第10.5話 閑話 W.C

両手をガッチリと固定されてから、数時間が経った。


先生の固定を解除するために、色々なことを試した。力づくで引き離そうとしてみたり、魔力を限界まで注いでみたり、自分の固定を解除するようにイメージをしてみたり。


限界だ。両手のみが動かせない状態というのはかなり辛い。肩が変な風に凝る。もしこれが全身ならば、もう少し楽なのだろうか。いや、体の自由を奪われて、意識だけが残る状態は恐ろしいものだろう。


このように物思いに耽ると、少し気持ちが楽になる。何故なら、尿意の限界が近いからだ。


さあ、どうしよう。これも重要な試練だ。先生の口ぶりでは、固定魔法は継承されるという性質から、僕の異常さが際立つはずだ。一族以外の人間が、この魔法を持っていることに反感を覚えられ、狙われる可能性があるはずだ。その時への対抗策として、宿題を出してもらったんだ。


というように解釈しない限り、この理不尽に耐えられる気がしない。


正直頭に来る。もうやけくそだ。さらに手を固めてやる。そしてこのまま餓死すればいいんだ。ちくしょう。もういいよ。勝手にしろ。「固定」


ん…?何か変だ。手の感覚が違う。さっきまでは、固定”されていた”。しかし今は固定”している”ような、自分の支配下にあるような感覚だ。


まさかと思い、自分の固定を解除する。手が動く。腕が痺れている。


「よし…。よし…。やった。やったぞ!!」

あまりの嬉しさに漏れそうになる。


急いで川に向かう。


「ああ…。ごめんなさい…。聖魔力水さん…。」



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