第8話 初3ON3!

ちょっとこれ硬すぎませんか…


いや、これは橘さんのせいで…


そんな、中山くんがもっと強くって…


(な、な、なんだ?!部室からいかがわしい声が聞こえる…///)


(私に隠れて、こんなの…)



「こ、こらー! 2人で何変なこ… と」



「あ、西蓮先輩お疲れ様です。」

「かなちゃんおつかれー。」



「…2人とも何してたの…」


「何ってレバーの交換をしてたんですけど。」


西蓮先輩は顔を赤くしながらため息をついていた。



「もう…なんか勘違いしちゃったじゃない!」


「何を勘違いするんすか。」


「まぁいいわ。それで、なんでレバー交換なんかしてるのよ。」


「昨日新しく部活用のアケコンを買ったんですけどついでに最新のレバーも売ってたんで試しに買ってみたんですよ。」


「あー!あのプロゲーマーが開発したってやつね!」


「中々複雑な付け方だったので、橘さんに手伝って貰ってたんです。」


「なるほどね。でもなんでそのアケコンをみくが使ってるのよ。」


「…私も少し、興味があってそれで中山くんに貸してもらう約束を…」


「ふーん。そうなのね。」

(珍しいわね。みくが男の子のアケコン借りるなんて)



「そ!れ!よ!り!このチラシみてよ!」


チラシにはeスポーツ格ゲー大会3ON3と

書いてあった。

3ON3とは3人1組のチームを組み3対3の

チーム戦で、対戦する事である。


「週末にね駅前の家電量販店で行われるの! 大規模な大会じゃないから賞金とかは出ないけど、結構いい景品が優勝したら貰えるのよ!」


「そんな大会があるんですね。橘さん知ってました?」


「一応、色々なeスポーツ団体が大会を開いてる事は知ってましたけど…」


「去年は、部員が2人しか居なかったから個人戦の大会にしか出れなかったけど今年から

中山君も増えてチーム戦の大会にも出れるのよ!勿論出るよね!?」


格ゲーの大会か。ゲームセンターでの小規模大会は出た事がある。大会は普段の対戦と違って短期戦で、雰囲気も盛り上がりがあって結構好きだった。最近オンラインが主流になって大会には出てなかったが…


「僕は全然いいですよ。久々に大会の雰囲気も感じたいので。」



「みくちゃんはどうする?!」


「私も、中山君が出てくれるなら心強いですし、いいですよ。」


(私だけだと結構不安なのね…)


「OKー! じゃあ日曜日に駅前に集合ね!大会の受付10時からだから少し早めに来てね!」



3ON3か。チーム戦はした事ないけど、橘さんも居るしいい所まで行くよな。


「という事でー!今から大会の順番を決めまーす!」


「なんですか。順番って。」


「みくちゃん説明してあげて♡」


「チーム戦は先鋒、中堅、大将でチームの順番を決めておくんです。」

「これが意外と重要で、プレイヤーの実力だけじゃなくて、プレイスタイルも関係してると言われてます。」


「そういう事なのだよ!」


何故か、西蓮先輩はドヤ顔だった。


「という事で今から3人で総当たり戦を行います! その結果で順番を決めよう!」



「実力的には橘さんが大将の方がいいんじゃないですか?」



「みくちゃん強いけど、大会だと結構アガり症なのよね♡」


確かに、普段からアガり症の感じはある。

橘さんの方を見ると少し困った顔をしていた。



「それにもしかしたら今日は中山君がみくちゃんに勝てるかもしれないからね♡」


煽りに聞こえたが、まぁ無難な決め方だと思った。


西蓮先輩はホワイトボードに対戦表を書き始めた。


西蓮 対 中山

西蓮 対 橘

中山 対 橘


「よし!これでいこう!戦績が一緒だった場合は… その時考えましょ♡」


「じゃあ中山君まずは私と対戦ね!」


「わかりました。よろしくお願いします。」



西蓮先輩と対戦するのは始めてだった。

見た事はあるけど、プレイスタイル的にはガンガン攻めるタイプだ。


「中山君が使うキャラはわかってるのよ!

