第20話 都市伝説のメリーさん、シャンプーされる。
「こんこんこんばんコックリさーん! コックリさん系配信者のってちょちょちょメリメリまた変なとこ入ってきてるじゃんね!?
ちょ、きゃはははくすぐったいじゃんね!?」
「あたしメリーさん。今コックリのセーラー服の中にゴボゴボゴボ」
メリーさんからの電話に出ると、背後にコックリさんが出現して、そのセーラー服の胸元が大きくふくらんでいた。
コックリさんが巨乳になった……のではなく、メリーさんがその中に入っていて、コックリさんは湯船に浸かっているので、必然メリーさんは風呂に沈んだ。
ところでコックリさんの胸は、メリーさんが入ってなくてもそこそこある……ごほんごほん。
ごめんなさいメリーさんにらまないで。お湯の中で逆さまになってセーラー服のすそからにょきりと顔を出して無表情のままにらんでくるの普通に怖いから。
「ワープの瞬間はずっと見せないようにしてきたのに、こないだはつい見せちゃったの……
恥ずかしくてヌクトと顔を合わせるのイヤだったの。穴があったら入りたい気分なの」
「だからってあーしのセーラー服に入らないでほしいじゃんね?」
僕とメリーさんとコックリさん、三人並んで湯船に浸かる。
「そんなに恥ずかしいと思ってても遊びに来てくれるあたり、メリーさんは律儀だね」
「メリメリはぬっくん大好きだから、恥ずかしがろーが絶対に来るじゃんね!
目にシャンプーじゃんねー!?」
コックリさん、またメリーさんをあおって攻撃食らってる。仲がいいね。
けどまた湯船でシャンプー使うから、泡風呂になりかけてるよ。
「掃除がめんどくさいんだけどなぁ〜」
そうつぶやくと、コックリさんがくわっとこっちにふくれっ
「めんどくさいとか言ってるから赤カビが残るんじゃんね! こないだ床に転がされて赤カビ観察させられたのちょっと根に持ってるじゃんね!」
「まことに申し訳ない……」
赤カビだけじゃなく、前に排水口のお見苦しいものを見せた前科もあるし。
コックリさんはぷんすかほっぺをふくらませている。
「きちんと掃除しないと不潔じゃんね! 汚いだけじゃなくて、ぬっくんの健康的にも心配じゃんね!
あんまり掃除をサボるようだったら、今度『あかにゃん』呼んでくるじゃんね!」
「ちょっと待つのコックリ。『あかなめ』は都市伝説じゃないの。ジャンル違いなの、仲良くやれないの」
「メリメリは細かいこと気にするじゃんねー」
「あかなめって、あの妖怪のあかなめ?」
自分の知識を掘り返す。
確か、お風呂場に現れて、長い舌をべろべろ出してたまったあかをなめ取ると言われてる妖怪だったはず。
コックリさんはうんうんとうなずいた。
「あーしは別に妖怪でも都市伝説でも関係ないと思うじゃんねー。
そもそも妖怪だって江戸時代発祥のももっと昔からいるのも区別してる人ほぼほぼいないし、あーしら都市伝説も何百年か経ったらきっと妖怪の仲間みたいに言われるじゃんね!」
「あー、確かにね」
「ぷんぷんなの。妖怪なんて古臭くてカビの生えたものと一緒にされたくないの」
「そう言うメリーさんは、僕が服をあげるまでカビの生えてそうな汚れた服を着てたわけだけど」
「それじゃんね!」
コックリさんがびしりと指さした。
「ぬっくんだけじゃなくて、メリメリももっと清潔にするじゃんね! あーしいまだにメリメリがシャンプーを攻撃以外に使ってるとこ見たことないじゃんね!」
「あー、髪の毛がくすんでるのずっと気になってたんだよね」
「え、いや、あたしはいいの、別にきれいにしたところでかわいくもなんともならないし、それにあたし人形だから、人間みたいにシャンプーはできないの」
「大丈夫、やり方調べて人形の髪を洗うのにすすめられてたの買っといたよ。ベビーシャンプー」
「ヌクトなんでそんなところで用意がいいの? あ、ちょっと待つの、コックリ待って、あの、やーめーるーのー」
コックリさんがメリーさんをつかまえて、僕がわしゃわしゃとシャンプーした。
たっぷり泡立てて丁寧に洗う。ついでに全身洗っちゃう。
「ちょ、待つのヌクト、髪だけじゃなくてそんな、待ってそんなとこ、いやーんなのー」
泡を流して、完成。
「やったじゃんねメリメリー! 全身ピッカピカで髪もツヤツヤになったじゃんねー!
ちょー美人でかわいくなったじゃんねー!」
「うう……隅々まで洗われちゃったの……お嫁に行けないの……」
「ぬっくんにもらってもらえばいいじゃんね」
「黙るのコックリ」
「目にシャンプーじゃんねー!?」
シャンプー攻撃を食らって、コックリさんは悶絶した。
でも本当、髪の毛にしっかりツヤが出たし、全身きれいになって見違えたな。
そう思ってメリーさんを見ていると、メリーさんは両手で自分の体を隠すようにして、ギギギとこちらに怒りの無表情を向けてきた。
「ヌクト……なんで髪の毛だけじゃなくて、全身いろいろ洗ってきたの……」
「違うんだメリーさん、別にやましい気持ちがあったわけじゃなくて、体もきれいに洗ってあげた方がメリーさんのかわいさがちゃんと引き立つと思って目にシャンプーがーッ!?」
目の泡を洗い流している間に、メリーさんはいなくなっていた。コックリさんも。
残るのはただ、いつものお風呂場だけ。
「うーん、メリーさんをさんざんきれいにしといて僕は何もやらないのもなんだし、風呂掃除するかぁ」
してないわけじゃないけど、まあ一人暮らしだし適当になるんだよね。
うーんでも今日はもう遅いし、やるならちゃんと時間取って念入りにやった方がいいし。
「……週末にやればいいや」
「手伝ってあげるから今すぐやれなの」
「ごめんなさいメリーさんやるから排水口はお願いだから開けないで!?」
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