第19話 一件落着……せず?
ミルキーピンクがキャメルブラウンとともに4年3組の教室に戻ると、ネイビーブルーがサンショウウオームとの攻防を繰り広げていた。
見るとネイビーブルーの脇には奏都くんが抱えられている。どうやら奪還には成功したらしい。しかしサンショウウオームはそれで怒り狂っているようで動きも速くなっているしパワーも増していた。
まずい。このままでは学校が破壊されてしまう。ただでさえ老朽化が目立つ古校舎。幻獣を倒せばもとに戻るとはいえ、戦いの途中で例えば床が抜けたりしたら確実に下に落ちる。
マジョンヌたちは平気でも生身のコモや夢莉、そして黙って事のなりゆきを見守ってくれている諸先生方も無事では済まないだろう。
時間がない。やるなら一撃で仕留めないと。
「ムカデさん、キャメルブラウンはどう戦うの?」
ミルキーピンクが訊ねるとムカデが答えた。
「キャメルブラウンは素手で戦えるんだカサ!」
「え、素手!?」
「試しにパンチしてみるカサ!」
キャメルブラウンは自分の手を不思議そうに眺める。その手はキャメル色のロング手袋をはめていた。ぐっ、と握って、力を込めてみる。少し熱を帯びて光ってくるような気がする。
いける。
キャメルブラウンは全身全霊のパワーを右手の拳に込めてサンショウウオームに向かって突撃した。
よくも奏都の『げんきエキス』を吸い取ろうとしてくれたわね!
それはあの子の生まれ持った『才能』なの!
その『才能』をこれから『努力』で磨こうとしてるとこなのっ! 毎日毎日、汗流してがんばってんのっ!
それをあんたなんかに!
サンショウウオなんかにっ!
奪われて
た ま る かーっ!
「うりゃあああああああああっ!」
大きな光の塊となったその拳が、サンショウウオームの硬い皮に勢いよくぶつかる……と、スッパアーン! とそのヌメる体が七色の光の粒となって辺りに眩しく弾け飛んだ。
「うわすご。キレイ……」
夢莉のつぶやきとともに光の粒は空気に溶けて消えていった。
「すごい……」
「強い!」
ミルキーピンクとネイビーブルーが興奮して言うとキャメルブラウンは照れくさそうに「案外気持ちいいもんですね」と小さく言った。
ほどなくして三人の変身が解けた。この葉は「はー」と胸に手を当てて安堵している。「変身、そんなに悪くなかったでしょ?」と涼子に言われて「まさか。もう二度とごめんですよ」と顔をしかめた。
「だけど校長先生が黒幕じゃなかったとはね」
涼子はまだ腑に落ちない様子だ。
「うーん。学校関係者とは限らないんじゃないですか? ね、ムカデさん……あれ、ムカデさん?」
優花が訊ねるがムカデの姿がどこにもない。おかしい。いつもなら新たにマジョンヌとなったこの葉にご丁寧な自己紹介をするところなのに。
「あ、お母様方。危険な毒虫なら先ほど私が駆除しておきましたので。どうぞご安心ください」
「……へ」
そこにいたのは。
「嫌ですよね。こどもたちの安全のためにも、各クラスに殺虫剤を置いた方がいいかしら」
「
上下黒ずくめの出で立ちに、艶やかな黒のロングヘアと微笑する真っ赤なリップ。キラリと細メガネのレンズが光っていた。
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