第61話 都市伝説のメリーさん、秘密兵器を使う。
「あたしメリーさん。今あなたの肩にそっと立ち寄り官能的にほおをなでて不意のスキンシップでドキドキさせるの」コケッ「ゴボゴボゴボ」
「ハイヒールで不安定なとこ立つの難しいよねー」
メリーさんからの電話に出ると、メリーさんは僕の肩に着地しようとして、ハイヒールだったのでうまく立てずに転んで落ちて、風呂に沈んだ。
「あたしは急に手をつながれてドギマギしてるのに、ヌクトは平然としてるのは納得いかないの。
それはきっとヌクトが女性と触れ合うことくらいなんとも思ってないサルヤローだからなの」
「別にそんなことないんだけどなぁ」
湯船に二人、僕とメリーさん。
メリーさんは眼鏡の位置をスチャリと直して、無表情のまま意気揚々と言った。
「だからこれからガンガンヌクトに触れてやるの。
あたしはボディタッチに慣れることができて、うまくやればヌクトにドギマギをやり返すことができるの。
このアドバンテージだらけの最高に知的な作戦はあたしの知能で導き出したの。ほめるがいいの」
「メリーさんはかしこいなぁ。なでなで」
「ぴっ、なの」
メリーさんの頭をなでてあげると、メリーさんは無表情のまま緊張して固まった。
いきなりボディタッチに慣れてない感じが出てるけど大丈夫かな?
「今ヌクト、『いきなりボディタッチに慣れてない感じが出てるけど大丈夫かな』とか考えたの。失礼なの」
「まさにその通りだけどそれだけ分かりやすい態度をしちゃうメリーさんにも非はあると思う」
「つーんなの。なんとでも言うといいの。余裕ぶっていられるのも今のうちなの。
見てるの。ここからヌクトにどんどん大胆かつムシワク的にタッチしてドギマギさせてやるの」
「
「そ、その通りなの。今のはわざと間違ったことを言って指摘させていい気にさせる高度な接待テクニックなの」
「うんうん、メリーさんはかしこいねえ」
「ぴっ、なの」
メリーさんをなでてあげたら、また緊張して固まった。
こんな調子でいつになったら僕をドギマギさせてくれるんだろうね。
そんなことを考えていたら、メリーさんは無表情のほっぺをふくらませた。
「ぷくーなの。ずっとヌクトにいいようにされててくやしいの。
こうなったら秘密兵器なの。ヌクトを一発でドッキドキにさせる必殺技を使うの」
「必殺技かぁ」
なんだろう。何してくれるんだろう。楽しみだな。
なんて思ってると、メリーさんはゆっくりと湯船のヘリに上がって、そこに腰かけた。
そうして足を組んで、太ももの上に片手を置いて、もう片方の手はくちびるに添えて、顔をちょっとかたむけて流し目をこちらに向けて、声を発した。
「う、うっふーん……なの」
「わーお」
なるほど。これが秘密兵器。
現在、メリーさんの服装はタイトスカートのビジネススーツ。
その服装で足を組むだけならこないだも写真で見たけど、今回は手の置き方で太ももにさらに視線を集めたり、顔のアングルもこだわってみたり、より
うーんこれは確かに必殺技と言うだけあるね。
ただ、まあ。
「メリーさん、表情は変わらないけど顔が真っ赤っかで、ものすごーく無理してるのが伝わるからドキドキより先にほっこりしちゃうね」
「う、うるさいの」
メリーさん、ゆでだこみたいになりながらガッチガチに固まってる。
セクシーなポーズを取ったはいいけど、緊張しすぎて動けないんだね。かわいいね。
こんな様子を見ると、ちょっとからかいたくなっちゃうね。
「それでメリーさん、今日の目的はスキンシップに慣れることだったよね。
つまり、これからどんどん触っていけばいいのかな」
「え、あの、えっと、なの」
「どこを触ればいいんだろう? 手つなぐ?」
「ちょ、ちょっと待つの、今触られるのはその、心の準備が、なの」
「それとも慣れって考えたら、もっと大胆に触った方がいいのかな」
「ちょ、待つの待つの、本当に待つの」
「それこそそんなに強調してる、その太ももを触ったりとか」
「待っ、それはっ、調子に乗るななの」
「目にシャンプーがーッ!?」
目の泡を洗い流している間に、メリーさんはいなくなっていた。
僕一人だけが残る、静かなお風呂場。
「結局全然スキンシップしなかったなー。
手をつないだりくらいは僕もしたかったけど、まあ眼福だったしいっか」
メリーさんの無表情照れ顔は、何度見てもいいものだね。
「その……そんなにヌクトが喜んでくれるなら、その、うっふーんなポーズの自撮りとか、送ってやらなくもないかもしれないような気がしないでもないのでもあの」
「あーいや、セクシーポーズじゃなくて照れてるのが見たいって話だからそんな無理しないでいいよ目にシャンプーがーッ!?」
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