第6話 ミストランド公爵

災害級魔物を無事に倒せた。固有スキルが無ければ倒せない相手だった。


「坊っちゃん! 今の何なんすか!」


「ミルド、落ち着け! まずは怪我人の手当てが先だ。怪我人にポーションを配ってくれ!」


「了解です!」


傷口を綺麗な水で洗い流しポーションで傷口を塞ぐ。重症者も一命は取り止めた。俺達に出来るのはここまでだ。


「ミルド、後は任せた。父上がもう少しで到着する。説明を頼むよ。俺はそろそろ限界だ・・・」


バタン!


その場で倒れるように眠りについた。



「ーー少し良いかね?」


「ハッ!」


「ーー助力を感謝する。そなたらのお陰で助かった。それでそなたらは何処の者なのだ?」


「ハッ! 私はグリミナル辺境伯第3騎士団隊長を勤めておりますミルド・バーンであります。其処で寝ておりますグリミナル辺境伯3男のライル・グリミナルの御披露目会に参加する為に王都へ向かっている途中でした! もう間もなく、我が主が到着致しますので詳しくは主が到着してからお願い致します!」


「ーー驚いた!? 御披露目会に参加すると言うことは・・・その子はまだ6歳なのかね? 6歳が災害級魔物を・・・」


「お父様、その方はわたくしと同い年なのですね?」


程無くして、コーエンを乗せた馬車が合流する。


「ミストランド公爵!? ミルド、説明を頼む!」


コーエンはミストランド公爵が居る事に驚き、ミルドへ説明を求めた。


「ミストランド公爵、御無事で何よりです。それにしても王都近郊に災害級魔物が現れるとは、何か気になるな。」


災害級魔物は滅多に人里には現れることはない。


「うちの子が失礼を・・・」


地面に倒れ寝ている息子を見て溜め息をこぼす。


「良い良い。助けられた立場だからな。それより、王都へ救援を頼んでおる。明日の朝には迎えが来るじゃろう。済まんが同行してくれぬか?」


「御意に。ミルド、ライルを連れて行け。起きたら話があるから連れてくるようにな。」


1時間後、俺は目が覚めると直ぐに準備された天幕へと連れていかれた。その天幕には知らない男性と多分だけどそのお嬢さん。俺の母に父上、ミルドとミゼットが待っていた。


「ライル、何故呼ばれたかわかるな?」


「はい。魔物の横取りですよね?」


「違うわ! 何故お前が災害級魔物と戦ったかについてだ! 何故ミルドに任せなかった? 私は言ったよな。危険な相手であれば私を待てと!」


そっちか


「ライルちゃん、貴方はまだ6歳なのよ。魔物を相手にするのは反対なのに。コーエンが許可を出してしまうから・・・」


「母上、心配させてしまってごめんなさい」


「凄く心配したんですからね」


「はい。父上、今回の件は全て私の責任です。ミルドは何も悪くありません!」


ミルドがずっと、罰の悪い顔をしているからな


「ーー説明しなさい」


「自身より遥かに強い魔物と安全な環境で戦う経験がしたかった。父上、私は12歳で冒険者になります。冒険者と成れば、自身より強い魔物と戦う機会が多くあると考えております。ミルドが居るこの環境でまさか幸運にもあの魔物が現れた。」


「それでライルが戦ったと・・・」


「はい・・・」


「そうか。それでどうだった。」


父上が嬉しそうに笑って問いかけてきた。


「全然駄目駄目でした。反省点をあげれば切りがないです。でも、良い経験が出来ました! これからより一層精進致します!」


「それとライル、こちらの御方がミストランド公爵様だ。ライルに御礼をとのことだ」


「此度の助力感謝する。そなたのお陰で我が娘も命が助かった。本当に感謝する。それで謝礼を渡したいのだが何か欲しいものでもあるか?」


「それでは討伐した魔物を頂きたく思います!」


あの魔物の素材は色々と使えそうだったからな。


「何を言っておる? もともと魔物は討伐した者の所有になる。それでは謝礼にならぬではないか?」


そう言うものなの? なら


「それならば〈王立図書館の許可書〉が欲しいです!」


王立図書館には重要な書物が多くある。一般の書物は金を払えば読める。それ以外は〈王立図書館の許可書〉が必要なのだ。


「そんなもので良いのか? それでは謝礼としては少な過ぎる」


えっ? 少ないの??


「え~と、魔力を流しても問題無い剣が欲しいです。」


「つくづく子供らしからぬ物じゃな。宜しい! 見あった物を準備させよう」


「ありがとうございます!」


やったー!!


「それでライル、ミルドから報告を受けたが何をしたら災害級魔物を倒す結果になるのだ?」


「あの時の坊の動きは異常でした。今まで実力を隠していたので?」


「オリジナル魔法と身体強化のかけ合わせで何とかです。そのせいで身体はボロボロですが。」


「オリジナル魔法まで開発していたのですか! 魔法陣は見せられますか?」


「母上にならば・・・」


研究ノートを母上の前に展開する。


「母上、それが私のスキル《研究》の能力で研究ノートです。」


「ふむふむ・・・予想以上だわ。この年で複数の属性を融合した魔法を開発しているなんて!? もはや宮廷魔術師を越えている・・・」


「その魔法はまだ欠陥品なので、改良中なのです。完成はまだ先です。」


「馬車の中で何かやっているとは思っていたけど、魔法の改良をしていたのね。便利なスキルを持っているのね。」


「はい! 重宝しています!」


母上と魔法談議に熱が入ってしまった。


「こほん! すいません、ミストランド公爵様。リリィもライルもそれくらいにしておきなさい。我らは明日、王都からの救援に同行する形で宜しいですか?」


「すまぬがそうしてもらえると助かる。負傷者が多くおるからな。万が一魔物が襲ってくることも考えられる。」


「こちらは問題ありません。明日から宜しくお願い致します。」


そういうことで、俺達はミストランド公爵様と王都へ向かうことになった。

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