第10話 思い出す心情
「さぁー!最高段位到達の強さは本物ですね!早くも西蓮隊は大将が出てきました!」
「このプレイヤーも大会戦績はない方ですね。ですが大将を任せられてるのでこのチームで一番強い方なのでしょう。頑張って頂きたいですね。」
それは違う。僕なんかは全然強くない。本当に強いのは橘さんなんだ。
「ねぇ みくちゃん。中山君のあんな真剣な顔初めて見るね。」
「…うん。私達の為に真剣なんだよ。」
「それでは中堅大将戦始めましょう!」
僕が負けたら終わりだ。だけど不思議と落ち着いていた。
(やっぱりこの人は強い。無理な技打ちはせずに、いつでも僕を狩ろうとしてる感じだ)
(この人ガードも硬い… 流石の強さだな…)
「早くも大将が追い込まれているー! このまま負けてしまうのかー!」
「みくちゃんどう思う…?」
「…きっと勝ってくれると思います。」
「だよね!私もそんな気がする!」
「さぁ大将もなんとか意地をみせて、最終ラウンドまで来ました! 一体どちらが勝つんでしょうか! 」
(格ゲーにおけるスキルがこの人はやはり高い…)
(だけど…)
(橘さんはこんなもんじゃない…!橘さんは
こんな隙みせてくれないよ! )
「な、なんと!一瞬の隙を見逃さずにコンボを決め切り西蓮隊大将が勝ちました!!」
会場が沸いた。初めて格ゲーをやっていてこんな歓声を聞いた。 初めての感覚だった。
凄く楽しい
「…中山君笑ってる。」
「ほんとに格ゲーが好きなんだよ。みくちゃんと一緒で。だからみくちゃんも楽しめばいいんだよ」
「中山君みたいに楽しむ…」
(対戦に集中してる時の橘さんほんとに楽しそうで、笑顔でやってる所見るの僕結構好きなんですよ。だから結果は気にせずにいつも通りで大丈夫だと思います。)
「中山君が、言ってくれたから私も楽しんでみる…」
「さぁ!なんやかんやで大将戦まで来ました!非常に熱い展開ですね!」
「そうですね。我々も興奮しております。」
「さぁ泣いても笑っても大将戦です!試合お願いします!」
久しぶりだこんな感覚。ただ純粋に格ゲーを楽しんで、没頭してるこの感覚。
昔、あいつと対戦してた頃を思い出す。
やっぱり格ゲーはこうじゃなくちゃ…!
このゲームは本当に楽しい…!
「またもやフルラウンドまで来ました!もうどちらが勝ってもおかしくありません!最後に立っているのはどちらだー!」
「ここで、会心のコンボを西蓮隊の大将がくらってしまう! 体力は残りわずかだ!しかし相手もコンボ1回で倒されてしまう!堪えられるか?!」
(普段ならもう諦めてるかもしれない… だけど今回だけは絶対負けられないんだ…)
「西蓮隊大将、ギリギリの緊急回避攻撃で、相手のダウンを奪って行く! っと これは…」
「なんとこれはすごい…!」
「なんと、格ゲー界でも一番難しいと言われる大技をここで決めてきました!!!」
「この技は相手の行動、正確なレバー入力とボタンのタイミング全てが噛み合わないと出せない技です。プロゲーマーでも成功率は低いと言われてる技ですからね。」
「まさかここでこの技を見れるとは思いませんでした!! 接戦の末勝ったのは西蓮隊です!」
僕は夢中になって対戦していた。この技は勿論知っていた。だけど練習しても実践では成功した事はなかった。 こんな所で成功するとは思わなかった。
気づいたら僕ガッツポーズしてるし。
「中山君ー!!!凄いよー!!本当に勝っちゃうんだから!!!かっこよかったよ!!」
西蓮先輩はとても喜んでいた。良かった。ちゃんと勝てて。
「…中山君 凄くかっこよかったよ」
橘さんは笑顔だった。橘さんに言われたら
なんだが少し照れる。でも、これで少しは安心してくれただろうか。
「結構ギリギリでしたけどね。勝てて良かったです。でもまだ決勝まで勝たないといけないんで頑張りましょう。」
「今日一番の盛り上がりを見せてくれた試合でしたね!私もまだ興奮しております!」
