第13話:宝石獣の少女・後編
「「「「「うおぉぉぉぉぉ!!」」」」」
歓声と共に『殺せ!』とか『食われろ!』とか聞こえて来る、防音性が高い筈だが声が聞こえて来る、正直胸糞が悪い。
「どうしてこんなに騒いでるんだ?」
事情を知ってそうな先輩さんの方に聞く。
「
「じゃあ……宝石獣の子なんて数が少ないんじゃ?」
「えぇ、宝石獣は一時期乱獲されたわ、でも今代の魔王になってからはその庇護下に置かれ守られているわ」
「え? じゃあここに居るのは?」
「まぁ、その……そういう事よ……」
目を逸らす先輩さん、なんとも嫌な内容だな……。
「まあ、いくら貴方でもあの子を買う事は不可能よ、それこそ今日の稼ぎの数十倍が必要になりますから」
「ふむ、数十倍でいいのか……」
「まさか、ソレだけの金額の当てがあるとでも?」
「ここは賭博場で闘技場だろ? ゼカリヤさん呼んでくれる?」
「はーい!」
後輩ちゃんの方に声を掛けると元気な声を放ち出て行った
「一体何を?」
「うーん、ちょっとした人助けをね」
「まさか……無理よ! 地竜なんて上級冒険者が束にならないと勝てないのよ!?」
「最上級冒険者だったら?」
「いいとこ戦えるくらいよ……」
「ふーむ……地竜のレベルが400か……余裕だな」
「え?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇選手控室——宝石獣の少女——◇
「いつまでここで戦えばいいんだろう……」
半年前、魔王領で人間に捕らえられた私は、ここに連れて来られこの裏闘技場で闘っていた。
元々戦闘能力の高いお陰で私は今まで生き残って来たが、それも今日で終わりだろう。
「まさか地竜なんて……勝てるわけ無いよ……」
最近勝ちすぎて支払いが嵩んだのだろう、私を完全に殺すカードを組んで来た。
「クソッ、これなら王の生き人形にでもなればよかった……」
――――コンコン。
誰かがやって来た、恐らく支配人が嫌味を言いに来たんだろう。
「失礼しま~す」
入って来たのは少しだけ身綺麗な冒険者風の男性だ、
「誰ですか貴方」
「そんなに睨まないでよ、取って食う訳じゃないんだし……まぁ、こんなとこで殺し合いをずっとさせられてたら当然か」
そう言うと柔和な笑みを浮かべて彼がこちらを見る。
「へぇ……見た目は人間と一緒だね」
「そうですね、宝石獣や魔人族は【人化】と言った魔術が使え、人と同じ様な姿になれますから」
「へぇ……凄いね。ねぇ君、【人化】は解除できるの?」
「出来ます、でも服などは変えれませんので一度なると戻った時が……」
って私は何をペラペラと!?
「そ、そうか……ゴメン」
彼は顔を真っ赤にして目を逸らす、隣にそんな美人侍らせといて初心かよ……。
「そ、それじゃあ本題に入ろう! 君はここから出て自分の家族の元へ帰りたく無いかい?」
何を馬鹿な事を……帰りたいに決まってる。
「何ですか? 私をあざ笑いに来たんですか?」
殺意を込めた目で睨むが、彼はそよ風の様に流されている。
「そういう訳じゃ無いんだ、見たところ君はあの地竜に勝てない。それでも諦めないか? って事を聞きたかったんだ」
「えぇ……そうよ、帰りたいわよ! 諦めたくないわよ! でもあんな
心も、身体も冷えるのがわかってしまう。そしてまじまじと思い知らされる、私の死が近づいて来てる事を。
「そっか、それじゃあどうせ死ぬなら分の良い賭けをしてみないかい?」
「それって……どうゆう事?」
「大丈夫、手を取れば――全て上手くいくから」
おずおずと彼の言葉に手を伸ばす、どうせ死ぬなら最後にこの人に賭けても良いんじゃないかと思ってしまった。
「それじゃあ交渉成立だ!」
ガッチリと握られた手から熱が伝わる、温かくて安心する熱だ。
「さぁ……行こう」
人生最後だとしても、この温もりは忘れないだろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆
『さてさてここで飛び入り参加の登場だあ!!』
ジロジロと値踏みする様な視線が突き刺さる。
『ギルド最低級ランクのユウがカーバンクルの少女をたすけるため地竜との決戦だあ! なんと倍率は50倍もはや一獲千金のレベルを超えているぞ!!』
「わああああああああ!!」
相変わらず『殺せ!』とか『食われろ!』と聞こえて来る、同じ奴か?
さてさて、サクッと倒しますかね
「ギャアアアアアアアア!!」
噛みつこうとしてくる地竜の顎を蹴り上げる、そのまま顎と牙を砕かれ血を撒き散らす
『は?』
「うーん流石竜、頑丈だな……」
「よいっと!」
「ぎゃうぅ!?」————ズシンッ。
側頭部を蹴り抜く。するとふらふらとして大きな音を立てて倒れ込む。
地竜を気絶させるとどよめきが会場全体を包んだ。
『んなぁ!?』
「え? これで終わり? 次は?」
会場が唖然とした状況から興奮に変わる。
「次がいないなら、この賞品はもらっていくよ!」
「わわっ」
少女を担ぎ上げ、そのまま歩きだすと。支配人が慌てて追いついてくる。
「待て待て待て! どうゆうことだ!」
「殺戮ショー見に来たわけじゃないし、この子を買いに来たんだよ」
今日の稼いだ分からこの子の買取金額をキッチリ取り出し投げつける
「ひぎゃぶっ!!」
「それと『——
宝石獣の彼女から奴隷刻印が浮かび上がる、そのまま指ではじくとカラスの割れた音がして砕け散る。
「ええい!! 誰かコイツを止めろ!!」
支配人がみっともなく叫ぶが、護衛もひと睨みで動けなくなる。
「それじゃあ、払うものは払ったし、この賭けは俺の勝ちだね♪」
そう言うと、支配人がへたり込む、その姿を置いて外に出る階段を登った。
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