第57話 都市伝説のメリーさん、パンツ談義をされる。
「あたしメリーさん。今あなたのうしゴボゴボゴボ」
「メリメリそのビジネススーツちょークールでセクシーじゃんねー! 眼鏡も大人コーデも似合うじゃんねー!」
「よそおいが変わると、印象も変わるものでございますね。普段よりも色気が出てございます」
「はぅあう、メリーちゃん大人っぽくてタイトスカートとハイヒールが色っぽくて……はぅぅ、心がテケテケしちゃうよぅ〜」
「せまい」
メリーさんからの電話に出ると、メリーさんだけでなくコックリさんもあかなめさんもテケテケさんもみんな来て、みんなして湯船に入るもんだからものすごくせまくなって、メリーさんは押しつぶされて、風呂に沈んだ。
「ふふふーんイメチェンメリメリとお風呂楽しいじゃんねー」
「うっとうしいの」
話し合いの結果、湯船に僕とメリーさんとコックリさん、洗い場にあかなめさんとテケテケさんというスペース分けとなった現状。
コックリさんはビジネススーツ姿のメリーさんを、文字通り人形のようにかわいがっている。
「このスカートからのぞく生足が色っぽいじゃんねーかわいいじゃんねー」
「人形の生足ってなんか奇妙な感じだね」
「ちょコックリ、待つのやめるのちょっ」
コックリさん、からかうみたいにメリーさんのタイトスカートをつまんで上げてのぞき込んで……目を見張って、絶叫した。
「メリメリ、パンツはいてないじゃんね!!」
「大声で言うんじゃないの」
「目にシャンプーじゃんねー!?」
シャンプー攻撃を食らったコックリさんは悶絶して、湯船に半分沈んでのびた。
洗い場のテケテケさんが騒ぎ出した。
「メリーちゃんノーパンってどういうこと!? そのタイトなスカートにねじ込んでるのはメリーちゃんの生身の下半身なのぉ!?
あわわわなんてことなのスカートの中身はむき出しの臨戦態勢ってことぉ!? 臨戦ってなんの臨戦!? 態勢ってなんの態勢ぃ!?
はわわわ妄想力がテケテケしちゃうよぅ〜!」
「黙ってるのテケテケ」
「目にシャンプーだよぅ〜!?」
テケテケさんはシャンプーを食らって悶絶して、洗い場の床に倒れ伏した。
メリーさんはこっちに目を向けて、無表情を赤らめてもじもじした。
「その、変な理由じゃないの。ただ持ってるパンツがかぼちゃパンツと制服のときのかわいい感じのパンツしかないから、スーツに合わなかっただけなの」
「あー。ごめんねメリーさん、パンツはあるから大丈夫と思ってたけど、ちゃんと毎回考えないとダメだね」
「ヌクトにあたしのパンツを毎回考えられるのは、それはそれでどうかと思うの」
「理不尽だけどごもっとも」
それを聞いていて、あかなめさんがふむと言って、あごに指を当てて考える仕草をした。
「では、ここにいる全員でその服装に合う下着を考えるのはいかがでございましょう」
「なんでみんなにあたしのパンツについて考えられなくちゃいけないの」
そこでコックリさんがざばりと起き上がって、元気に手を上げた。
「はいはーい! あーしはやっぱり、大人っぽく黒のレースのパンツがいいと思うじゃんね!
タイトスカートからちらちらのぞく太もものその奥、その色っぽさの期待感にふさわしいセクシーでアダルティーでそれでいてクールで凛としたイメージのパンツはストレートにグッとくるじゃんね!」
「わたくしめはシルエットにも気を使うべきではないかと考えるのでございます。細身のスカートは下着の輪郭が浮き出てしまうおそれがありますゆえ、それを防ぐ組み合わせがよいかと愚考するものでございます。
その観点で言えば、肌色に近いベージュかつ縫製がシームレスなものを選ぶのが手堅い選択でございましょう」
「Tバック! わたしはTバックにすると透け対策と攻撃力の両立ができていいと思うよぅ!
色は赤かな? 赤がいいかなぁ? メリーちゃんが赤のTバック!? はぅあぅ刺激が強すぎてっ、あっあっ想像したら鼻血がテケテケするよぅ〜!」
「全員黙るの」
「「「目にシャンプー「じゃんねー!?」「でございますねぇ!?」「だよぅ〜!?」
三名全員がシャンプー攻撃を食らって、死屍累々になった。
メリーさんの無表情がこちらに向いて、しばらく見つめ合う形になった。
何も言ってこなかったので、こちらから尋ねてみた。
「……僕もパンツのアイデア、出した方がいい?」
「変態セクハラサルヤローなの」
「目にシャンプーがーッ!?」
目の泡を洗い流している間に、メリーさんはいなくなっていた。他のみんなも。
「……うーん、パンツは用意した方がいいのかな?
まあ、そのうち考えればいいか」
のんびりと湯船に浸かる。
パンツはともかく、メリーさんに似合う服装を考えるの、楽しいんだよね。
『別に要求するわけでもないし全然考えてほしいとも思わないけど』
『もしヌクトにはいてほしいパンツがあってヌクトが用意してくれるっていうのなら、はいてあげないこともないの』
「これ要求されてる?
なんか僕の好みが試されてるみたいで、変なプレッシャーだなー」
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