「配信のコメントでも盛り上がってるようですね。世界大会でも中々見れない光景でしたから。とても素晴らしいプレイヤーでしたね。」
「このまま勝ち上がって欲しいですね!」
(それにしても、あの西蓮隊の大将の子
どこかで見た事ある顔なんだよな…)
―――配信のコメント欄
「やばくね!あれ!」
「上手すぎワロタw」
「ていうかあのチーム顔面偏差値高すぎだろw」
「このまま優勝するかもね!」 …
―――とあるアメリカ某所
配信を見つめている男が居た。
「やっと現れたか。さぞ僕に会いたがってるだろう。早くここまで来い。僕が潰してあげるよ 優。」
大会も進んで行き、僕らも順調に勝ち上がっていた。先鋒の西蓮先輩の勢いが止まらず僕らの出番がないまま決勝まで来た。
「西蓮先輩なんだか、覚醒してますね。」
「そりゃあ可愛い後輩があんなに頑張ったんだから私も覚醒くらいするよ♡」
「今日ばかりは西蓮先輩を尊敬しようと思いますよ」
「…でも決勝の相手かなちゃんの苦手な人が居るんだよね…」
決勝の相手は最初に西蓮先輩を煽っていた眼鏡の斉藤が居るチームだ。
デカい口を叩いただけあって実力は本物みたいだ。
「ふん! やっとあの眼鏡をボコボコに出来るわ! 二度とデカい口叩けないようにしてやるわ!」
西蓮先輩は今日一燃えていた。よほど前回の大会でボコボコにされたのだろう。
噂をしていたら、斉藤がにやにやしながら
話しかけてきた。
「やぁ西蓮。君達がここまで来るとは正直思わなかったよ。気付かないうちに負けると思ってたからね。」
「あんた達に優勝させる訳にはいかないからね! せいぜい負けた時の言い訳でも考えてたらどうかしら!」
「あはは 去年よりは強くなってるみたいだけど君に負ける要素を見つける方が大変だけどね」
「大会が終わった後に同じ事言えるかしら! こっちにはみくちゃんも中山君も居るんだから!」
「あー そこの2人ね。男の方はまぁ強い方だと思うが、そこの女の方は全然だったじゃないか こっちが負ける事はないよ」
(それに、こっちのチームはあいつらが居るからな…!
僕らが負ける事は絶対ないよ)
「まぁまぁ西蓮先輩。格ゲーマーは結果で語るものですよ。」
「まぁそうね。結果で語ってやるわ!」
「せいぜい頑張ってくれたまえよ諸君。健闘を祈ってるよ」
去ろうとする斉藤に僕は思わず声をかけた。
「ちょっと眼鏡の人。」
「なんだね。まだ僕に言いたい事があるのか?」
「うちの橘さんを、あんまり舐めない方がいいっすよ。」
斉藤は少しびっくりしていた。
「…ふん。 期待してるよ」
斉藤はそう言って戻っていった。
「ねぇ中山君♡あなたががあんな事言うの
珍しいわね♡」
「ただの気まぐれです。僕も少しムカついたので。」
僕も意外と煽り耐性がないみたいだった。
「…ありがとう中山君。私も頑張るね」
橘さんは落ち着いてる様子だった。でもなんだが嬉しそうな顔をしてる気がした。
「さぁ、熱い試合ばかりでしたが今大会も最後の試合となりました!いやー、ここまで勝ち上がってきた両チームどうでしょうか!」
「両チームとも先鋒のプレイヤーが活躍してた印象がありますね。しかし両チームの先鋒実は、去年の大会で戦っていて、その時は
斉藤君が勝ってるみたいですね。」
「ではこれは西蓮さんのリベンジマッチでもあるんですね!期待しましょう!」
「2人とも 軽い気持ちでこの大会に出たけど
ここまでこれて嬉しいわ! 最後まで全力で行きましょ!」
「そうですね。後ろには僕達が居るんで安心してガンガン攻めてください。」
「かなちゃんリベンジ頑張って」
2人で西蓮先輩にエールを送った。今日の西蓮先輩は強い。でもあの斉藤って眼鏡のスタイルは完全カウンター型のプレイヤーだ。
西蓮先輩の苦手なスタイルだけどどうするんだろうか。
「では決勝先鋒戦スタートです!」
(私には秘策があるのよね!)
西蓮先輩はとても自信があるように見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます