第2話 選定の儀


ーー5歳になった。変わったことといったら、2年前に俺に可愛い妹が出来たこと。俺の日課に妹を愛でるが追加された。


5歳になり、俺は身体を鍛える事にした。身体に無理がかからない程度に筋トレとランニングを始めた。


そんな日々を送っていた今日、珍しく父に呼び出された。


「父上、お呼びとあり伺いました。」


「入れ」


父の執務室に入ると、父は机の書類の山に目を通していた。大変そうだ。


「今週末に教会で選定の儀が行われる。ライルにも選定の儀を受けてもらう。それでライルは将来どう生きたいとか決めているのか?」


「将来ですか?」


「あぁ、辺境伯領は兄のコーラルが継ぐ。グレイブは王都の騎士学校を卒業後は王都の騎士団に入る事が決定している。これはグレイブの希望だな。うちは高位の辺境伯ではあるが裕福なわけでは無いからな、ライルには成人後は家を出てもらう必要がある。」


貴族の三男とは、何処もこんな感じである。成人後には家を出て自分で稼ぐ必要がある。それはわかっていた事で俺も望んでいた事でもある。


「わかっております。私は12歳となりましたら、冒険者の活動を始めます。上手く行けば、成人前には家を出て行きたいと思っております。」


うちはそんなに裕福ではない。学校に行かないのかと言われたが、俺より可愛い妹にお金をかけて欲しい。それに後7年もあれば何とかなる気がする。


「ふむ。冒険者か・・・わかった。選定の儀が終わったら領軍の訓練に好きに参加しなさい。それと、屋敷から自由に出ることも許可しよう。」


「ありがとうございます。」


翌日から生活が一変した。午前中は訓練場で領兵と一緒に身体を鍛える。5歳時の俺がついていけるわけも無く、只々領兵の後をついてまわった。午後は日課の魔力制御と読書にせいを出した。


ーー選定の儀。


俺は選定の儀を受ける為に教会で順番待ちしていた。


「この者に神の祝福を! そなたの職業は《剣聖》である!」


『オオォォ!!』


俺じゃ無いよ。俺の前に並んでいた少女の職業が剣聖だったようだ。周りは歓喜と嫉妬が混じったような嫌な感じで充満した。あ~あ、可哀想だ。騎士に連れられ別室へと行ってしまった。


さぁ、次は俺だけどどんな感じになるかな?


「この者に神の祝福を! そなたの職業は《プロフェッサー》である!」


誰も知らない珍しい職業のようだけど、剣聖の後だからか誰も気に止めなかった。ラッキー!!


それに選定の儀では、神からステータスが与えられる。


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名 前 ライル・グリミナル

年 齢 5歳

種 族 ヒューマン

性 別 男

職 業 プロフェッサー

称 号 転生者 辺境伯三男 武神 大賢者


固有スキル

【超健康】【鑑定眼】【クラフト】【ストレージ】

スキル

《魔力感知Lv.11》《魔力制御Lv.10》《魔力操作Lv.10》《魔力探知Lv.8》《研究Lv.1》《書籍化Lv.1》

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ーー選定の儀から1年が経った。俺は変わりばえしない日々を過ごしていた。変わったことと言うと領兵の訓練についていけるようになったことだろう。


あぁ、街の近くで狩りをするようになった。一人立ちするにも金が必要だからね。固有スキル【クラフト】の〈罠作製〉で罠を造り仕掛け、〈解体〉で一瞬で解体する。魔力を消費するが、俺の魔力からすると微々たるものである。そのお陰で結構稼がせてもらっている。商人との知り合いも増えて、このまま商人になるのも良いかなと思う時もある。


「本当に勿体無いですな! 坊っちゃん! 今からでも遅くありません。騎士団に入るべきです!」


「ミルド、悪いけど騎士になるつもりは無いよ。俺は冒険者の方がしょうに合っているからね。」


ミルドは父の部下でグリミナルの騎士団隊長を勤める者だ。領内だとトップ3に入る実力者でもある。


たまにだが模擬戦の相手になってもらっている。父といい、ミルドといい勝てる気が全くしない。魔法を使えば良い戦いが出来るだろうか?


「そうだ、コーエン様が坊っちゃんに話しがあるから訓練が終わったら執務室に来るように言ってましたよ?」


「父上が? 嫌な予感がしますね・・・」


「頑張って下さい。坊っちゃん!」


着替えを済ませて、執務室へと向かった。


「来月に王都で御披露目会が開かれるから準備しておきなさい。」


「王都で御披露目会ですか? 行く意味がわからないのですが? 私は冒険者になる為に色々やりたいことが多いのです。移動だけで、数ヵ月もかかる王都には行きたくありません。」


「まだ貴族の一員だからな断ることは出来ないのだ。諦めなさい。」


何でも貴族の子息は6歳になると王都で開かれる御披露目会に参加しないと駄目らしい。それは学校に入学する前に交流を持てと言うことらしいのだけど、学校に行く予定のない俺にとっては本当にめんどくさい。


「わかりました。準備しておきます。それで父上、次の〈魔の森〉への遠征に参加させて頂きたいのですが・・・」


「う~む、しょうがない。次の遠征には私も参加するとしよう。それなら問題無いだろう。」


ーー許可が降りたので、次の遠征に参加出来るようだ。早めに魔物との戦いを経験しておきたかったんだよな。

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