第52話:里の結婚式

刀の実物を見せたり、セレーネに合わせた細かい部分の修正をしていたら10分程経っていた。


『ふぅ……ふぅ……これでええかのう?』


『大分時間かかったわね……』


『久々とはいえここまで細かく注文されるとは……』


「はい! これで大丈夫です! ありがとうございます!!」


ほくほく顔で大太刀を手にしたセレーネがご先祖様達に答えると、だいぶ弱々しくなった光球が点滅する。


『そろそろ、時間じゃのう……』


『そうみたいね、二人共幸せにね』


『子孫よ、夫を良く支るんだぞ。その伴侶よ、妻を良く支えるんだぞ』


「はい!」「任せて下さい」


そう言ってご先祖様たちは祠に戻ると、徐々に周囲の宝石も輝きが収まり。そこには静けさだけが残った。


「帰りましょうか」


「あぁ、それじゃあ」


左手を出すとそれに抱き付いてくるセレーネを連れ立って歩く。


そして外に出ると族長が近くの石に腰を据えて空を仰いでいた。


「すみません、お待たせしました」


「おぉ、時間がかかったのう」


「はい、でも最高の逸品が出来ました!」


「それじゃあ、戻るとするか、そろそろ準備も出来た頃だろう」


「そうですね、もうお腹すきました」


「私もぺこぺこです!」


◇◆◇◆◇◆◇◆

「では、新たなる里長になるセレーネ・ランシルとカミナギ・ユウキ両名の結婚式を始めます」


俺とセレーネは披露宴会場の様な壇上の上に座らせられている。


「………………」


隣には衣装に着替えたセレーネはが石像みたいに固まっている。


そんなセレーネを傍らに俺はほんの一時間前を思い返していた。


村に戻るとセレーネは村のおばさま方に連れて行かれ、俺はご年配の方々に連れられ、民族衣装的なものに着替えさせられていた。


「それじゃあ、旦那さんはここに座っておいてな~」


「わかりました、作法とかわからないですけど大丈夫ですか?」


着替えさせられ連れて来られた壇上の上で案内をしてくれたご年配の方々に聞くときょとんとされた。


「作法? そんなきっちりしたものは無いよ。とりあえずその席で乾杯をするだけだ」


「そうそう、俺の時も適当だった」


「奥さんが何かやりたいとか無ければ基本はそのままだよ」


「そうなんですね、それなら俺でも大丈夫そうだ」


「それじゃー気楽にね~」


そう言ってご年配の方々は降りていった。


それから30分程した後、似たような刺繍の入った民族衣装に着替えたセレーネがやって来た。


その姿は踊り子の様にも見えるし、それでいてとても綺麗だ。


ホルターネックになっていて胸からお腹まで隠れているがわき腹は出ている。腰は布が巻いてありそこに様々な刺繍が施されている、これは俺の服にも同じよう刺繡が付いている。額には以前見た、フロントレットの豪華なタイプが付いている。


「あうぅ~ユウキさんそんなに見つめないで下さい~」


「あぁ、ゴメン。かなり綺麗で驚いたよ」


そう言うと顔を真っ赤にして黙ってしまうセレーネ。


「綺麗って言ってくれた、綺麗って言ってくれた、綺麗って言ってくれた……(ブツブツ」


そんなセレーネを横目に見ながら待っているとほとんどの人が席に着いた。


「では、新たなる里長になるセレーネ・ランシルとカミナギ・ユウキ両名の結婚式を始めます」


「まずは夫となるカミナギ・ユウキ、乾杯の合図を」


そう言って皆コップやジョッキを持っている。見回してコップを掲げる。


「乾杯」


そう言うと歓声と共に皆が飲み始める。この酒強いな……。


「セレーネ大丈夫? このお酒つよいけど……」


「んっんっ……ぷふぁ~美味しいです!」


豪快に飲み干して一息つくセレーネ、凄く良い飲みっぷりだ。


「大丈夫そうだね、セレーネはお酒強いの?」


「はい! このお酒は私達の里で作られていてこれだとだいたい30年物位ですね」


「凄いね……ってそんなのわかるの?」


「はい、この里は親が生まれた年に作ったお酒を子供の結婚式で飲む風習があるんです。なので私の両親が生まれたのが大体30年ですね」


セレーネは16歳だったし、恐らく同じくらいの時に結婚してるだろうから35年位のお酒なのか……凄いな。


そんな事を話していると先程獲って来た龍魚の料理がセーレさんの手で運ばれて来た。


「わぁ! 私の大好きなパイシチューだ!」


「セレーネが好きなものを出すのがしきたりだからね、いっぱいあるからたくさん食べさい」


「やった!」


そう言ってセレーネが出来立ての料理を食べていく。


「カミナギさん」


セーレさんから声を掛けられる。


「どうしました?」


「昨日と今朝は失礼な事を言って申し訳ありませんでした。私は内気で物静かなセレーネしか知らなかったので、帰って来た時はとても驚きました」


「大丈夫ですよ、突然現れて娘にご主人様を言わせてる男性が居たら警戒はしますのは当然です。俺だってそんな人が居たら失礼な態度を取りますよ」


「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです」


「それと、この結婚式が終わってから……。夜か明日でも良いのですがセーレさんとレレイさんにお話をさせていただきたいんですが……」


「わかりました、その時は、主人共々ご一緒させていただきますね」


そう言ってセーレさんは頭を下げて新しい料理を取りに戻って行った。


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作者です!

はい、まさかの結婚式がセレーネからでした!

雑記ですがセレーネの里は人口300人程で主産業は農業とお酒造りです。

年に1度だけ作ったお酒を商人に売って外貨を得てます。

商人も来ないですし基本的には自給自足で賄えて居るのでお金はよっぽどの時にか使いません。

宝石獣の居る森はかなり大きく前話で登場した祠を中心に災害が起きた時などに使われる緊急避難用の里があります。


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