第7話 魔本


タイガーウルフとブラックタイガーウルフの解体を始める。タイガーウルフの毛皮は風の魔力が宿っている。鞣し加工処理を済ませる。爪と牙も錬金の素材になるみたいだから回収しておく。必要の無い部分はゴブリンと同じストレージに入れておく。後で肥料にリサイクルする。


ブラックタイガーウルフは特殊な風の魔力を宿している。素材は売らずに取っておく。


「お兄様、わたくしもお兄様のように強くなれるでしょうか?」


可愛い妹から問いに答える


「頑張り次第ではお兄ちゃんよりリアは強くなれるよ。だから頑張らないとね」


「はい! お兄様、わたくしに魔法を教えてくだしゃい!」


「良いよ。リアが強くなれるように教えるよ」


可愛い妹からのお願いを聞かないわけがない。ストレージから魔法の教本-入門編を取り出し手渡す。


「リア、先ずはこの本を読むことから始めようか。」


「お兄様・・・お恥ずかしいお話なのですゅが、まだ読み書きを覚えておらず・・・」


「大丈夫だよ。一緒に読み書きも覚えられるからね。」


「どういうことでしょうか?」


「見た方が早いな。リア、早速本を開いてごらん。」


「わわわああ! 絵が飛び出して来ました! あっ! 動きます・・・えっ! お話しも出来るのですか!?」


「面白いだろ? 魔石の補充は必要だけど、魔法について学べる本を造ったんだよ。下の方に喋っている内容も表示されるようになってるから文字も覚えられて一石二鳥ってね?」


「ありがとうございましゅ! お兄様!」


嬉しそうに走ってテントに入って行くリアを眺めながら3人に指示を出す。


「ミレイルは《目利き》で素材の査定を始めてくれ。クリスは引き続きミレイルの護衛、カレンは警戒を強めるように。」


『はい!』


無理した影響で軋む身体を我慢しながら、日課の剣を振る。


「ライル、ちょっと良いかしら?」


剣を振っていると母上がやって来た。


「何でしょう? 母上?」


「リアが読んでいる本はライルが造ったものかしら?」


「えぇ・・・そうですけど、もしかして内容に間違いがありましたか!? 書斎にあった魔法の本の内容を自身の観点でまとめたものでして・・・」


「内容は良くまとめられてましたよ。ライル、本はあれだけですか?」


「いえ。魔法に関しては、〈入門編〉〈初級編〉〈身体強化編〉の3冊ほど造りました。後は姉上の勉強用に〈入学試験対策〉で5冊程造り姉上に渡してありますね。」


「だからあの娘最近・・・それであれはどういう原理なのですか?」


原理か・・・


「母上、私の職業はプロフェッサーです。プロフェッサーは《研究》《書籍化》とういう能力が与えられています。あの魔本は《書籍化》という能力で造っておりますので、原理と言われると困ってしまいます。」


「スキルなのね。あの本は幾つ造れるの?」


一度書籍化しているものなら、魔力があれば幾らでも造れます。」


「それは良かったわ。リアが持っている本を見て、フローラ様がどうしても買いたいと仰せなのよ。」


「えっと、まだ試作段階ですよ? 家族ならまだしも公爵家に買って頂くなら〈魔法大全〉を読んで内容を精査してからにしてもらいたいです。間違った内容を売ったとなると申訳けがありません。」


「それはそうよね・・・」


公爵家に嘘を教えたとあっては首が飛ぶかもしれない。


「娘が我がままを言って済まぬな。だが、リア殿がああも楽しそうに勉強しているものでな。試作段階の物でも良いので譲ってくれぬか? もし、誤りがあった場合は罪を問わないと契約書にもちゃんと残そう。」


「それならば、グリミナル辺境伯とでは無く、私のグリミナル商会との間で契約を結んで頂け無いでしょうか?」


「やはり御主は賢いのう。それでこちらは問題無いぞ。直ぐに契約書を持ってこさせよう。」


これで何かあっても父上には迷惑をかけなくて済む。


〈学院入学試験対策1~5巻〉〈魔法の教本-入門編1巻〉〈魔法の教本-初級編1巻〉〈魔法の教本-身体強化1巻〉 合計 8冊


「公爵様!? 流石に貰い過ぎです。」


「構わん。そのかわり新作を造ったらまた売ってくれ。」


「ーー畏まりました。グリミナル商会経由で売らせて頂きますね。ミレイル、しっかり帳簿をつけて金庫に入れて管理しておいてくれ。」


聖金貨1枚。日本円で1億円だった。


この世界の貨幣は


銭貨1枚   10円

銅貨1枚  100円

銀貨1枚    千円

小金貨1枚  一万円

金貨1枚   十万円

白金貨1枚  百万円

黒金貨1枚 1千万円

聖金貨1枚  1億円

大聖金貨1枚 百億円


こんな感じ。


話が纏まったので、訓練の続きを行った。


グウゥ~


もうこんな時間か。


「父上、私は商会の者達と夕飯を取りますので夕飯はお構い無く。流石にこの者達を同席させる訳には行きませんからね。」


「その方が良いだろうな。食材は大丈夫か?」


「別に持って来ておりますので問題ありません。流石に大事な民の税を商会消費するわけには行きませんからね。こちらの分はちゃんとグリミナル商会から出しますよ。」


グリミナル商会の馬車の近くで夕飯の準備を行う。


魔導コンロをセットして、大きい鍋に一口サイズに切った野菜を大量に入れて湯がく。丁度良いのでジャガイモも入れる。最後にホーンラビットの肉を投入して塩とコンソメで味を整える。


ダンダンダンダンダンダン・・・


ペタン! ペタン! ペタン!


ジュゥ~


周囲に美味しそうな匂いが立ち込める。


ゴクッ


「このパンをこういう風に半分にしてくれ」


「あの、このパン・・・凄く柔らかいのですが!?」


「イースト菌を入れてるから柔らかくなるんだよ。それより、多めに作っておきたいから急ぐよ。」


パンは王都に向かう前に自身で作ったんだよ。だって、この国のパンってあまり美味しく無いんだもん。


「終わりました!」


「カレンはパンにこの野菜をしいて、クリスは野菜の上に焼いた肉を乗せてくれ。仕上げは俺がするから終わったものからミレイルがこの紙に包んでくれ。」


流れ作業で次々にハンバーガーを大量に作っていった。


「これで最後だな。半分はミレイルのアイテムボックスに入れておいてくれ。」


4つを残して仕舞う。


「スープは自由によそって夕飯にしよう。一つで足りなければ、そのつどおかわりして良いからね。それじゃ、頂きます!」


美味い。チーズにテリヤキソースにマヨネーズ・・・うん、最強だな。ポトフの方も美味しく出来た。コンソメだけでもここまで味が変わるものなのだな。昨日までは街での食事だったからな。


「ライル様、凄く美味しいです!」


「主君は料理の才能もおありなのですね。凄く美味しいです。」


「うん。天才!」


調味料のおかげだけどね。


ジィ~~


「リア? フローラ様? そこで何をされているのですか?」


「またお兄様は隠れて美味しい物を食べています。ズルイです!」


「そうですわね。近くまで美味しそうな匂いがしていました。是非ともライル様の手料理を食してみたいものです。何せリアちゃんがライル様の料理をあんなに絶賛するのですもの。」


「フローラ様、私に様は必要ありませんよ。ライルとお呼び下さい。リアもそんなにむくれていると美人が台無しだぞ。」


ぷくりと頬を膨らませているリアに注意して、ストレージから先程作ったハンバーガーを取り出して二人に渡す。ついでに器にポトフも添えておいた。

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