第40話 都市伝説のメリーさん、ゲームコーナーで遊ぶ。

「あたしメリーさん。今ゲームコーナーのUFOキャッチャーにもがもがもが」


「景品に紛れ込んでる」


「必殺! コックリさん式精密操作じゃんねー!」


「お見事でございます。紙の上で正確に文字を指し示す十円玉のごとくクレーンが動いてメリー嬢をナイスキャッチでございます」


 テケテケさんをほっぽり出してゲームコーナーに先んじたメリーさんは、UFOキャッチャーの中の景品が入ってるとこにワープして、景品に沈んだ。

 そしてコックリさんにナイスキャッチされて、景品排出口からぺいっと排出された。

 移動の間に着替えたのか、メリーさんはフリル水着風私服からブレザー姿になっていた。




「ゲームコーナー! あーしあこがれじゃんねー! JKルックでこーゆートコ来るの楽しみだったじゃんねー!

 メリメリも学生コーデで気分合わせてアゲてるじゃんねー!」


「別にコックリと合わせたわけじゃないの。ただ場所に合った服装の方がしっくり来ると思ったの」


「場所に合わせる意欲はあるのに、お風呂で服を脱ぐ意欲がないのなんなの?」


 ちなみに僕は旅館貸し出しの浴衣を着ている。服装変わると気分が変わるのは確かだよね。


「あーっあれ! メリメリあれ! 写真撮ってシールになるやつあるじゃんね! あれ一緒に撮るじゃんね!」


「なんであたしがコックリとツーショットで撮らなきゃいけないの」


「じゃーぬっくんでいいじゃんね! 一緒に写ってハートマーク作るじゃんね!」


「ふざけんじゃないのコックリ、なんでヌクトとあなたがツーショットなのふざけんじゃないの。

 別にあたしがヌクトとツーショット撮りたいって言ってるわけじゃないのただ組み合わせがおかしいって言ってるのでも別にあたしとヌクトが自然な組み合わせって言ってるんじゃないのでも」


「はーいそんなわけでメリメリとぬっくん二名様ごあんなーいじゃんね!」


「むぎゅうなの」


「口をはさむ間もない強引な流れで写真を撮るやつの中に詰め込まれた」


 ともかく機械は作動してるし、カウントダウンにせかされて機械の指示に従っていろいろ設定して、パシャリ。


「ぎゃはははは! メリメリもぬっくんも目ぇちょー大きくて変な顔じゃんねー! 盛り盛りじゃんねー!」


「僕じゃない人が写ってる」


「機械の補正がすさまじいの」


 出てきたシールには、目の大きさが三倍くらいでお肌真っ白になった僕とメリーさんらしき人物像。この顔普通に怖くない?


「でも記念なの。せっかくだしスマホに貼っておくの」


「僕も貼っとくけど……お風呂に持ち込むからすぐにはがれちゃわないかなあ?」


「心配無用ですじゃ。当旅館の各設備は軒並み宇宙仕様ですじゃ。そのシールも耐水耐真空耐高重力耐紫外線耐ウラシマ効果などなど万全ですじゃ」


「宇宙の彼方の隣人へと僕らの顔写真を届けようとでもしていらっしゃる?」


 ひょっこり現れたムラサキババアさんにツッコミ。ゲームコーナーで紫の髪に銀のコスチュームって目に痛いな。

 まあともかく、ゲームコーナーに来たんだしゲームを楽しもうかな。


「ヌクト様。わたくしめはアーケードゲームを楽しんでみたく存じます。

 レースゲームにシューティングゲーム、パズルゲームと、多種多様なゲーム筐体きょうたいがございますよ」


「ホントにいろいろある……待ってハイスコアが全部同じ人の名前なんだけど」


「ヌクト様、この『ツナカユリコ』なる人物を超えることを目標に遊んでみるのはいかがでございましょう」


「二位とダブルスコア以上の得点差があるんだけど。無理だよこんなの」


「あーしがやってみるじゃんね! コックリさん式精密動作で、ゲームの中から掌握してハイスコアを叩き出すじゃんねー! ゴー! 十円玉!」


 コイン投入口に十円玉をイン。動かない。


「コックリ、このゲームは一プレイ百円なの」


「時代はインフレじゃんね! ゲームの値段がコックリ的経済事情ではもう遊ぶことすらできないじゃんね!」


「アーケードゲームが一プレイ十円だった時代はないと思うよ?」


 床にひれ伏して打ちひしがれるコックリさんを尻目に、せっかくだからと僕も筐体の前に座って、百円玉を入れてみた。


『ドキッ! 脱ぎ脱ぎプリティーウルトラバイオレンス麻雀ー!♡』


「あっこれ脱衣麻雀ゲームだ」


「……ヌクト」


 ぼけっと筐体のイスに座りっぱなしでいると、横からメリーさんが真っ黒な無表情を向けてきた。


「やっぱりヌクトはエッチなのが好きなの変態の最低最悪のサルヤローなの」


「違うんだメリーさんゲームを確認せずに始めたらたまたま脱衣麻雀だっただけで僕にこれをやろうという意志はこれっぽっちもなかったんだ」


「ヌクト、麻雀やれるの」


「やれるけど」


「麻雀やれる男はすべからくスケベなのギルティなの」


「それは偏見はなはだしいと思うなー目にシャンプーがーッ!?」


 目の泡を洗い流して……待って風呂場じゃないからお湯がない助けて。


「ベベロベロベロ」


「この洗い流し方いやだなぁ〜」


 あかなめさんになめ取られて目の泡がなくなる間に、メリーさんはいなくなっていた。


「メリー嬢は卓球場に向かいましてございます。我々もそちらに行ってみませんか」


「卓球かぁ〜確かに温泉旅館にあるよね。やってみようか」


 結局、ゲームはほとんどしてないけど、まあいいや。

 次は卓球、楽しんでみよう。






「UFOキャッチャーでたくさんぬいぐるみ取ったじゃんねー寝るとき並べるじゃんねー!」


「この短時間にサッカーチームができそうなくらいぬいぐるみにまみれてる」

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