|幕間|異変に気付いた者達と予知夢。

◇理映side◇

その日は残業を終えて一休みしていた所だった。


——ビーッ! ——ビーッ!


「うわぁ!? びっくりした!」


完全に寝かけてた意識が浮かび上がる共に、異変を調べる。


「勇者召喚の術式? でもこれは呼び出した訳じゃ……呼び出されたのか……」


魔法でも魔術でもない理外の術式、それは僕達【神様】と呼ばれる世界の管理者が使える術式だ。


「呼び出されたのは……マジか」


頭を抱えて途方に暮れる。


ともかくに飛ばされたのか、それを調べないといけない。


「これは骨が折れるなぁ……」


普通、呼び出しする際は、召喚者の管理する世界の神様への許可が必要だ。


召喚の手順は社則で決まってるので違反者が出ると問題になるのだ。


「もーめんどくさい!! 誰だよ~」


数万の管理者神様が居るので、調べるのにもかなり一苦労だし凄く時間がかかる。


「ともかく……上司に連絡して、皆にも伝えなきゃ……」


「まぁ、優希君は指折りの実力者だし、それを呼び出す位だから。正直、切羽詰まってるんだろうな……」


「会社の管理サーバーにアクセスをしつつ、ふぁぁぁあ~」


大欠伸が出た……眠い……。


「検索結果が出るまで寝てるか……」


ぼうっと流れる検索画面を見ると想定時間が出る。


「検索は……うげぇ……3時間か……」


うん、寝よう!


手早く大神様と運命神様に要件のメールを出して椅子のリクライニングを倒す。


「ゴメン、優希君……起きたら頑張るから……Zzz」


◇◆◇◆◇◆◇◆

◇水城 耀side◇


「あぁぁあぁぁぁぁ!!!」


その日は優羽ゆわちゃんの悲鳴により目が覚めた。


「優羽ちゃん!? どうしたの?」


「優希さんが……優希さんが居ないんです!!」


抱き付いてきた優羽ちゃんの背中をさすりながら事情を聞くと。


1.朝起きて、優希が居ない事に気が付く。

2.トイレかと思い待っている。

3.数時間しても戻ってこない。

4.不安になりトイレやお風呂を見て回る。

5.玄関にも靴がある。

6.色々なモノがフラッシュバックして耐え切れなくなった


という事だ。


「大丈夫、もしかしたらお仕事かもしれないし」


「でも……」


「またどっか頼まれて人助けしてるのよ」


「そうなんですか?」


「そうね……大体みんな優希の人助けが原因でここに居るから……」


そう言うと、思い当たる節があったのか優羽ちゃんが苦笑いをする。


「そう……ですね」


「さて、まだ朝ご飯までもう一眠りしましょう、今日はメアリーとユキちゃんと勉強でしょ?」


「はい、そうです」


「じゃあ、せっかくだし、優希のベッドで寝てようか?」


「でも……」


「良いの良いの! さあ寝るわよ!」


優羽ちゃんの手を引いて優希の寝室へ向かう。


(全く……どこほっつき歩いてるのよ)


眠りについた優羽ちゃんの背中を撫でながらここに居ない人を想った。


◇◆◇◆◇◆◇◆

◇優羽side◇

「アナタ、ユワって言うのね。よろしく!」


赤髪の私よりも少しだけ年上の少女が手を差し出してくる。


その姿はとてもカッコよく、彼女が携えた剣も陽光に煌めいてより一層の美しさを引き立てる、その様はエアリスさんと良く似通っている。


そして場面が変わり今度はお城の庭園に切り替わる。


「ユワお姉様! こちらへ!」


先程の少女によく似た、だがそれよりも幼い少女が私の手を引く。


「レナ! 少しゆっくり走って!」


夢の中の私が言うと、レナと呼ばれた少女がにっかりと笑う。


「ごめんなさい、つい楽しくて!」


私の言葉に気を悪くしたわけでもなく、ただただ嬉しそうに謝って来る。


そうして手を引かれて行った先に、日傘を持った凄く綺麗な金髪の女性が居た。


「リリアーナお姉様!」


「レナとユワ、どうしたのですか?」


「お茶の準備が出来たと、メアリーお姉様が!」


「リリアーナさんの、をしてきてと頼まれましたので」


そう言うと夢の中の私とレナがリリアーナさんの手を握る、凄く冷たい手だ。


「ありがとう、二人共。行きましょうか」


目の見えない彼女を私達が案内していく、そして庭園の中央に優希さんと皆さんが居た。


「ユウキお兄様! リリアーナさんを連れてきました!」


「ありがとう、レナ、優羽」


そして肌の弱いリリアーナさんを日陰に誘導してあげて座らせると、メアリーさんが紅茶の入ったカップを置いて行く。


「お三方には、お菓子もありますので。どうぞ、お召し上がりください」


私とリリアーナさんとレナの前にテレビでよく見るティアスタンドに置かれた、その上に乗るお菓子は宝石みたいだ。


「「わぁ~!」」


私とレナの声が重なった。


そうして取りそろえたケーキを食べようとした瞬間、そこで夢は途切れてしまった。


◇◆◇◆◇◆◇◆

◇理映side◇

――ピピピ! ――ピピピ!


「んー起きなきゃ……」


アラームを切って起き上がる、丁度検索も終わっていて、二人の上司から、メールも返って来ていた。


「あぁ、やっぱりか……」


そこには召喚理由とどこの世界に呼ばれたか、どの神様の部下なのか詳細に書かれていた。


「とりあえず……皆に説明しようかな」


大きく伸びをして紙に出力した結果を持って優希君の家へのゲートを繋いだ。

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