第17話:奴隷商人②
それからじっとりと背後に付けられ領関まで来た。
「旦那、ここは教会の権威を使いましょう、このまま貴族入口へ向かいます」
「わかった、頼む」
そうして貴族側に並び順番を待つ、この間の礼拝で集まった貴族が多いので少し時間がかかるが仕方ない。
「これで諦めてくれたらいいけどなぁ……」
「ですな……」
その瞬間、ゾクリする感覚がして悲鳴が響いた。
「ギャオォォォォォォォン!!!」
「うわあぁぁ!!!」
「やめ! やめろおおおおおお!!」
「助け! たずげががが……」
振り返るとあの奴隷商人に荷台から大型トレーラー並みの魔獣が人を襲っていた。
――――カンカンカンカン!
けたたましく鳴らされた鐘に怒号が飛び交う。
「門をおろせ!! ここから出すな!」
「まて! まだ下に人g……」
人の砕ける音と共に門が落ち逃げ場を失った人たちの悲鳴が響く。
「クソ! 何だアイツは!?」
レギルが悪態をつく、どうやらレギルも知らない様だ。
ゾクリと嫌な感じがして防御魔法を展開する、すると火属性の魔法が飛んできた。
「クソ! この役立たずめ!」
あの奴隷商人が魔法使いであろう奴隷を蹴りとばしている。
「あのクソ野郎!」
レギルが飛び出そうとするのを手で制する。
「旦那!」
「下がってて、レギルはそこで皆を守って」
「わ、わかりやした……」
「まずは……よっと」
奴隷商人の首を掴み片手で絞める。
「ぐぷぽぷ……ぎざま!? 雑魚のはずじゃ!?」
「聞きたい事があるあれは何だ?」
少し手を緩め喋れるようにする。
「あれはキメラだよ! 本来は王の命で魔人族との最前線で暴れさせるつもりが、貴様が
「ほーう、アレがキメラねぇ……サイズが合わないよな?」
「フン! 活性化薬を打つまでは子犬程度だがな! 薬さえ打てば獰猛な姿になるのさ!」
勝ち誇ったように言う、でもどうしてそんなにぺらぺら喋るのだろう……。
「ワシのいう事だけは聞くからな!!」
「あ、そういう事」
首に描かれた奴隷紋が光り勝ち誇ったように言う。
「キメラ! コイツを食い殺せ!!」
「ギャオォォォォォォォン!!!」
「『————服従しろ』」
あっさりとキメラの主導権を奪いその動きを止める。
「は? へ……?」
「残念、お前の魔力じゃ主導権は握れない様だ」
「な!? な!? クソオオオオオオオ!!」
全力で逃げようとするのに追い付き引き倒す。
「おべべべべ」
「残念、俺が弱かったら成功してたけど、その程度じゃあ無理だよ」
追い付いてきた門兵に奴隷商人を引き渡す、この場はひとまずの収まりをみせた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから、一旦馬車に戻りアミリアにある事をやって貰う為に、正装に着替えて貰う事を言ってから隊長らしき人の元に戻る。
「すみません、亡くなった人の死体を集めてくれませんか?」
「誰ですか貴方」
「私は現在アストマリウス教の聖女様を護衛してる者です、余計なトラブルを防ぐ為に身分を隠していますが、今回の件で聖女様自ら祈りを捧げたいと……」
「か、畏まりました! ですが、そちらの魔獣は大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫です、契約の上書きを行ったので私には逆らえません」
視線を向けるとキメラはおとなしくお座りをしている。
「は、はぁ……ですが……」
「大丈夫ですよ、あれ位の魔獣なら相手にもなりませんから」
「わかりました」
そう言ってるとライラに手を引かれアミリアが法衣を身に纏い馬車から降りて来る。
「隊長! わかる範囲で死者の方は集め終えました!」
「そうか……ご苦労、皆も聖女様と共に祈ろう」
いや、アンタらのせいで何人か死んでるんだけど! と言いたくなったが仕方ない。
アミリアに近づき耳打ちする。
「アミリア、前に教えた『蘇生の呪文』覚えてる?」
「あの大聖堂のよね? それだったら……」
「オッケー、それじゃあ頼むよ」
アミリアが膝を折り死者の前に跪く。
「「『戦いの中で散り、悔い残した者よ、その魂を神の奇跡をもって呼び戻そう!————リザレクション』」」
復元魔法と、蘇生魔法、おまけに光魔法で神聖さを追加して死んだ人たちを蘇生する。
ついでにキメラにも復元魔法を使い、元の素体へ復元する。
そうして次々と生き返る、食われたりしなくて良かった。
「おおおおお神の奇跡だ……」
「そんな……現実なの!?」
「あぁ! 聖女様!」
「「「「「聖女様! 聖女様!」」」」」
少しやりすぎな気もするが、まぁ良いだろう。
その後、謎の聖女コールが終わり出発する、あの奴隷商人が乗っていた馬車と奴隷も一緒にだ。
「ふぅ……疲れたぁ……」
流石に一気に魔力消費をして疲れたので荷台に転がる、奴隷側に馬車の扱える人が居て良かった……。
「アミリアもお疲れ」
沢山人に感謝され、もみくちゃにされ、疲弊したアミリアが疲れた顔をしている。
「はぁ……疲れたわ……」
「お姉様! とても美しかったです!」
「凄いわね……聖女様って……」
「そうですね……死んだ人を生き返らせるだなんて……」
シャリアやセレーネが驚いた顔をしている。
「あー違いますよ、蘇生の魔法を使ったのはユウキです」
アミリアの発言に皆の顔が驚きに変わる。
「もう、何でもありね……」
「ご主人様素晴らしいです!」
「でも流石に疲れたよ……」
後で説明すればいいやと思い、
「マイペースねぇ……」
「流石ご主人様です!」
その喧騒が心地良く、眠りに誘うのであった。
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