第49話 都市伝説のメリーさん、百合の間にはさまる。

「こんこんこんばんコックリさーん! コックリさん系配信者の重縁指じゅうえんざしコックリ、今日も遊びに来たじゃんねー!」


「はぅはぅ、今日もテケテケ遊びに来ちゃってごめんなさいぃ! でもわたし、みんなで遊ぶのやっぱり楽しいからぁ……!」


「ゴボゴボゴボ」


「クアトロぼいん圧力でメリーさん沈没」


 メリーさんからの電話に出ると、コックリさんとテケテケさんも召喚されて、二人がわちゃわちゃやってる間にメリーさんがはさまれて、風呂に沈んだ。




「二人とも邪魔な駄肉なの。あてつけみたいに当ててくるの」


「ひゃうんっメリーちゃんそんなに蹴っ飛ばさないでよぅ恥ずかしいよぅ……!」ぼいんぼいん


「にっしっしー、あーしの体は配信用アバターだから、大きさだって自分の理想通りにカスタマイズしてるじゃんねー」ぼいんぼいん


「僕これ非常に居心地が悪いんだけど」


 現在、僕んちの湯船。全員で浸かる。

 ただでさえ男一人に女三人っていう状況なのに、メリーさんがコックリさんとテケテケさんの胸を蹴って揺らしてて、なんとも目のやり場に困る。

 二人ともサイズがなかなかだし、コックリさんは夏服セーラーで布地が薄いし、テケテケさんにいたってはブラウス一枚だし。

 ブラウスが濡れて透けて見えるものには、意識しない。絶対意識しないようにしよう。


「ヌクトはやっぱり大きいのがいいの。万年発情期のサルヤローなの」


「この状況で発情するなって方が厳しくない? いや発情まではしないけどさ」


「やーんぬっくんケダモノじゃんねー。テケりん助けてじゃんねー」


「ひゃうんっコックリちゃん!? そんなっぎゅっとされたらあのあのあのっ」


「ゴボゴボゴボ」


 コックリさんがふざけてテケテケさんに抱きついて、テケテケさんは赤面してあわてふためいた。

 その間にはさまったメリーさんは風呂に沈んだ。


「むふふーテケりん体がやわらかくて抱き心地いいじゃんねー。でも腕は体を支えるからそれなりにしっかりしてるじゃんねー」


「ひゃわわわ、コックリちゃんそんなに触られたら恥ずかしくてドキドキしちゃうよぅ……! あのあのっ、わたし前からコックリちゃんの配信見ててぇ、ずっとファンでぇ……!」


「ゴボゴボゴボ」


 コックリさんとテケテケさんはスキンシップを続けて、何やら甘ったるい雰囲気になってる。

 その間にはさまってるメリーさんは風呂に沈みっぱなし。


「あーしのファンとかうれしいじゃんねー! じゃーもっとサービスしちゃうじゃんね!」


「あのあの待って待って、あ、そこはぁっ……!」


「ゴボゴボゴボ」


「テケりん気持ちよさそーじゃんねー。そしたらこんなんはどうじゃんねー?」


「あっあっ、十円玉をそんな使い方、ひぅんっ……!」


「あたしをさっさと引き上げろなの」


「「目にシャンプー「じゃんねー!?」「だよぅ〜!?」


 怒りの無表情で沈没から浮上したメリーさんが、コックリさんとテケテケさんにシャンプー攻撃をして撃沈させた。

 うつぶせで沈黙する二人を見下ろして、メリーさんは無表情のままふんすと鼻を鳴らして、僕の方に向き直った。


「ヌクトもさっさと助けろなの。肩もみ通り越して十円玉ツボ押しマッサージまで始める前になんとでもできたの」


「いやーごめんね、なんか間に入るのがはばかられるっていうか」


「どうせマッサージされて身もだえるテケテケの声とかぼいんぼいんとかに気を取られてたの」


「ソンナコトナイヨー」


「ド変態のサルヤローなの」


「目にシャンプーがーッ!?」


 目の泡を洗い流している間に、メリーさんはいなくなっていた。コックリさんとテケテケさんも。

 後に残ったのは、コックリさんが忘れていった十円玉だけ。


「なんかツボに貼ると肩こりが取れるだとか、そんな迷信があるよねー」


 せっかくだし、肩に貼っておこうか。

 ちょうど肩もこってるし、お風呂でゆっくり体を伸ばしてほぐしてみよう。






『ぬっくんに十円とられたじゃんねー! 配信者として得た貴重な投げ銭じゃんねー!』


「次来たとき返すから……コックリさん、十円で泣くほど稼げてない配信者じゃなくない?」

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