第20話 プロゲーマーとの特訓!
「初めましてかな? 中山君。それと西蓮さんと橘さんかな。」
父さんは笑顔でそう言った。西蓮先輩達は
僕と父さんの関係は知らないから初対面の
フリをしてるみたいだ。
「初めまして。橘未来です。まさかあのプロチームREDの裕太さんが来るなんて思わなかったです。」
「かしゃまろとは昔から一緒にプロゲーマーとして活動してたからね。ちょうど海外の大会はオフシーズンだから来たんだよ。」
「あ、あの! わ、私部長のさ、西蓮佳奈です! いつもお、応援してます!」
珍しく西蓮先輩がテンパっていた。
どうしたんだろうか。
「かなちゃんね、実は裕太さんが推しなんだって」
「それであんな感じなんですね。なんかちょっと違和感ありますね」
「ふふっ 待ち受けも裕太さんなんだよ。」
これは父さんの事は隠してた方がいいかな。
色々面倒くさそうだし。
「かしゃまろから色々聞いたよ。eスポーツ甲子園に出るんだってね。」
「そ、そうなんです! で、でも裕太さんに教えて貰えるとは聞いてなくて…」
「君たちの事は動画で気になっててね。久々に原石をみた気分になったよ。」
「まぁ その2人は確かに原石かもしれません… 私は着いてくので
精一杯です…」
「そんな事ないよ。西蓮さんの動画も見たし、かしゃまろからも勢いが
あって面白いプレイヤーって聞いて楽しみにしてたんだ。」
「た、楽しみにしてたって… そんなぁ…///」
西蓮先輩が普通に照れている。
こういう一面もあるんだな
「あら、裕太くんこの子達を待ってたのね。久々に来たと思ったら随分
珍しい事するじゃない。」
「まぁね。プロゲーマーとして若い子達の
芽を咲かすのも僕らの務めだからね。」
「それもそうね。でも本当にそれだけかしら?」
「まぁ 昔からの芽が、龍に勝てるかが気になったのもあるかな」
「ふふっ それは私も楽しみだわ。」
「…何のことだろ?」
橘さんは不思議そうにしていた。
龍ね...
「さぁ 西蓮隊。早速僕と組み手をしよう。今の実力をみてあげる。誰からやるかい?」
うちの先鋒は西蓮先輩だ。でもなぜか西蓮
先輩はもじもじして俯いていた。
全く…いつもは先陣切って行くのに。仕方ないなぁ。
「とう、いや、裕太さん。西蓮先輩からお願いします。うちの先鋒なんだ。」
「ちょっと中山君!まだ心の準備が…」
「そんな事言っても仕方ないですよ。いつもみたいに勢いあるプレイ見せてください。」
「もう…わかったわよ! じゃ、じゃあお願いします!」
組み手が始まった。
父さんの使用するキャラはステータスが高いキャラ、つまりキャラランクが
高いキャラを使う。プロとして勝ちにこだわっているキャラピックだ。
それでいて格ゲースキルもトップレベルに高い。鬼に金棒とはこの事だろう。
世界的に見ても父さんと互角のプレイヤーはそう居ない。
それでいて父さんは誰に対しても手を抜かない。まるで格ゲー界の
猛獣の如く対戦相手を倒していくんだ。
「やっぱり強すぎますね… 一本も取れなかったですよ…」
「西蓮さんは攻め手の数も豊富だし相手の意表を突くのが上手いね。
でも少し単調な所があって、恐らく癖で技打ちしてる所があるから
そこを工夫すれば攻めの圧がででくるよ。まずここを…」
父さんは対戦のリプレイを見ながら丁寧に教えていた。
昔から教えるのは上手いんだよな。
「あ、ありがとうございます!意識してやってみます!」
「頑張ってね。じゃあ次は誰がやる?」
「私がやります。よろしくお願いします。」
「おっ これは天使さんの登場だね。全力でくるんだよ。」
「…はい。」
橘さんは髪を縛り対戦席に座った。全力で倒しに行く時の橘さんだ。
プレイスタイルは似たようなスタイルの二人だったが、父さんの方が
格ゲースキルが遥かに上だった。母さんのように油断せず、
常に冷静な戦い方に橘さんは苦戦し、そのまま負けてしまった。
「守りも上手いし反応もいい。正直手ごわい相手だったよ。」
