第16話:奴隷商人①

それからは特に問題も無く(道中の街で門番に奴隷契約を見られ、屑を見る様な目をされた以外は)進んでいる。


「さて、旦那。この街を抜けたらすぐに領境りょうざかいでさぁ」


レギルが馬車を進ませながら話す。


「長かったね……」


「そうですねぇ……領としては端っこなのですが領境を跨いで隣の街とは距離がありますからね、ここは元々隣の領への防衛拠点だったらしいですよ」


「へぇ……だから城壁が高いんだね」


「そうですね、因みにこの大通りからこっちが生活圏で飲食店が多いんです、んでこっちが職人街ですね」


確かに、右側は普通の作りの家が多いが左側は道幅が大きく作られ万一火災が起きても区画からの延焼を防ぎやすくなっている。


「旦那、今日は野宿になりますがテントとかは?」


「あぁ、大丈夫。色々持ってるから」


「旦那がそう言うなら、大丈夫ですね」


そして何事も無くこの領最後の街を抜けた。


「さて……少し休憩しましょうかね旦那、後ろのお客さんの相手もしないといけないですし」


手鏡を出して後ろを見る、実は先程の街に入る少し前からずっと付いて来る奴が居た。


「あの馬車のタイプ、奴隷運搬用ですな。恐らく旦那の一級品を見て横取りしようとしてますよ」


「こら、レギル。セレーネちゃんを物みたいに言わないの!!」


「あでっ……」


ライラが馬車の中からレギルを小突く、レギルもセレーネに謝るがセレーネは上気した顔で「私が……ご主人様の……」とか言っている。


そんな話をしている内に、林を抜け他の馬車も利用するドライブインみたいな場所に到着した。


「それじゃあ旦那、俺は馬車を着けて馬を休ませてきます」


「あぁ、頼んだレギル。ライラはアミー(※アミリアの偽名)とレナを守ってくれ」


追って来てる奴に聞こえる様にいう。


「わかったわ」


「ユウキ……」


「シャリアとセレーネは付いてこい」


「「はい、御主人様!」」


真剣な顔をした二人が馬車を降りる。


「皆、固くならないでも大丈夫。これからも、荒事こういうことがあるかもしれないし、気楽にいこう」


そう笑いかけると、強張ってた表情が元に戻る。


「それじゃあ先に屋台を見てくるね」


そうして日本のアーケード街みたいな屋根が併設された屋台群で豪遊っぽい動きを見せる。


「おー兄ちゃんよお~こんな別嬪二人連れて、いい度胸じゃねーか!」


するとこういったアホが釣れるので、セレーネに任せる。


当然俺は後ろで、ビビりつつもふんぞり返っているフリをしている。


「ご主人様……」


シャリアが耳打ちをしてくる、先程のずっと追ってる馬車の奴隷商がこちらを伺っていると。


「まさか、こんな簡単な手に引っかかるなんて……」


さっさとチンピラを片付けたセレーネの頭を撫でながら言う。


「はぁぁ~ご主人様ぁ~」


「なぁ、シャリア。セレーネにかけた契約魔法。本当に普通の契約魔法だよね?」


「そうよ、普通よ」


「そうか……」


段々目がトロンとしてくるセレーネの撫でる手を止めると、少しつまらなそうな顔をする。


「はい、終わり。続きは馬車の中でな……」


腰を抱いて耳打ちするとくすぐったいのかビクンビクンしてる。


そうして馬車に戻りライラとレギルに、アミリアとレナの護衛を任せ屋台へ向かってもらう。


「さて、そろそろ来るかな?」


シャリアに膝枕されつつセレーネに添い寝をしてもらっていると、馬車の外から声がかかる。


「すみません、少しよろしいでしょうか?」


なんだろう、いかにもな風体の小太り親父が声を掛けてきた。


「ん? 誰ですか貴方は?」


「えぇ、私。奴隷商をしておりますザッケと申します」


「奴隷ねぇ……」


「えぇ! それで貴方様のその美しい奴隷を見せていただきたいのです!」


舐め回すような視線で二人を見る、シャリアは平然としているがセレーネは気色悪るそうな顔をして俺にひっいて来る。


「この二人は見世物じゃないんだけど……」


ローブでセレーネを隠して言うと、一瞬苛立った表情を見せる。


「そうでしたか……すみません」


そう言ってザッケは引き下がる。


「おや、すんなり引いたな……」


「そうね……何かあるのかしら」


魔力探知で探ってみると、どうやらあの荷台に大きな獣が居るらしい……。


「セレーネは大丈夫だった?」


「は、はいぃ~大丈夫でしたぁ~」


「なんかトリップしてるけど大丈夫か?」


「そうねぇ、宝石獣は体温が高いからローブの中でのぼせたのかと……」


「そっか……ごめんなセレーネ」


そっとローブをどけると「あっ……」っと少し寂しそうな感じの声がしていたが、シャリアが大丈夫と言うので任せる事にした。


「それで、特に何も無かったんですかい?」


「そうなんだよね、挨拶してきたくらいでさっさと帰っちゃったし」


「でも付かず離れずの距離を保っているのね……」


ライラが後ろを警戒しながら言う。


「でも、ムカつくわね……セレーネさんの事そんな風に見て」


お腹いっぱいで寝てしまったレナに膝枕をしながら、アミリアが憤る。


「私なんて見向きもされなかったわ、セレーネのオマケ程度にしか思われてないみたいだし」


ぷりぷり怒りながらシャリアが言う、確かにサキュバスとして魅了チャームを使わなくても今のシャリアなら目を引くのは確実だ。


「それほどまでに宝石獣しか見えてないって事なんでしょうね……」


ライラが言うと、皆が大きなため息をついた。


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次回、新しい仲間が。


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