第9話  大会の壁

「チーム名西蓮隊の方々ですね。 こちらで

代表者の方大会の受付お願いします。」


「はーい!お願いしますー!」



日曜日になり、僕達は大会の為受付をしている。

しかしチーム名は他になかったのだろうか。


「こういう大会初めてですけど結構人多いんですね。」


「今回は限定品のアケコンが優勝賞品みたいで、それでいつもより人が多いみたいです。」


「ちょっと人酔いしそうですね。」


eスポーツ団体が開催する大会は、僕らみたいにやり込んでいる人達だけでは無い。


今回の大会は参加費が無料で、アケコンの貸出もあるので、小学生の子達や他のゲームをやってる人達も気軽に参加をしている。



「受付済まして来たよー! 私達は1回戦シードで11時くらい開始予定だから少し他の試合観戦しよっか」



10時半になり大会主催の方が挨拶を始めた。今回の大会のルールは勝ち抜き戦で先に大将を倒した方の勝ちというシンプルなルール。

そして今回はネットで大会の様子を配信するみたいだ。実況と解説の人も居て結構本格的な大会の雰囲気がある。


「今回は皆さん大会のご参加ありがとうございます!本日実況を務めさせて頂くKンヤです!よろしくお願いします!」


「そして解説は私、白氏です。どうぞよろしくお願いします。」


2人とも格ゲー界隈では有名な人でプレイヤーとしても強いのだが、主にこういった大会の実況解説を行っている。この2人が居れば大会も盛り上がるだろう。





「よう。来てたのか西蓮。久しぶりだな」

眼鏡をかけた男が西蓮先輩に話しかけてきた。


「げっ 斉藤じゃん… あんたも来てたんだ…」


「まぁね。こういう初心者が多い大会には出ない主義だったんだけどね。今回は景品目当てで出る事にしたんだ」


「言っておくけど、今回は私達が優勝するから!あんまり調子こかない方がいいわよ!」



「あはは! 西蓮!君と僕の実力差は去年の大会で見せつけただろう!うちの他のメンバーも段位の高い奴らを集めたからね まぁせいぜい頑張りたまえよ!」


「今回、私のメンバーもあんた達より強いわ!当たらないように祈る事ね!」


「もしかして後ろの2人かい? ふふっ見るからに初心者ではないか! どうせ君が頼み込んだのだろう! 1回戦で負ける事を期待してるよ!じゃあね」



西蓮先輩は去っていく男にぶつぶつ文句を言っていた。

格ゲーマーなのに煽り耐性はあんまりないらしい。


でも、僕はともかく橘さんは確かに見た目はとても格ゲーをやるとは思われないだろうな。


「なによあいつ! ちょーーっと前回私に勝ったからって調子に乗って! 絶対あの眼鏡ボコボコにしてやるんだから!」


「まぁ、落ち着いて練習通りやりましょ。とりあえず第1試合が始まるんで観戦しますか。」



西蓮先輩をなだめながら、観戦席に座った。



「さぁ!まもなく第1試合スタートです! いやー!早速強豪同士の戦いになりますね!」 

「そうですね。両チームとも名の知れたプレイヤーが居ますからね。面白い試合になるでしょう。」


試合が始まった。会場は応援の声や、歓声の声で盛り上がっている。2人の実況解説もとてもわかりやすくて僕も自然にテンションが上がっていた。


夢中になって観戦していたら、第1試合が終わった。実力が拮抗してたのもあり、

とても白熱した試合だった。

会場の雰囲気もどんどん盛り上がっていくのを感じた。僕はこの大会に出ると思うと気持ちが高ぶった。早く対戦したい。 


「いやー!思ったよりレベル高いかもね!あんなコンボあるんだね!」 


「あのコンボは昔からありますよ。それに西蓮先輩が使ってるキャラじゃないですか。」 


「あはは 私ノーマルコンボしかやらないのよね!レバテクないし」


なぜそれで、優勝すると言えたのだろうか。まぁレバテクない人でも強い人はいるのでまぁいいかと思った


「呆れた顔したね! いいのだよ!こっちにはレバテクの鬼のみくちゃんがいるし!」


他力本願とはまさにこの事だな。

でも橘さんはコンボが上手い。常に最大ダメージを狙っていてコンボ精度も高い。


「私そんなに、レバテクないよ… かなちゃんよりはあるけど…」


