|幕間|現れた聖女と王の失態。

◇???side◇

「クソが!」


ワインを飲んでいたグラスを投げ捨て椅子に座り込む。


ここは王宮の執務室、今現在は私の私室になっている。


「全く、あのグズめ……」


届けられた報告書を読み悪態をつく。


そこには最近現れた聖女がザッケに与えたキメラを静め、更にはその混乱で亡くなった市民を神の奇跡によって生き返らせたという事だ。


「クソ……あんな卑しい奴に下賜するんじゃなったな……」


活性薬を与えたキメラは使役する者の魔力を逆に吸い取る魔法を組み込んでいる。使い捨てに出来るからとヤツを選んだのは間違いだった。


「しかも宝石獣カーバンクルに逃げられるとはな……」


こちらも頭の痛い問題だった、違法賭博の稼ぎ頭の宝石獣を助け、地竜を倒す者が居るなんて思いもしなかった。


「クソ……あの地竜も何人もの術師を犠牲にしたんだぞ……」


極めつけはこれだ、頭の切れるネズミのせいでギルドからの正式な抗議が来ていた。


「しかもあの馬鹿共、堂々と名乗りおって……」


近くにある果物りんごを砕きそのまま食べる。


「何もかも裏目に出てやがる……あのアホ教皇が死んだと思ったら。今度の教皇は頭が切れる」


密偵も何も潰されているのでどうしようもない、前の教皇は金さえ積めばいくらでも中にスパイを送り込めたのに……。


刺客も2度失敗してる……。


「それもこれもあの勇者共が!!」


机を『ダンッ』と叩く苛立ちが止まらない。


「クソ……仕方ない、俺の奴隷コレクションから出すしかないか……」


椅子から立ち上がり、ベルを鳴らす。


「レベル500を越えればあの聖女の護衛も倒せるだろう……」


やって来た執事に席を外すことを伝え、地下へ向かう。


えた臭いのする地下牢に繋がれた魔人族を見る。


「出ろ、仕事だ」


闇の中輝く瞳が俺を見上げる。


「早く出ろ!」


「——うががががぁ!!」


刻印によって、無理矢理命令を聞かせる。


「——フーッ——フーッ」


反抗的だが、怯えを含んだ目が俺を見る。


「貴様はこれから。聖女を追い、殺せ。手段は問わない」


「——フーッ——フーッ」


「わかったか!!」


「——うぎゃぐがががぁ!!」


「フン、貴様の装備はいつもの通りの場所だ、準備を終えたら出発しろ」


「うぐぐ……」


「返事をしろ!!」


「ひぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」


――ヒューヒューと呼吸が浅くなる、流石に死なれると困るのでこれ位にしておく。


「——フンッ」


そして私は執務室戻る、今日はどこかの貴族の娘との会食だったな……。


「さて、もう一仕事終えねばな……」


◇◆◇◆◇◆◇◆

◇???side◇


ワタシハタチアガル、メイレイハセイジョヲコロス。


「セイジョ、コロス……」


クライヘヤニワタシノコエガヒビク……。


マズハコエヲナオサナイト……。


「セいじョ、コろス……」


「せいじょ、ころす」


「聖女、殺す」


与えられた命令を復唱し、脳内がクリアーになっていく。


「どこの誰か知らないけど、死んでもらうよ僕の為に」


身支度をして夕暮れの街へ躍り出た。


◇◆◇◆◇◆◇◆

◇とある酒場の住人◇

「なぁお前、聖女様を見たか?」


「聖女様だぁ? そんなもの見た事無いぞ、王都の話じゃないのか?」


いつも一緒に呑んでる悪友に答える。


「それがな昨日。あの領関で、滅茶苦茶デカい魔獣が出たんだ」


「マジか……でもこの街が平気って事は倒されたんだろ?」


「それがな、その聖女様が神の力で癒して、元の小さな魔獣にしたらしいぞ」


「凄いな聖女様は……」


「全くだな……」


「それに聖女様は魔王領に吸収された土地まで行って、領民を慰撫するんだってよ」


その言葉にもう一人の男が驚きの表情を見せる。


「魔王領に!? 大丈夫なのか!?」


「あぁ、何でもお付きの聖騎士様がとんでもなく強くて、魔獣は倒すわ悪魔は斬るわのべらぼうな強さだそうさ」


「そいつはすげえな……」


そんな話をしていたら二人の元に影が落ちた。


「ん? どうした坊ちゃん、ここは子供の立ち入り禁止だぞ」


「知っている、僕は情報が欲しくてね……」


「情報だぁ?」


「そうそう、聖女についての噂が知りたいんだ」


少年はテーブルの上に銀貨を置く。


「おいおい、なんだいこれは?」


「情報料だよ、教えてくれればこれは貴方の物だ」


少年はニコリと笑う、目元に一筋の深い傷がある位で綺麗な顔立ちをしている。


「そうだなぁ……」


銀貨に目がくらんだ男が滔々と町で聞いた噂を話し始める。


「ありがとう、助かったよ」


少年は更に追加の銀貨を置くと立ち去った。


「聖女サマ様様だな!」


「あぁ!」


そうして二人は店で一番高い酒を開けるのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆

◇???side◇

「そうか……聖女は魔王領か……都合が良い」


聞いた話を纏めると護衛が鬱陶しそうだが大した問題にはならないだろう、さっさと殺してしまいたい。


だが魔王領に行くなら話は別だ、あの地なら色々と自由に動ける。


「さて……仕込みをしに行かないとな」


そうして声の主は闇に紛れて消えた。


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