第24話:久しぶりの味

それから家具屋に言って俺達はテーブルと椅子(店員さんに言われて気が付いた)を購入してユフィの家に戻るとカレーの美味しそうな匂いがした。


「あ、優希おかえり~」


「上凪さんお疲れ様です」


「優希おにーさんおかえりなさい」


三者三様の返しをされる。うん、お帰りと言われるのはいいな。


「あれ~?おにーちゃんだけですか?」


「あー優希が大きいからね」


「う、うん!上凪君の顔を見ると視線がね!」


「あはは…お帰りなさい冬華」


「ただいまー」


「あれ?ミュリさんは?」


「あぁ、ミュリなら雛菊さんを迎えに行ったよ」


テーブル等の購入と市場を回った後ミュリは「ヒナギクは魔法鎧店の店長だと知られてるし、普段は店から出ないんだけどな、一人だと危ないし迎えに行くよ」と言っていた。


「それって大丈夫なの?」


「まぁミュリなら、騎士の10人や20人にも負けないしなぁ…」


ミュリの実力はモンスターとの戦闘力も高いが、一応あれでも近衛騎士団の筆頭を拝してる位の実力で並みの騎士なら束になっても敵わない強さはある。


「まぁ、遅くなるようなら迎えに行くよ、それじゃあテーブルを出しちゃうね」


空間収納アイテムボックスからテーブルを取り出し位置を合わせ、椅子を配置したら完了だ。


「はい、後これがお米」


麻袋に入った精米を置く、全部で60キロ程買ってきた。


「そういえばこの世界精米機があったんだよ」


「確かに無いと食べづらいものね」


「うん、魔法を使うタイプでスマートなんだけど、ビックリしたよ」


「異世界…何気に凄いわね…」


「そうだね…」


そうしてどこからともなく計量カップと土鍋を取り出した春華が慣れた手つきで準備をする。


「春華ちゃん…ホントに凄いわね…」


「嫁力高いわね…」


「まだ、15歳なのよね…」


「まぁ…春華は私と違って昔から料理とか好きだからね~」


冷蔵庫からジュースを取り出して飲みつつ答える冬華、いつの間に…


「冬華それ美味しい?」


「んーおいひいよー飲む?」


「じゃあ一口貰うわ」


市場で見つけたジュースを貰い飲む、うん柑橘系だが酸味が少なく結構甘めだったりする。


「んーこれ美味しいな」


「でしょ?私はこうゆうの見つけるの得意なんだ」


「流石だな冬華は」


「えへへー」


冬華の頭を撫でていると視線が集中していた


「ん?どうした皆?」


「いや…ナチュラルに飲んでるなーって」


「「あっ…」」


「気にしてなかった…」


「流石上凪さん…」


「冬華ずるい…」


「ゴクリ…ユウキの飲みかけ…」


何か一人やばいのいたけど…気にしないでおこう。


「冬華?」


横を見ると、飲みかけを今更意識したのか、真っ赤になってる冬華が居た。


「大丈夫か?」


「だだだっ、大丈夫!大丈夫…だいじょう…ぶ」


そうして飲み口をぽーっと見つめる冬華。


初心だな~と思いつつ冬華の頭を撫でていると更に冬華の顔が真っ赤になる。


◇◆◇◆◇◆◇◆

そんな事をわちゃわちゃしていると、入り口の扉が開いて雛菊さんとミュリが入って来た。


「みんな~♪またせたわね~♪」


「みんな、ただいま」


その声に次々答える。


雛菊さんの荷物を預かりサイドテーブルに置く、振り返ると雛菊さんは女の子の姿に戻っていた。


「そういえば、凄くいい匂いしてるけど…何かしら?」


「これはですね、私達の世界での料理で【カレー】って言うんです」


「うーん、とっても美味しそう!もう食べれるのかい?」


「そうですね、ご飯が出来れば完成です」


「あら、その料理はご飯を使うのね」


「そうなんですが…苦手ですか?」


「うーん、正直。ご飯って味が無いから、そのまま食べるのに不向きじゃない?それにわざわざカトラリーを整えるのも面倒だし」


「むむっ…」


「それは…」


「私達への挑戦ね…」


「私はナンで食べるのも好きですけどね」


「俺もご飯で食べるのが好きだけど、ナンで食べるのも好きだな…」


「わかるーナンも美味しいよね」


「意外と日本式のカレーにも合いますよね」


「すみません…流石に今日は作ってる時間が…」


「まだ時間はあるし、今度やりましょ」


「今日は一応丸パンも買ってきましたし、それも美味しいですよ」


「ともかく、ユフィを呼んで来て食べる準備をしようか…」


「そうですね、蒸らしも終わりましたのでいつでも食べれますよ!」


◇◆◇◆◇◆◇◆

それから研究室に籠っていたユフィをミュリと共に引っ張り出し、食事の席に着けた。


「何?コレ?」


スプーンにカレーを掬ったユフィが首をかしげる。


「カレーですよ、私達の国の料理です」


「俺達の国じゃ家庭毎に味が違うけど国民食みたいなものだね」


「ふむ…ユウキの国の料理…」


そして皆が見守る中一口食べたユフィが興奮したように腕を振る。


「美味しい!ユウキ!コレ!美味しい!」


その言葉にミュリと雛菊さんも恐る恐る一口食べる。


「「!?!?!?!?」」


「なんだこれ…辛いけど美味い…頭に響く美味しさだ…」


ミュリは初めての味に興奮して。


「美味しい!まさかスパイスだけでここまで美味しいのが出来るなんて!」


雛菊さんは香りからスパイスを使った料理と見抜いた様だ。


「そして…このご飯…昔食べた味と全く違う…」


「あぁ…ご飯がこんなに甘いなんて…砂糖でも入れたのか?」


「いえ、お水だけですね、甘いのはお米本来の味ですよ」


「凄いなお米…」


「お米があるなら炒飯とか、炊き込みご飯とかいけるしな…」


「ユウキ、何それ?」


ユフィが興味津々に聞いてくる。


「お米の美味しい食べ方の一つだね」


そう言うと途端に目を輝かせる。


「ハルカ…」


「はっはい!」


真剣な顔つきで春華に向き直る


「今度お願い、後おかわり」


「わかりました!ご飯の量は?」


「大盛で」


「ずるいぞユフィ!」


「私も!私も!」


そう言って我先に食べていく、異世界組


「さて…俺も食べるか」


気を取り直してスプーンで掬い一口食べる、あれ?この味。


耀の方を見るとニヤニヤしている、そして春華を見ると春華は恥ずかしそうにしてる。


「春華これって…」


昔から、良く慣れ親しんだ味だった。


「えへへ…実は優佳さんに教えてもらってたんです」


照れくさそうにはにかむ春華。


「いやーまさか春華ちゃんが覚えるとは思わなかったよ…」


「味を知ってる耀おねーさんにお墨付きを貰えたのも良かったです」


「これが上凪さんのお家のお味…」


「美味しいね」


「みんなが喜んでくれて嬉しいよ、ありがとう春華」


「はい!」


忙しそうにお代わりを運んでる春華に言うと、春華は嬉しそうな顔をした。


(しかしまさか、異世界で俺の家の味が楽しめるなんてなぁ…春華に感謝だね)


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