第15話 コスプレ大作戦!





「コスプレをするわよ!」


西蓮先輩は急に立ち上がり、大声で言い放った。


「いや、ちょっと待ってください。なんで急にコスプレなんですか…」


「参加条件のとこ見たでしょう!だからコスプレをするのよ。」


余計に意味が分からなくなった。何を言ってるんだこの人は…


「ねぇかなちゃん… なんでコスプレを…」


流石に橘さんも困惑している様子だ。


「だ!か!ら! 書いてあるでしょ!参加条件にチーム紹介PR動画って。」


「それは分かりますけどなんでコスプレになるんですか…」


「もうー!参加条件のとこ最後まで読んでよ!」


参加条件の記載をよく見ると、PR動画の再生回数が上位3チームに大会ポイントが

貰えると書いてあった。


「つまりだよ! 私達の動画次第で早速ポイントが貰えるかもしれないのよ!」



「PR動画の意味は分かりましたけど、コスプレの意味はわかんないんですけど…」



「いい? 今は、コスプレイヤーの人気がすごいのよ!イベントに呼べば大勢人は集まり、

人気コスプレイヤーがアニメのコスプレをしたら円盤は飛ぶように売れるわ!」



「そして、このeスポーツ甲子園はゲーマーだけではなくて、一般の人の注目度も高い大会なのよ。送った動画はeスポーツ甲子園公式のチャンネルでupされるわ!」


「そんな一般の人も注目するとはいえ、そんなに見られるものなんですか…

ちなみに公式チャンネルの登録者数って何人なんですか?」


「530万人よ」


「」


いや、めちゃくちゃ多いな…確かに世界的にも人気のあるゲームが色々

eスポーツに関わってるから納得はできるんだけど。



「だからもうコスプレしかないのよ!みくちゃんは見ての通り超絶美少女だし、私もこう見えて結構モテるのよ!それに中山君も格ゲー界の王子って呼ばれてるくらいだから絶対いけるわよ!」



