終幕
13年後、僕はクテレマイスの環境保全機関を立ち上げ、僕はその理事長となった。
その後も、保全範囲はクテレマイスを留まらず、ゲントン、ウェリアーレも環境保全に同意した。
今では、ウリエースと激闘を繰り広げたサバンナも自然に覆われている。
『人工物と非人工物の共存』が僕らの最大の課題だった。
僕らはウェリアーレの技術者と話し合い、『グリーンビルディング政策』や、『自然物を建物の一部にする』ことなどを検討し、試行錯誤した。
こういった取り組みのおかげで、人々の動物との触れ合いも増え、観光事業も盛んになったほどだ。
昔から水不足に悩まされていたゲントンも水に困ることがなくなった。
ここまでやってきて、僕らにとって自然がいかに身近で、切っても切れない関係にあり、さらに不可欠なものであるかが改めてよくわかった。
ここまで来れたのは、僕の取り組みに賛成してくれた人達と、レミのおかげだ。
この自然が500年後も、さらにその先まで続くことを願っている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……さて、今日も始めますか!」
僕は鍛治台の前に立ち、袖を捲る。
最近僕は鍛治仕事にハマっている。
自分で剣を打ち、古くなってしまった植木を斬り、それを燃料にする。つまりリサイクルをするのだ。植木は斬られたところからまた伸びる。やりすぎはダメだけどね。でも、素振りもしっかりする。元剣術専攻生として、また、『
「……今日もやるの」
「うん、鍛治ってやっぱり楽しいね。運動にもなるし、達成感も素晴らしい!」
振り返ってレミを見る。いつの間に僕はレミを見下ろす形になった。
レミは今になっても前と見た目が変わってない。こう見るとやっぱり幼く見えてしまう。
「いま、失礼なこと考えてたでしょ」
「いやいや! そんなことはないよ」
顔に出ていたのか、レミにジト目を向けられ、僕は慌てて鍛治台に向き直る。
台の上には、鉄鋼石、魔法石、ラストストーンが置かれていた。
そう、数年前、エルにある洞窟に再び向かってみたところ、まだ見つけていなかった魔法石の欠片が多く残っていたんだ。僕達はそれの一部を回収してきた、と言うわけだ。
そして、ラストストーン。これは、ウリエースを封印した後、結構多くの真っ黒な石ーー黒曜石よりも黒いーーが出てきたんだ。そして、それらを加工することで…
ついに、僕らは外付け型の魔力器官を作ることに成功したんだ!
……まぁまだ試作品の段階だから、大層なことはできない。でも、力を少し強くしたり、軽いものを少し動かしたりする(一般に言われている超能力のようなものだ)ことはできる。それだけでも、僕らにとって大きな進歩だ。
ちなみに、このことはまだ公表していない。もし言ったとしても信じてもらえないし、これを犯罪に使われては困る。これはいつか使う時が来るまで僕とレミが保管しておくことにしよう。
とまあそれはそうとして、今回は長い作業になりそうだ。特に今から作る剣は後世に残したい。
いくつもの鉱石を溶鉱炉に入れ、溶かし合わせて一つの石にする。それを取り出した後、少し冷ましてからまた炉にくべ、赤くなったらそれを槌で打つ。しばらく打ったら、また炉にくべる。それを繰り返し、剣を形作っていく。
「……ふう、できた」
虹色に煌めく片刃剣を見た時、日はとうに沈みきり、月が昇っていた。
剣鍔に当たる部分は2つの虹の輪っかになっており、当たり判定はあるようだ。
剣柄を取り付け、外に出てみる。
その剣からは、生命の力が感じられた。
「……ふっ!」
剣を地面に突き刺す。すると、虹色の光が広がっていき、あたり一面が植物に覆われた。
「おお、すごい……」
その代わり、自分の魔力がかなり吸われたらしい。少し気怠さを感じながらしゃがみ、植物の一つを摘んでみる。
……本物の植物だ。この剣は、使用者の魔力と引き換えに、生 命を生み出す力を持っているらしい。
「……できたの」
ふと後ろからレミの声がした。
「ああ。完成だ。今までで一番よくできた剣だ」
「名前はどうする?」
「そうだな……」
僕は片刃剣を月に翳してみた。すると、剣は一層虹色に輝いた。
「……決めた。この剣の名前は、月に虹で、月虹だ!」
「……そんなので良いの」
「もちろん! 僕もこの名前にはしっくりきてる。こんなこと滅多にないぞ! よろしくな、月虹!」
レミはふう、とひとつ息をついて、
「……まあ、ルーグスタがそれで良いなら良い。ご飯できてるよ」
「オーケー、今行くよ」
僕は月虹をもう一度見た。月の光を反射して、もう一度強く煌めいた。
デフィートエネミーバトラーズ0 イードラ @e-dragon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます