第10話:尻の痛みと襲撃

多くの人に見送られたアミリアとレナが馬車へ乗り込んでくる、教皇が作らせた馬車なのでかなり派手だがこの際役立ってもらおう。


「お疲れ二人共」


「凄い人だった……」


「こんなのはじめてですぅ……」


鳴りやまない歓声に押される様に、馬車が走り出す。


小窓を開き御者の冒険者に声を掛ける。


「すみません、お願いしてしまって……」


「あぁ、大丈夫だ」


「えぇ、任せて」


昨日、アミリアと共に冒険者ギルドを訪れ、二人共登録をしてきたのだ。俺は【ユウキ】の名前でアミリアは【アミー】という名前で登録をしたそのついでに、教会から御者の依頼を出してきた、この二人は高ランクの冒険者である。


それに念の為馬車には防御魔法の魔道具を取り付けているので、突発的な襲撃には対応可能だ。


「そうだ、二人共。窓を開けて手を振ってあげると良いよ」


「えぇ……まだやるの?」


「わかりました! がんばりますぅ!」


レナは好意的だがアミリアは疲れたのか、面倒臭そうに言う。だけどしっかり窓を開けて手は振る。


『『『わあああああああああ!!』』』


大きく沸く沿道の人々を見て少し嫌そうにするアミリア。


「どうした?」


「いえ……私達がスラムに居た時は、煙たがられるだけでした。でもこうして聖女という役を得たら嬉々として感謝をする。そんな人たちに嫌な気分になっただけです。」


「お姉様……」


「レナ、大丈夫よ。それなりに割り切ってるもの」


そう言うアミリアは、にこやかにだが冷たさの残る笑いを浮かべ、外に手を振っていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆

「さて、二人共ここからの流れを説明するよ」


「「はい!(わかったわ)」」


「レナスから得た情報だと、王都の外に出て少し間進むと刺客が来るらしい」


刺客という言葉に二人共表情が硬くなる。


「大丈夫、二人どころか。馬車には手を出させないし。敵も50人くらいらしいから問題無いよ」


「ごじゅ……」


「それは、大丈夫とは言えないんじゃ……」


「まぁ、とにかく! 任せておいてよ!」


「わかったわ、無理だけはしないで」


「そうです、お兄様は何かあったら生き延びて下さい」


心配そうな二人に笑顔を向け頭を撫でると、少し不満げだが嫌々納得してくれた様だ。


◇◆◇◆◇◆◇◆

それから2時間、小さな村を抜け森に入る。整備されてるとは言え極稀に木の根が出ていたりする。


「いてっ……」


「ひゃうっ」


「きゃぁっ」


教皇の馬車とはいえ前時代的なものでサスペンションが無い、だから衝撃がダイレクトにくる。


「森に入ったら道が凄いね……」


「そうですね……」


「お尻が痛いです……」


小窓を開け冒険者にどのぐらいかかるかと聞くと、次の鐘、つまりあと一時間はこのままだそうだ。


「長いですね……」


「うぅ……」


俺も馬車移動には慣れないんだよなぁ……仕方ない。


「レナ、こっちにおいで」


レナを膝の上に座らせ、回復魔法をかけるこれで少しはよくなる筈だ。


「むぅ……レナだけずるい……」


ぷくーっとむくれるアミリアへ、妹だけ座り心地が良いのが羨ましいのかそんな事を言う、なので苦笑いをしながらアミリアを膝へ座らせる。


「ちょ!? ユウキさん!? 顔が!?」


「あっ、ゴメンゴメン近かったね」


落ちない様に腰を押さえてるのもあるのか顔が赤くなる。


するとその瞬間大きな段差を越えたのか揺れが起き、俺達が浮き上がる。


「おぉ!?——よっと……」


「きゃあぁぁぁ!?」


「ひゃあぁぁあ!?」


咄嗟の事で抱き付いてくるレナとアミリア、腰と顔に柔らかい感触がぶつかる。


「大丈夫二人共?」


咄嗟に抑えながら聞くと、頭上からアミリアの下からレナの声がする。


「大丈夫です、お兄様!」


「ちょ……ユウキ!? どこ触ってるの!?」


「見えないから分からないけど……背中?」


突如脳天に衝撃が走る、咄嗟の事なので視界がチカチカした。


「いっつぅ……この石頭!!」


開けた視界で見るとアミリアが顔を赤くして肘をさすっていた。


そして、少し傾いて馬車が止まっている。


小窓を開けて聞くとどうやら段差を乗り越えた際に、車軸に異常が起きてしまったらしい。


「それじゃあ二人共、馬車の中に居てね、直してくるから」


「——フンッ!」


「行ってらっしゃいませ!」


外に降りて車軸を見ると、細く擦り減った左側の軸が斜めに破断していた。


(あの教皇まさかあの体型で、修理してなかったのか!?)


「どうですか? 直りそうですか?」


御者を務めている男性冒険者が聞いてくる、一応事前説明として俺の事は、護衛兼馬車の修理も行う者と伝えている。


「これ位なら直りそうだけど……この森ってここまで段差が酷いの?」


「いえ、そんな事は無いわ。 ここの部分が穴が掘られていたの」


「衝撃がそのまま来るようになってたのか……って事は……」


「えぇ、もしかしたら意図的にやられていた可能性が……!?」


女性冒険者目掛けて、死角から飛んできた矢をキャッチする。


「大丈夫ですか!?」


咄嗟の事で抱き寄せてしまったが大丈夫だろうか?


「えっ、ええ……大丈夫よ」


「旦那! 襲撃者です! 数が多い!!」


男性冒険者も警戒しつつこちらへ寄って来た。


「おいでなすったか……さて、食前の運動と洒落込もうか!」


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