「い、いえ。手も足も出ませんでした…。」
「橘さんは少し自分の反応に頼りすぎている所があるね。
それが故に、技をくらっちゃう部分があるからそこが改善点かな。
例えばこことか…」
父さんは橘さんにも同じように丁寧に教えていた。
それを橘さんは真剣に聞いていた。本来強いプレイヤーはプライドが邪魔をして
アドバイスを聞かない時がある。昔の僕がそうだった。
でも橘さんはそんな様子は一切なく、純粋に強くなる為に教えてもらっている。
この姿勢も見習わないといけないなぁ。
「じゃあ最後は格ゲー界の王子がお相手かな?よろしく頼むよ。」
「よろしくお願いします。」
父さんと対戦するのは久々だ。子供の頃は
よく対戦はした事あったが僕は1回も勝った記憶が無い。僕が中学に上がる頃にはプロゲーマーで忙しかったので最近は全く対戦してない。
だけど父さんは昔から一切の妥協がない。
母さんですら気が抜けて油断する時がある。
だから父さんに勝つには純粋に父さんより
強くならないと勝てないのだ。
だけど父さんは最近の僕とは対戦してない。
少なからず無意識な油断があるはず…
一瞬でも父さんより強くなれば勝てるチャンスもあるはず…!
「流石だよ王子様。ここまでやれるとはね。」
なんとか1本取れた... あと少し...
「でもこれではまだまだ勝てないよ。」
突然父さんの雰囲気が変わった。父さんからのプレッシャーが凄まじい。まるで悪魔と
対戦しているような恐怖を感じた。
その瞬間とてつもないスピードで倒された。
僕は思わず固まって動けなかった...
「少し驚かせちゃったかな。大丈夫?」
「あ、いや 大丈夫です。少し驚いただけです。」
「あはは 中山君の場合は少し他のプレイヤーとスタイルが違くて難しいね。
格ゲーの上手さなら3人の中では一番上手いんだけど、それだけだとトップレベルには中々勝てないだろうね。」
「...どうすればいいですか。」
「中山君はトップレベルとの対戦経験がまだ足りない。そこに近づける為に僕が居るから安心して。」
「...ありがとうございます。」
「やっぱり裕太さん凄いねー! 見てるだけで痺れるわ! 」
「確かに凄いね...」
(一瞬とてつもない恐怖感を感じた... プロゲーマーってみんなあんな人ばっかなのかな...)
「流石ね。龍の親は、悪魔ってとこかしら?」
「そんな大袈裟な物じゃないよ。それより
ここは何時まで使えるんだい?」
「夜まで使えるわよ。ここのブースはあなた達専用にしてあるわ。」
「じゃあ3人ともまだまだ対戦しようか!」
「は、はい!」
「はい。」
「...はい」
結局そこから父さんとの対戦は夜まで続いた。
「じゃあ僕はこれからプロゲーマー同士の練習会があるからこれで。今日はよく頑張ったね。じゃあまた明日。」
父さんは体力もあるなぁ... 流石の僕も今日は
疲れたぞ...
「みんなお疲れ様! 私の民宿はすぐ近くだから案内するわ。」
「もうヘトヘトですー お腹も空きましたー」
「かなちゃんも頑張ったわね。美味しいご飯も用意してるから楽しみにしてて。」
「やったぁー! ほら2人とも早く行くよ!」
「かなちゃん急に元気だね...」
「まだ今日ほとんど食べてないのよ! 早く
食べないと倒れちゃうわ!」
「そんなに元気なら大丈夫ですよ。」
車で数分の所に夏菜子さんの民宿があった。
「車停めてくるから先受付しててー」
「わかりました。」
中に入ると少女が1人立っていた。
中学生くらいだろうか。橘さんより小柄な体で綺麗な銀色の髪の毛の少女だった。
その少女は何故かこちらの方を見ている。
「あ、あのー」
「...!」
少女はそのまま奥に走って行った。
「中山君ー!何か嫌われる事したのー?♡」
「いや、別に何も...」
一体なんだったんだろう...
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