第11話:自分でばらすのかよ!!


「二人は御者台で盾を構えてて下さい!」


空間収納アイテムボックスから、春華との訓練用に使う大盾を取り出し投げ渡す。


「旦那は!?」


「この数の山賊程度なら一人で大丈夫です!」


「無茶よ! 数が多すぎる!」


「大丈夫です! 何も問題無いです!」


考えてる通りだと、山賊というより正規兵っぽいし。


「ほう? 最近の若者は山賊を舐めてるねぇ……」


やたら小奇麗な服を着てニヤニヤしながら、リーダーっぽいおっさんが剣を抜いてくる。


「…………はぁ……」


呆れた様な感じで剣をだらりと下げ、ため息をつく。コイツ馬鹿なのかなぁ……。


「おやおやぁ~諦めちゃったのかなぁ?」


「いや。お前等、自分で山賊とか、馬鹿だろ……」


「は?」


「なんでこんなとこで襲う奴が、そんなに綺麗な服着てるんだよ……」


「へ?」


まじまじと自分の服を見る敵達、俺がとして雇った冒険者と遜色ないくらいの綺麗さの服を着ている。


「それに、こんな森の中で馬車を引っ掛けて掠奪りょうだつしてるのに泥の汚れがほとんどついて無いじゃないか……」


「んなぁ!? 」


「それにもう一つ、あるんだけど……」


「まだあるのか!?」


リーダーが、顔を真っ赤にして言って来る。


「いやね、どう考えても武器が綺麗だし、しかもかなり手入れされてるよね? 掠奪した武器が何でそんなに統一感あるの?」


「ぐぬぬ……」


「という事からアンタらは山賊じゃない、どこぞの私兵だ。という訳なんだけどさ、大人しく吐いてくれるなら痛みは感じさせないよ?」


身体に当たらない位、ギリギリの位置でリーダーの剣を両断する。


「ひぃぃぃぃ!?」


「んなっ!?」


「えぇっ!?」


後の冒険者二人も、突然剣の半分が落ちて驚いてる。


「んなっ!? 陛下から頂いた剣が!?」


「陛下だって!?」


「それ、どういう事!?」


自爆したよ……元々この二人の冒険者が襲われた事をダシに、国内外にある共通組織のギルドを巻き込む予定だったけど……愚かすぎない?


「貴様ぁ!! 適当な事を言うな! 我々は誇り高き盗賊だぞ!!」


「いや、もう山賊と盗賊の違いが……」


何? 王国の正規兵ってこんなに馬鹿なの?


「あの……お頭、さっさと殺して口封じしません?」


見かねた部下がリーダーへ提案をしている。


「そ、そうだな! 栄えある第五騎士団の刃の元に骸となれぇぇぇ!!!」


『——磔荊たっけい石槍せきそう


「「「「「ぎゃあああああ!?」」」」」


大量の棘を生やした槍を地面から出し敵を貫いて行く、ものの数秒で全員が絶命、又は戦闘不能になった。


「はい、終了。連絡役とかも置いて無いって、本当に馬鹿じゃないかなぁ……」


広域探知魔法で周囲に敵が居ない事を確認して剣を収める。


「強い……」


「旦那……アンタは一体……」


冒険者二人が驚きながら近寄って来る。


「聖女の護衛ですから、それなりに強いですよ」


「だからってその強さは……」


「えぇ……最上級冒険者クラスの強さね……」


(そうか……これぐらいで最上級なのか……)


色々と考えながら車軸を復元させて、更には道の段差もなだらかにしていく。


「旦那……凄いですね……」


「何でも出来るのね……」


「というか何で、旦那なんですか? 明らかに年上ですよね?」


男性冒険者の方に向きなながら作業していると苦笑いをされた。


「あぁ、この人、年上だろうが年下だろうが構わず『旦那』呼びするんですよ……辞めろって言ってるんですが……」


「すみません……性分みたいで抜けないんです……」


「そうですか……まぁ良いか。よし、補修終了!」


「「おぉ~」」


「では、頼みますよ」


「わかりやした! 旦那!」


「――はぁ……」


「あはは……」


◇◆◇◆◇◆◇◆

それから日が落ちるまで走り、何とか予定してた街へ到着した。


歓楽街の高級宿の前に馬車をつける。


「それじゃあ旦那! 俺は馬を繋いできます!」


「では、私は部屋の確保を」


そう言って二人共素早く御者台から降りて行った。


「いやー尻が痛い痛い……『——ヒール』」


「ユウキさん……貴方ねぇ……」


「お兄様……大丈夫ですか?」


膝に乗せた二人を降ろし自分にヒールを掛ける、お尻の痛みも和らいでくる。


「大丈夫大丈夫、問題は無いよ」


それから数分後、女冒険者が鍵を受け取り戻って来た。


「お待たせしました、降りても大丈夫です!」


最初に俺が降りて、次にアミリア、最後にレナを抱っこして降ろす。


「「すご……」」


この世界では珍しいかなりの階層の宿だ、ぱっと見客室も30以上はあるだろう。


そうしてそのまま連れられ中に入ると1~2階が吹き抜けになっていて1階は酒場と舞台がある、そこから上階に上がると奥に上に行く階段がある。


「それでは、最上階に私達の部屋があります、左隣は私が右隣が私の相方が泊まります、それで真ん中が聖女様達ですね」


「ありがとう、それじゃあ今日はこの後、自由に過ごして良いからまた明日ね、えっと……」


「ライラです、そう言えば名乗ってませんでしたね」


鍵を受け取り、ライラへお小遣いを渡す、すると目を丸くしている。


「あの? これは?」


「ご飯代と酒代」


「い、いえもらえませんよ!!」


「気にしないで。二人で飲んでよ、ただ飲み過ぎないでね」


「あ、はい……ありがとうございます!」


まぁ、二人のトイレ中の護衛とかもしてもらってたし、これ位はね。


そうしてアミリアとレナを連れ客室へ向かった。


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次回もふもふ登場……。


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