私のキャラの方が有利なんだからね!」


確かに格ゲーはキャラの性能が色々あって

キャラの有利不利がつくことがある。


でもそれはプレイヤースキルで、補える物だと僕は思っている。



(結構攻めて来るけど、攻め方が少し単調だな)


相手の攻めに合わせた戦い方で西蓮先輩を倒した。



「わぁー!中山君守ってばっかでずるいよ!」


「ガンガン攻めて来る人にはこれが正解だと思いますよ。それに攻め方も単調ですし。」



「むぅ… でも2先だからこれ!もう1回!」


後付けルールじゃんと思いながら2本目も同じ感じで西蓮先輩を倒した。



「あーあ!中山君カウンターばっかり狙って!私全然勝てなかったじゃん!むぅ…」


西蓮先輩は頬を膨らませて怒っている。でも格ゲーは結果が全てなのだ。



「まぁあれだけ攻められたらこうなりますよ。まぁ次橘さんとなんで頑張ってください。」



「よし!じゃあみくちゃん早くやるよ!」


「うん。かなちゃんいつもみたいにハンデいる?」


(いつもハンデ貰ってるのか…まぁ実力差はあるしな…)



「今日はいらない!それに2先だし、みくちゃんとはいっぱい対戦してるから人読みも出来るんだからね!」


格ゲーをするにあたって癖が出る時がある。それは沢山同じ人と対戦しないとわからないものだから西蓮先輩の言うことも一理あるが、それは橘さんにも同じ事が言える。



「今日は勝ってその可愛い顔に泥を塗ってやるんだから!」




結局西蓮先輩は、僕の時よりボコボコにされてあっさり負けた。


「西蓮先輩。僕の時よりボコボコでしたよ。」



「ふん! 早く2人で対戦したら!」


少し拗ねたのか、部室の角で体育座りをして僕らを睨んでいた。


「まぁ、西蓮先輩も弱くないんですけどね… じゃあ最後僕と対戦しますか。」


「はい。よろしくお願いします。」



橘さんとの対戦が始まった。この部活に入ってから橘さんと対戦する機会が多くなり、勝てる回数も少なからず増えていた。



(なんだか少し動きが鈍い気がするな…)


橘さんにしては珍しいミスをして、1本目は

僕が勝った。



「どうしたんですか。珍しいミスしましたね。」



「普段は大丈夫なんですけど、大会に出ると思うと少し緊張しちゃって…」



橘さんは落ち着こうとしているが、みるからにそわそわしてて、緊張がこちらにまで

伝わってくる。



「橘さんなら大丈夫ですよ。未だに僕は橘さんに、勝ち越せないですしそれに

…」



「…なんですか?」



「対戦に集中してる時の橘さんほんとに楽しそうで、笑顔でやってる所見るの僕結構好きなんですよ。だから結果は気にせずにいつも通りで大丈夫だと思います。」



「えぇ… 恥ずかしい事言わないでください…」


橘さんは顔を手で隠したが、耳が赤くなっていた。僕としては励ましたつもりだったのだが。


「でもありがとう。中山君と普段対戦してる時は凄く楽しいよ。」


橘さんは、笑顔でそう言った。少し顔が熱くなった気がした。


「じゃあいつもの感じだと思って対戦してみるね。」



「はい。お願いします。」


橘さんは、いつものように対戦をしていた。

楽しそうにしてる様子はなんだかとても眩しかった。こんなに楽しそう格ゲーをする人は初めてだった。



結局僕は2本取られて橘さんに負けた。だけど対戦中は僕もすごく楽しかった。


(2人ともほんとに楽しそうに対戦するわね。

なんだかずっと見てられるわ♡)


「よし!じゃあ結果も出たし大将は…」



「…あの、かなちゃん。」


「どうしたのみくちゃん」


「確かに私が勝ったけど大将は中山君がいいと思う…」



橘さんは、何故かそう言った。実力的には橘さんが一番強いと思うのだが。



「ふーん。どうしてなのかな♡」

何故か西蓮先輩はニヤニヤしている。



「中山君が大将なら私、安心して対戦できると思う…」



意外だった。橘さんがそんなに僕の事を信頼してるとは思わなかった。


「なるほどね! じゃあ先鋒は私で、中堅はみくちゃん。大将は中山君で異論ないかしら?」



「橘さんがそう言うなら僕はそれで大丈夫です。」



「中山君ありがとう。大会一緒に頑張ろうね」



橘さんはとても笑顔だった。




やっぱり今日はなんだが顔が熱い気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る