第68話:不味い事になってるらしい……。
優羽が家族になった翌日、俺はアストラの首都に来ていた。
「ガリウス様、【勇者】カミナギ ユウキ様を、お連れしました!」
「ご苦労、下がって良いぞ。それとお前達、俺はユウキと重要な話がある、終わったら呼ぶ故、一旦休息取っていてくれ」
「「「「「はっ!!」」」」」
そう言って衛兵と文官を下がらせる。
「待たせたなユウキ」
最後の1人が出ていくと、大きく伸びをするガリウス。あの体格でしっかりと書類仕事もやるし、ちゃんと政治的な話や会議にもしっかり出るのだ。
「それで鳳さんのご両親が見つかったんだっけ?」
「そうだ、ただちょっと厄介な事になってな……」
気まずそうに頬をかきながら言うガリウス、厄介事かぁ……。
「どうしたの?」
「これを読んでくれ……」
そう聞くと、ガリウスがこめかみを抑えながら一枚の紙を手渡してくる。
「えっと……『返してほしくば力づくで来い!』ってなにこれ?」
「あーうん……恥ずかしい話だが、その部族はな未だに古い奴隷制度が色濃く残っているんだ、それで流れ者のオオトリ夫妻を勝負で負かして奴隷にしてしまったんだ……」
物凄く申し訳なさそうな顔をするガリウス、まぁどうして困っているのかというと。
この世界も奴隷は存在していて昔は強制労働や召使としての意味合いのある階級制度の名残だったんだけど、今は奴隷と言うと一種の保護階級で親や身寄りのない子供達の安全などを権利として確保する事で、不当な人身売買や強制労働をさせない様にしている。
ただ無論そのまま保護するのではなく、勉学などの教育や様々な仕事の斡旋で将来自由な職に就ける様にする為の制度として改変された。当然、旧体制の奴隷商も反発したが殆ど方針を転換し、それでも不当な事をしていた者たちは逮捕されたりもした。今は将来的に貴族家等の上流階級に買われる事が多いのでどこの奴隷商も教育に躍起になっていたりする位だ。
「つまり、その部族の連中を倒さないと駄目って事かぁ……」
「まぁそういう事だ」
「わかりました、それじゃあ俺がいっちょ行って……」
「あースマン、それが無理なんだ……」
バツが悪そうなガリウスが遮る。
「どうしてです?」
「それがな、その部族の掟として、奴隷解放にはその身内や親族出ないと駄目となっているんだ」
「それは非常に厄介だな……」
「本当にすまない、本当は掟自体も変えたいんだが、アストラの国という以上勝負事で決まるのは絶対でな……」
「その部族を倒して、掟の改変は駄目なの?」
「それをすると他の部族も『自分達の掟が無理矢理中央政府に壊される』と思ってしまうから難しいんだ」
確かに、長年の掟を破棄しろなんて、迷惑クレーマーも良いとこだし、アストラっていう国の在り方にも問題が出てしまう。
「まぁ……あの嬢ちゃんが強くなれば話が早いんだが……」
「ちなみにどのくらい強いの?」
「俺の全力の8割位の強さだ」
「うっ……それじゃあ、結構厳しいね……」
「あぁ……」
悩む俺達、どうしたもんか……。
「まぁ、一つだけ方法というか……抜け道があるんだが……」
「それって……どんなの?」
「うーん俺からユウキに伝えるのはなぁ……ともかく今日か明日にでも嬢ちゃん連れてきてくれ」
「わかった」
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから日本に戻り、鳳さんに連絡すると明日の学校終りに一緒に行く事になった。
「おう、来たな」
「よ、よろしくお願いします」
「そう緊張するなよ、これから重要な事を話すんだ」
「はい!」
「それでガリウス、抜け道ってのは?」
「あぁ、お前達夫婦になれ」
「「はい?」」
思わず間抜けな声が出てしまった。
「い、今なんて言ったんですか?」
鳳さんが聞き返す。
「あぁ、ユウキとリナが結婚しろって言ったんだ」
「ちょっと待ってください!何で!?」
「まぁ、その……お前らが夫婦なら件の決闘にも参加できる。それにユウキは俺よりも強いからな絶対負ける事は無いという訳だ」
「わかりました結婚します!」
「鳳さん!?」
「お父様とお母様を助ける為です! それならこの身すら安いものです!」
「もうちょっと大事にしてくれないかな!?」
「私じゃ勝てる要素も無い、それに今から頑張ってもかなり時間がかかります! だったら優希さんと結婚して、お父様とお母様を助けて貰う方のが確実です!」
鳳さんが俺の目を見て言い切る、どうしよう……。
「わかった、とりあえず耀達に確認してからだね」
「…………ユウキよ、お前ヘタレだな……」
だまらっしゃい、ちゃんと夫婦で話し合う事にしてるんだよ!
「とにかく、一旦もどろうか……」
そう言って二人で転移をして戻り、皆の居るリビングへ。
「ただいま」「失礼します」
「おかえり~」「おかえりなさい」「おかえりなさいませ旦那様」
とりあえず耀とエアリスとメアリーが居たので説明をする。
「全く……いつも言ってるじゃない優希のしたい事をしなさいって」
「そうですね、私はまだ妻になって日も浅いですが、
「はイ、私も皆さんと同じデ、優希さんガ、世界を滅ぼすというなら喜んでお手伝いするくらいですかラ」
「いや世界は滅ぼさないよ!?」
「ジョークでス」
「心臓に悪いなぁ……」
そう言うと皆が揃って笑いだした。
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あとがき
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