「いや、でもそんなコスプレなんかした事ありませんし…」



「そうなの? 中山君のお母さんはいつも

コスプレ配信してるわよ。」


「」



何をしてるんだ母さんは… 歳を考えてくれよ



「どれだけコスプレが凄いか中山君のお母さんの動画で観てもいいんだよ?」


「いや、それは絶対大丈夫です。」


自分の母親のコスプレが、見れるほど今は

大人では無い。



「でもかなちゃん衣装とか無いんじゃ…」



「それなら任せなさい! 前も言ったでしょ

私にはちょっとしたコネがあるのよ♡」



「はぁ 諦めましょ橘さん… 西蓮先輩もう乗り気マンマンなんで…」


「そんなぁ…」



「あはは! さぁいざ行かん! 約束の地へ!」


西蓮先輩は嫌がる僕達を半ば強引に学校の外へと繰り出して行った。





西蓮先輩に連れられ、やって来たのは何やら駅の近くみたいだ。薄暗い裏路地を抜けた先にお店があった。


コスプレ専門店にゃんにゃん島



はぁ ほんとにコスプレする気なんだなぁ



「やっほー!久しぶりー! 今日千紗ちゃん

居るー?」


「かなさん!お久しぶりです!店長なら奥に居ますよ!」

店員さんらしき人はメイドさんのコスプレをしていた。 こういう服しかないなら

僕は無理だぞ…



「おぉー!かなじゃん!どうしたの急に」



「いやー!ちょっと野暮用でコスプレする必要がありましてね!私達に合うコスプレを探しに来たんですよー!」


「どんな用事なのよ。なにかのイベント?」


「それがですねー!」


西蓮先輩は店長さんにPR動画の事を説明していた。


ふと店内を見渡すと、色々なコスプレ衣装がある。メイド服やチャイナ服。それに

なにかのアニメっぽい衣装もたくさんあった。

コスプレにも色々あるんだなぁ。



「ふむふむ。そういう事ね わかったわ

それならここのコーナーで選ぶといいわ。」


そこには僕らがプレイしてるキャラクターの衣装がずらりと並んでいた。

だけどこのゲームの女性キャラ結構きわどい服ばっか着てるんだな…


「じゃあまずは私達から選びましょ!ほら

みくちゃん行くよ!」


「ちょっとかなちゃん…まだ心の準備が…」


困っている橘さんだったが、西蓮先輩はお構いなしに色々な衣装を見て回っていた。


「じゃあ中山君!私達試着したりするから少し他のとこで待ってて!」


「はぁ わかりました。」



大会のポイントが貰えるとはいえ、少し橘さんも可哀想だな…



「やぁ 着たい衣装は見つかった?」

適当に衣装を見ていたら店長さんが話しかけて来た。


「いや、僕はこういうのよくわからないので。」


「あはは そうだろうね。興味ない顔でそこら辺の衣装見てたからね。」



実際僕はコスプレなんかやりたくないからな。


「まぁ興味はないですね。」


「でも君、格ゲーやる時はなんか全然雰囲気違うんだね。」


この人も格ゲーをやるのか?会った覚えはないけど



「え、どこかで対戦しましたっけ。」


「違うわ。SNSの動画で観たのよ。とても楽しそうに対戦してたから印象に残っててね。」


「そうですか。まぁ僕格ゲー以外興味ないですから。」


「あはは! 誰かも似たような事言ってたわ

! まぁこれから頑張りなさい。」



誰の事を、言ってるのだろうか。僕には分からないが聞いても知らない人だろうから別にいいや。


「中山君おまたせー!もう来ていいよ!」


奥の方から西蓮先輩の声が聞こえた。

どうやら着替えが終わったみたいだ。


「結構かかりましたね。どんな服をえら…」



思わず僕は立ち止まってしまった。


西蓮先輩は人気のあるキャラクターの

コスプレをしていた。


西蓮先輩はお嬢様キャラのコスプレをしていて、ロングヘアーのウィッグを着けていた。


西蓮先輩はいつもショートカットなのでいつもと雰囲気が違う。 そこにそのキャラクターが居ると錯覚してしまうくらい似合っていた。 恐るべしコスプレ。


「ねぇ 中山君。そんなに反応ないと流石の私もちょっと恥ずかしいんだけど。」


「あっ すみません。いつもと雰囲気が違ったので言葉が出なかったです。」


「えー! それは見惚れてたって事かなー?♡」


「いや それは違いますけど。」


「ふん わかってるわよ! でも似合うでしょ

このコスプレ!♡」


「そうですね。こんなにクオリティが高い

とは思わなかったです。」


「まぁ着てる人間が可愛いからね♡ でも

みくちゃんの方が凄いわよ♡ みくちゃんも出てきなさいよー♡」



「で、でも この格好恥ずかしいってば…」


「今更遅いわよ! ほら!」


「きゃ… もう… 中山君あんまり見ないで…」


橘さんは顔を手で隠しながら、うつむいていた。

頭には猫耳を付け、髪の毛はツインテールにして、しっぽを生やし、

短いスカートと羽の生えた靴を履いていた。

格ゲーのアイドルキャラクターのコスプレをしていた。


格ゲーにしか興味がない僕ですらその姿に少し心を奪われた。

それだけ橘さんのコスプレの魅力は凄かった。



(なによ…私の時の反応と全然違うじゃない…そんな天使を見るような

顔でみちゃってさ…)


「中山君ー いつまでみくちゃんに見惚れてんのよ。」


「あ、いや そういう訳じゃ…」


「顔赤くして言われても説得力ないのよ。」


だから顔が熱いのか…




「まぁまぁ。 2人ともよく似合ってるじゃない。うちのお客さんでも

ここまで似合う子いないわよ。」


「まぁね! 顔面偏差値高いチームって言われてますから!」


「自分で言ってたら世話ないわよ。まぁでもこれだけ可愛かったら

PR動画も大丈夫でしょう。上の階に撮影ブースがあるからそこ使いなさい。」


「千紗ちゃんありがとうございますー!」


「じゃあ僕達は上にいきまし」


「なに笑顔で上がろうとしているのかな? 中山君もコスプレするのよ♡」


笑顔でいけば乗り切れると思ったんだが… やっぱり西蓮先輩は逃がしてくれないよな。


「そ、そうだよ… 中山君もちゃんとコスプレするんだよ…」


橘さんは僕の袖をもって逃げないようにしていた。

やれやれ…これは僕もコスプレするしかないな…


「じゃあ君のコスプレは店長直々に選んであげようー!」


「はぁ じゃあお願いします。」


「素直でよろしい♡」


はぁ…なんで僕がこんな目に…




「ねぇ みくちゃん。中山君どんなコスプレするかなー。」


「…中山君ならどんなコスプレでも似合うと思うよ。」


「ふーん そうだね」


「なんでにやにやしてるの…」


「なんでもないよ♡」


(もうー わっかりやすいんだから♡)



「着替え終わったよー!」


「どんなコスプレかしらー!  わおー!!」


「王子様…」


僕は白黒の王子の格好をさせられていた。なんでもいいけど

この服動きずらすぎだろ…


「…流石格ゲー界の王子ね。似合いすぎて逆に怖いわ。」


「怖がらないでください。」


「…でも中山君凄く似合ってるよ。」


…橘さんに言われたらなんだか照れる。


「た、橘さんも似合ってますよ。」


「そんな事ないよ…」


(なに2人揃って照れてるのよ…♡ もう可愛いんだから…!)


「じゃあみんな仲良くコスプレした事だし、上行って撮影するよー!

千紗ちゃんありがとございますー!」


「はーい。ごゆっくりー」



(ふふ あの少年がまだ格ゲーやっていたとはねー 君もほんとは

わくわくしてるんでしょ)




(玲央君…)



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