第49話:【里守の儀】①

翌朝起きると、リリアーナはまだ深く眠っている様だった。


「さて……まずは、セレーネの両親に挨拶しないとな」


部屋を出ると、セレーネが待っていた。


「あ、ユウキさん」


「おはよう、セレーネ。どうしたんだ?」


「おはようございます。えっと……リリアーナ様のお着替えを」


「そっか、じゃあそろそろ起こさないとな……」


セレーネを連れ立って部屋に入りリリアーナを起こす……とその瞬間抱き付かれて血を吸われる。


「はわわ……」


「んっく……ゴクッ……ふぅ……。おはようございます、カミナギ様」


「おはようリリアーナ」


すると寝ぼけ眼のリリアーナの目がセレーネを捉える。


「おはよう、セレーネ」


「おはようございます! リリアーナ様!」


「それじゃあ俺は顔を洗って来るよ、桶とお湯は置いとくね」


空間収納アイテムボックスから桶を出して、水魔法でお湯を溜める。タオルは清潔な物を渡して外へ出る。



「さてさて、家の裏で良いか……」


家の裏に出て魔法でお湯を球形にして顔を突っ込んで洗う。洗い終えるとそのまま水を捨てる。


髪を乾かしつつ湖を眺めているとやたら大きな魚が跳ねて、キラキラとしていた。


「デカいな……あの魚」


後で許可を貰って獲っても良いかな~と思っているとセレーネがやって来た。


「ユウキさん、お待たせしました。両親の所に向かいましょう」


セレーネに腕を引かれ歩き出す、さてここからは俺の頑張り所だな。



◇◆◇◆◇◆◇◆

「という訳で私この人と結婚するから!」


「「えぇ!?」」


開口一番声を上げたセレーネに驚くセーレ(お母さん)さんとレレイ(お父さん)さん。


「里長はどうするんだい?」


「お祭りの準備もしているんだよ?」


「そもそも私、ユウキさんより強い人としか結婚しないから!」


「いや、彼人間ヒューマンだよ? 僕達魔族より弱い存在なんだよ?」


「ユウキさんはその中でも特別強いんです!」


「とはいえ限度があるだろう……宝石獣カーバンクルの成人はかなり強いんだよ?」


「それよりも強いんだから!」


一歩も引かないセレーネに対してレレイさんが困惑する。


「だったら自分で証明しなさい」


「ママ!?」「お母さん!?」


「セレーネ、彼と結婚したいと言うなら今日の【里守の儀】で勝ち抜きなさい、それとカミナギ様、貴方もセレーネと結婚したいなら里一番の強さを見せて下さい」


「「え? そんな事でいいの?(良いんですか?)」」


二人してそんな言葉が口を突いた。


「「へ?」」


◇◆◇◆◇◆◇◆

という事で俺とセレーネは里長の伴侶を決める闘技会会場へ来ていた。


「お、おい……アレ見てみろよ」


「セレーネだっけ? あいつ引きこもりだったのに……」


「そんなことよりあの髪」


「あぁ、美しい……」


「「「ハァハァ」」」


そんな事が聞こえて来る。セレーネを見てみると、すごく嫌そうな顔をしている、まぁあんな事言われてたら嫌だよな。


「正直、気持ち悪いな……」


「カミナギ様……」


男衆を眺めていると日除けのフードを被ったリリアーナがやって来た。


「どうしたの?」


「実は、里に侵入者が来る件をお父様に連絡したら、恐らく相当な手練れかそういった魔法に耐性が高い魔族の可能性があるとの事です」


「そうなんだ、結構厄介な相手なのかな?」


「いえ、カミナギ様や私、それこそセレーネさんなら相手にならない程です」


「あ、そうなのね……」


「えぇ、少なくとも私達にとっては……ですね」


「わかった、その相手も調査しないと駄目だよなぁ……」


「そちらの方は、それとなく私が探ってみますわ」


「わかった、頼んだよ」


「はい!」



◇◆◇◆◇◆◇◆

さて【里守の儀】は案の定至極簡単で、要は『強い奴がお婿さんね!』って内容だった。


「はあああああ!!」


「ぐえぇぇぇぇえ!?」


セレーネが圧倒的な強さで挑戦者たちを倒していく。


まぁ、正直セレーネに勝てるなんてこの里には居ないからなぁ……。


「よそ見してんじゃねぇ人間!!」


「あーはいはいそう言うの良いから」


「ぎゅふっ!?」


さっさと組み伏せて止めを刺す。


「勝者! カミナギ様!」


「嘘だろ……」


「なんであんなに人間が強いんだよ!」


「アイツ、村で一番イキってた奴だよな?」


「人間に負けるとか……弱いんじゃ!?」


「じゃあおめぇ行けよ!!」


なんか俺の押し付け合いが始まってる、どの道総当たりだからお前らとも戦うんだぞ?


「さて、セレーネは……心配無さそうだな」


倍ぐらいの身長の大人をひょいひょいと躱し、カウンターを入れている。もう数分持たずにダウンするだろう。


リリアーナの方も大人達から話を聞いている様だ、色んなご老人や参加していない女性陣を回って話をしている。


「さて、もうちょい頑張るか……」


残りの男性達に視線を向けると彼らから、軽く『嫌だー』とか『戦いたくない!』とか『死にたくなーい!』と悲鳴が聞こえた。


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