第64話:ずっと好きだった、そしてこれからも。

両親や、皆の両親に伝えた翌日、俺の部屋に鈴香がやって来ていた。


「優希さん、昨日の事なんですが」


「鈴香のご両親の事?」


「はい、皆さんと話し合ってお父さんとお母さんにも見てもらおうって事になりました」


「そっか、了解。じゃあ次の休憩の時に厳徳さんに伝えて来るよ」


「はい、お願いします!」


「すみませんお二方、次の来客の方が見えました」


「仕方ないですね……」


「ゴメンね、忙しくて」


「仕方ないですよこれだけ沢山の人が来ていらっしゃいますから……」


そう言って鈴香が部屋の隅に積まれた大量の贈り物を見る、これで今日一日分だ。


「では、これで失礼しますね」


「あっ、鈴香ちょっと待って」


振り返った鈴香に抱きしめてキスをする、昨日はできなかったので今日はやろうと思ってたんだ。


「わわっ……ありがとうございます優希さん!」


その言い方はどうなんだろうって苦笑いをしながら見送ると、しばらくして新しい来客が来た。


◇◆◇◆◇◆◇◆

それから来客の対応を終え日本に戻り厳徳さんに鈴香の両親の事をお願いして戻ってくると、メイド長からエアリスが会いたいとの事だった。


そして指定された場所に進むとエアリスが居た。


「お久しぶりです、ユウキ様」


「久しぶりエアリス、どうしたの?」


「お話しをしたくて……久しぶりに上りませんか?」


それからエアリスに連れられて鐘楼へ登る、頂上の光景は懐かしく相変わらず綺麗だった。


「懐かしいですわね……」


「そうだね……」


昔こちらの世界に来て、エアリスに教えてもらった場所だ、日本と違って高い建物も少なく地平線まで望む事が出来る場所だ。


「最初にエアリスに連れてこられた時は、殺されるんじゃないかと思ったんだよね」


最初にここに連れてきた貰った時は中々に思いつめた様な顔で俺を見ていたんだよね。


「そ……そんな事は無かったですよ!?それにユウキ様はあの時ユキの村の事でひどく落ち込んでいられてましたし……」


「あーあはは……そうだっけ?」


よくそんな事覚えてるなぁ……あの時はユキの村にモンスターが侵攻してて到着した時には村が全滅してて……死にかけてたユキを保護するために死に物狂いで戦ったんだよね。


文字通り満身創痍で敵を倒しきった後にエアリスが「今あなたに死なれると非常に困るんです!誰が勇者様の代わりになれるんですか!わかったら命を大事にしてください!」ってボロボロ泣きながら怒られたんだよね。


「そうです!エルフの森を助けるのにユフィに向けられた呪いを受けて死にかけたじゃないですか!」


「あはは……そんなこともあったね……」


邪神の幹部が死の間際に放った呪いを受けて、世界樹の泉で数日漬け込まれたんだよね、あの時エアリスがずっと看病しててくれたんだっけ……


「もう!その時は本当に必死だったんですよ!回復魔法は使えない、体がひび割れて回復しての繰り返し、熱も高温で更には血まで吐いてたんです」


「そんな事になってたのか……知らなかった……」


「あ、今覚えてる様な口ぶりでしたね!」


「それに私は何度もユウキ様に命を救われたんですよ……」


「そうだっけ?」


「えぇ!ダンジョンで罠にかかった時や敵の攻撃から、敵に囲まれて袋叩きにされた時なんて覆い被さって耐えてくれたじゃないですか!」


「そんな事あったかなぁ……」


「ありました!」


その件は覚えてない……確かにダンジョンの罠にかかってモンスターハウスで滅茶苦茶な数のゴブリンとかに意識が飛ぶまで戦ったのは覚えてる……その後は無意識にエアリスを守ってたのか……


「でもあの時守れて良かったよ……」


「私もあの時は死を覚悟してました……ミュリ達が助けに来てくれるのがもう少し遅かったら私も襲われてましたから……」


「そこまでだったのか……俺死にかけすぎじゃない?」


「そしてあれ以降、よくここで話をするようになりましたね」


「そうだね、何かあった時にはここに居た様な……」


「異世界の事を沢山話してくれましたね……」


自然と二人で並んで地平線を眺める。


「でも、よかったです、ユウキ様が死んで」


「その言い方、酷くない?」


「でも……そうでも無ければ、こちらの世界にまた来れなかったでしょ?」


「そうなのかな……でもあのタイミングだとそうだよね」


「お陰で、私は成金貴族や黴臭った歳の貴族と、望んでない結婚をしないで済んだのですからよかったです」


そう言って少し暗い顔をして笑うエアリス、まぁ確かにあの連中にエアリスが渡らないで良かった。


「でもまさか……エアリスにそこまで好かれているなんて思いもよらなかったよ…」


「はぁ……」


呆れた顔をするエアリス…いや、だって寝取られたと思ったんだよ?


「私も再会した時には。ユウキ様に、変装したミュリと婚約してるって間違えられましたしね」


「うっ……仕方ないじゃん…、最後の方全く会わなかったし、意味深に二人で出かけてたし、明らかに避けてたじゃん」


「うっ……それは……だって、顔を見れば見るほど好きになるんですもの……でもその時のユウキ様は帰らないといけない存在でしたし、それなのに私が我儘を言ってユウキ様を引き止める訳にもいかなかったし、ですので出来るだけ合わない様にしてたんですよ」


「そっかぁ……ごめんな…」


「私も悪かったです……すれ違ってしまったんですね私達……」


「でも、またこうして会えたし」


「そうですね、確か結果オーライでしたっけ?」


「うん、合ってるよ」


「これからは逃がしませんからね」


「俺だって、逃がさないよ」


どちらからともなく、手を握り笑い合う。


「それじゃあ、改めて……エアリス、ずっと好きだった、そしてこれからも一緒に居て欲しい……俺と結婚してくれますか?」


「はい、喜んで!」


夕暮れの街に夜の帳が降りて月が顔を出し街を優しく照らす、その下で影が一つに重なった。


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作者です!

今話の挿絵は後で近況ノートに上げますね!


ここまで回収しました!!長かった!!一番最初に立てたプロットはここまでです!!


これで予定してた第一部?は終わりですここからは現代で無双したり、異世界で無双したり!色々と考えてます!是非お楽しみに!

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