橘さんはもっと自信を持つべきだ。3人の中では断トツで上手いから。




試合が進んでいき、次が僕らの試合だ。出場を決めてから学校では橘さんと対戦をしまくり、家でもランクマをやりまくった。おかげで段位も随分上がった。


西蓮先輩はともかく、僕と橘さんは仕上がっているはずだ。



「いやー!白熱した試合ばかりで私の声も少し枯れてきましたよ!」

「見応えのある試合ばかりですね。さあそれでは次の試合のチームの方々準備をお願いします。」



「じゃあ行きますか!勢い余って全員倒したらごめんね♡」


僕には負けフラグにしか聞こえなかった。でも橘さんがいるし大丈夫だろう。


「頑張りましょうね。橘さん。」


「…はい。頑張ります。」


橘さんは不安そうな顔をしていて、手は少し震えていた。



「さぁここでシードのチーム登場です!西蓮隊というチームですがなんだか聞いたことありますね白氏さん!」 


「そうですね。実は個人的に西蓮は知ってる仲なのですが、中々プレイスタイルが勢いのある人ですね。」


「私、Kンヤも対戦した事があるので勢いは存じております!しかし相手チームは

最高段位到達しているプレイヤーもいるので厳しい展開になるかもしれませんが

勢いのある所を見せてほしいですね!」 


「では試合お願いします!」



「よーし!全員倒すよー!」


西蓮先輩はいつも通りの様子だった。だけど相手も結構強いみたいだ。


西蓮先輩は相変わらずガンガン攻めて戦っていた。先鋒を任される人は意外とこういうタイプがいいのかもしれない。現に相手を結構追い込んでいる。


「流石西蓮さん!勢いがありますね!このまま勝ってしまうのかー!」


実況も盛り上がりを見せている。僕は少し西蓮先輩を見直した。 


そして勢いそのままで西蓮先輩が勝利した。


「かなちゃん凄いよ…! 相手結構強い人だったのに!」


「ふふっ 私結構本番に強い女なのよ!」


「確かに凄かったですね。正直負けると思ってました。」


「かな先輩を舐めてもらったら困るよ中山君!2人の出番ないかもね!あはは!」


確かに勢いがある人なので、このまま全員倒すかもしれない。



「勢いのある試合で面白かったですね!さぁ相手の中堅に早くも最高段位到達のプレイヤーが来ました!

楽しみですね!では中堅、先鋒戦お願いします!」  



試合が始まり、西蓮先輩は勢いそのままで攻めていった。


しかし西蓮先輩の攻めをしっかり対応して相手チームの中堅が勝利した。


「あちゃー!対応されちゃったよ!勝てると思ったになー」 


「仕方ないですね。相手が流石に強かったです。」


「じゃあみくちゃん頼んだよ♡ 頑張ってね♡」


「…頑張ります。」


橘さんはとても緊張してるようだ。でも実力は橘さんの方があると思うのでいつもの橘さんの実力が出せれば勝てるはず。



「さぁ続いて中堅同士の対戦となります! おっと!とても可愛らしいプレイヤーが出てきましたね!大会戦績はないので、大会初参加かもしれませんね!」


「そうですね。実力差があるように見えますが頑張ってほしいですね。」


そんな事はない。橘さんは凄く強いんだ。ここでみんなに強さを見せてほしい。


「それでは、中堅戦 レディ ファイト!」


試合が始まった。しかし少し橘さんの様子がおかしい。





僕は目を疑った。橘さんは手も足も出せずに負けてしまった。


相手が強すぎる訳ではない。明らかに普段の橘さんの強さではなかった。



「…ごめんなさい 何もできなくて…」 


橘さんは悔しい顔をして、目には少し涙がみえた。


「…大丈夫だよ、みくちゃん頑張ったよ…」 


西蓮先輩もとても悔しそうだった。



「橘さん。」


「中山君ごめんね 私もっとがんば…」 



「いいましたよね。僕が大将に居れば安心するって。」 


「…うん でも…」


「橘さんが安心できるように絶対勝ちます。ここで橘さん達を負けさせたりしませんから。」



もうあんな顔をさせない。僕が絶対優勝させる。


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