下に係わる事かね?」


むすっとしていたレレイさんが口を開く。


「あーはい……それも遠からずって感じですね」


「はぁ……わかりました」


まぁリリアーナが関わると、奥さんの序列というか身分差とか出てくるもんな。ウチはそんなの対外的にしか取ってないけどね。


「それでは……先ずは俺の出自なのですが、この世界の人間ではありません」


「「!?」」


「それと、この里にはセレーネも俺も定住はしません」


「そんな……」


「それをセレーネは?」


「無論伝えてあります、ちゃんと了承も貰いました」


そう言うと二人共黙りこくる。


「失礼、わたくしからも……」


「え? えぇ姫様」


「カミナギ様には元の世界に帰ります、その場合私達も無論共をします。定期的にこちらの世界には来ると思いますが、いつ世界の行き来が出来なくなるかは不明なんです」


「え?」


「正確にはカミナギ様の能力で行き来をするので、万が一カミナギ様が亡くなった場合は永遠にその手段が失われるという事です」


「「そんな!?」」


「まぁ、カミナギ様なら並大抵の事じゃ死なないですが……試したので、毒も即死攻撃も効きません。恐らくカミナギ様が死ぬことがあればその時は私達も死ぬことになるでしょう」


「ん? 今リリアーナ試したって?」


「はい! 毒は食事に、即死攻撃は伝え聞いた限りですが……」


「何でそんなヤバいことしてるの!?」


セーレさんはドン引きしてるし、レレイさんなんてコップ持つ手が振えてるじゃん!!


「ともかく、死んでしまった時のリスクはあれど、カミナギ様はそんな簡単に死なないので大丈夫です!」


「あぁ、うん……ありがとうリリアーナ……」


「そういう訳なんで、俺はそんなに簡単には死なないので心配しないで下さい、ただ里帰りが数カ月とかになるのさえ心配しないでもらえれば」


「そ、それなら大丈夫よ……」


「あ、あぁ……王都で仕事をしているならそのくらいになるだろうし」


「ありがとうございます、もう数日はこちらに居る予定なので」


「はい、わかりました」


「それじゃあ、明日は里の会議に参加してもらえるとありがたいのだけど……」


「わかりました、では今日は寝た方が良いですね」


そう言ってリリアーナと一緒に立ち上がる。


「それではセーレさんレレイさんおやすみなさい」


「おやみなさいませ」


「あ、あぁおやすみ」「おっ、おやすみなさいね」


(ごめんなさいお二方、こんな過激な王女様連れてきて……)


完全にドン引いてる二人に心の中で謝りながら話を終えた。


◇◆◇◆◇◆◇◆

翌朝……もとい昼だが起きるとリリアーナとセレーネはまだ寝た居る様だった。


「おはようございますセーレさんレレイさん」


「おはようカミナギ君」


「おはようございますユウキさん」


「すみません、こんな時間に起きてしまって……」


「あぁ、大丈夫だよ。私達も先程起きたばかりだから」


「今、ご飯を作っちゃうわね」


そう言って昨日の結婚式で出たシチューの残りとパンが出て来る。


「ごめんなさいね、昨日の残り物で」


「いえいえ。昨日のお料理、美味しかったので嬉しいです」


「あらあら~ありがとうね、セレーネにも料理を教えないと……」


そう言って喜んで鍋を取りに行くセーレさん、その間に席に着くとレレイさんが声を掛けて来た。


「カミナギ君、今日の会議で言われると思うのだけど、最近の里には侵入者が入って来てるとの話があるんだ。恐らく話の中心はその話題になるだろう」


「そういえばセレーネとの結婚式と里守の儀はそういう意味がありましたね……」


「そこで何か聞かれたり意見を求められたりするので、一緒に考えて貰えるかな?」


そう言ってレレイさんが不安そうな顔をする。


「わかりました」


(侵入者についてかぁ……リリアーナに後で聞いてみるかなぁ……)


そんな事を考えながら朝食へ手を付けるのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆

「侵入者についてですね、色々と情報は集めてますよ」


そうしてリリアーナが話始める。曰く侵入者は高度な魔法を使える魔族だとか、とても強い人間だとか、宝石を狙った商人だとか。


だけど一律しての情報は魔族と人間、複数人での行動という事だ。


「うーん具体性がそこしかないんだね」


「そうですね、里自体もそこまで人数が居ないのもありまして情報があまり出てこないのです」


「だろうねぇ……ともかく会議で情報を収集してみるよ」


「はい、お父様からの連絡が無いので何とも言えませんが。魔族にあの魔法を抜けれる方は少ないと思ってますからその内に何かつかめると思うのですが……」


「まだ、情報が少なすぎるねぇ……」


「そうですね、私も参加したいと思いますので準備をしないと……」


「じゃあ、俺外に出てるね」


そう言って外に出ようとしたらガシッと腕を掴まれた。


「リリアーナ?」


「セレーネさんは今お休みしてますね? でしたら着替えの補助をお願いしますね♪」


「え? まって! 今起こしてくるから!」


流石にはばかられるのでセレーネを呼びに行こうとしたら涙目で止められる。


「私の身体はそんなに醜いのでしょうか?」


そう言って涙をこぼす。


「うっ……わかった……やるよ、どの服?」


「やった♪」


喜んでいるリリアーナを尻目に着替えの準備をするのであった。


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