第50話:【里守の儀】②

【里守の儀】での力試しは最後、俺とセレーネの戦いになったけど。正直光景がいつもの模擬戦の形だった。


そして、イキイキしてるセレーネを見てセーレさんが凄く嬉しそうだった。


「と、ともかく【里守の儀】はこれで終わりじゃ、二人にはこれからやるべきことがあるぞ」


「やるべきことですか?」


「あぁ、【結納の儀】として湖に住む龍魚りゅうぎょを釣って来るのじゃ、これは里の結納の際に行われる儀式で。生涯、食に困らせることは無いという誓いの為じゃよ」


「わかりました、じゃあサクッと捕まえてきますね」


浮遊魔法で飛び立つと、里の住民がざわざわと騒ぎ始めていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆

◇セレーネside◇


「セレーネ……」


魔法で飛び立っていったユウキさんを見つめているとお母さんがいつの間にか寄って来ていた。


「あ、お母さん。どうしたの?」


「ごめんなさいセレーネ、お母さん勘違いしちゃったわね」


「え? いきなりどうしたの?」


「お母さん、セレーネが彼をご主人様と呼ぶから奴隷契約で縛られているのかとおもったの」


申し訳なさそうな顔をしてお母さんが言う。


「あーあはは、確かに何度か領境りょうざかいを抜ける為に奴隷にはなったけど、好きになったのは私の意思だよ。それに魔王様との話し合い以降は奴隷契約を破棄されて普通に働いてたし。それに私が好きになったのはもっと前だしね、だって私が地竜と闘わされそうになった日に、私の代わりに戦って救ってくれてそれにオーナーにお金叩きつけて私を買ってくれたのよ? そりゃ好きになっちゃうよ!」


思わず早口で言ってしまいお母さんを見ると、驚いた顔をしていた。


「そうなのね……セレーネは昔から静かな子だったけど、そんな一面があるなんてお母さんわからなかったわ」


「それもこれも、ユウキさんと出会ってからだよ。色んな優しい人と出会ったり、普通じゃない体験をしたり。それに人を好きになったり……」


「それじゃあお母さん、カミナギさんに感謝しないとね。こんな娘の笑顔を見せてくれてありがとうって」


お母さんがとびきりの笑顔を見せる、里に帰って来て初めての笑顔だ。


「でも、お父さんはきっと悲しむだろうね」


「大丈夫よ、何かあったら私がガツンとするから」


そう言って力こぶをつくるお母さん。


「あはは、程々にね……」


「「「「「うおおおおおおおおお!?」」」」」


いきなり大きな声がして振り返るとそこには大きな魚を担いだ、見た事無い姿のユウキさんが降りて来ていた。


「なにあれ……」


「セレーネ……お母さん、カミナギさんと仲良く出来るかしら……」


◇◆◇◆◇◆◇◆

「さてさて、『——鑑定』」


湖全体に対して鑑定をするとどうやら今朝見た大きな魚が龍魚らしい、というかぱっと見、数が1匹しかいない?


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名前:湖のヌシ 性別:♂ 年齢:5歳

備考:龍魚を食い荒らした大きな龍魚

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「うわぁ……とりあえず獲るか『魔装——アジ・ダハーカ!』」


魔力の角が生え、龍翼つばさ龍尾しっぽを生やす。


「狙いを定めて……今!」


空中から一気にカワセミの様に着水して龍魚の脳天を魔力の槍で貫く


そしてそのまま水揚げすると少し暴れるが移動中にピクリともしなくなる。


「よし、これでOKでしょ」


浮遊魔法で広場へ飛んで行く。近づくと悲鳴や驚きの声が上がる。


「「「「「うおおおおおおおおお!?」」」」」


「うわぁ、凄い歓声だな……」


そうして広場に降りると遠巻きに見られる。


「ユウキさん!」「カミナギ様!」


セレーネとリリアーナが駆け寄って来る。


「おまたせ、これで大丈夫なのかな?」


「大きくないですか?」


「ですね、大きいですよね」


二人とも龍魚を見る。


「うーん、でも特徴が一致しますね」


「一応鑑定で見たけど名称は『湖のヌシ』ってなってはいるね」


「「鑑定?」」


「あぁ、説明してなかったっけ? 『鑑定』っていう魔法が使えるんだ。名前とか能力とか色々わかるんだよね」


「名前……あぁ、シアさんの時とかですね」


「私の健康状態を見抜いたのもそれだったんですね……お父様が言ってたような……」


「まあ、それで調べたらヌシと出たし他の龍魚を食い荒らしてたみたいなんだ。それにこれだけ大きければ皆も納得するでしょ」


「そうですね、この大きさなら皆で食べられますしね!」


「いいなぁ、私も結婚式の時カミナギ様より何かいただきたいですわ……」


「いいけど……お手柔らかにね」


「わかりました! 常識的な範囲で考えます!」


フードの下で喜びを爆発させながらリリアーナが踊っている、楽しそうで良かった。


「それで、セレーネ。この後はどうすればいいのかな?」


「どうするんですかね? 里長~!」


すると凄くびくびくしながら族長が寄って来た。


「そ、その御姿はカミナギ様でしょうか?」


「あ、ごめんなさい解除するの忘れてました」


解除すると族長さんはほっとした様な息を吐いた。


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