第7話 格ゲーにしか興味ない僕に言われても…

「優、最近学校はどうだい?」


「ぼちぼちやってるよ」



父さんと母さんは格ゲーのプロゲーマーだ。

世界中を飛び回り、大会に出場して結果を出してる人だ。 2人ともほとんど日本には居ないのでこうやってたまに電話をするようにしている。


「そうか。順調ならいいんだ。なにか困ったらいつでも言ってくれ。」


「ありがとう父さん。母さんは元気?」


「母さんも元気だよ。今は少し休憩してる。代わろうか?」


「いや、元気ならいいんだ。身体に気をつけてね2人とも。」


「優もな。あんまり遅くまで練習するなよ。また電話するね。」



両親は、僕にとって、とても尊敬している人達だ。親としても、プレイヤーとしても。

僕の夢はプロゲーマーになって2人のチームに勝って大会に優勝する事。

その為にはちゃんと毎日練習しないといけない。



「そういえば、部活用のアケコンを買いに行かないとな。いつも西蓮先輩のアケコンを借りてるけど女性用だから少し小さいんだよな。」



プルル



じょうたろうからの電話だ。



「お疲れー。優明日なにしてる?」 


「明日? 休みだから買い物に行こうと思ってたけど。」  


「ちょうどよかった! 俺も行っていい?」  


「別にいいけど」 


「じゃあ明日13時に駅前で! よろしくー!」  


日曜日に出掛けるのは久々だ。時間があれば格ゲーをやってたし、買い物も基本

ネットで買っていた。

だけど今愛用しているアケコンはもうネット販売しておらず、駅前のPCショップにしか置いてないのだ。そこで他のパーツも揃うのでたまに行ったりする。


「ボタンとレバーもいいのがあったら買おうかなー」  


「とりあえず今日はこの軸でのコンボ開発っと…」



《日曜日》


少し寝坊し、ちょっと遅れて駅前に向かった。じょうたろうは既にいて相変わらず

時間にルーズだと馬鹿にされた。


「そういえば優はなに買うんだ?」 


「部活用のアケコンと足りないパーツ。」


「あー。eスポーツ部だっけ。まぁ珍しい部活に入ったよな。優っぽいけど。」

「ちなみに俺は、新しいトレーニングウェアを買う!マネージャーはどんなのが

好みかなー!」


ほんとにマネージャー目当てで部活に入ったらしい。話すと長そうだし、興味もないので軽く聞き流した。


「でさ、そのeスポーツ部ってどんな人がいるんだよ!」 


「僕以外に2人しか居ないけど、別に普通にゲーム好きって感じだよ。」


「なんだ、ゲームオタク系ね。まぁいいと思う。」


明らかに、テンションが下がっていた。何を期待していたのだろうか。



じょうたろうの買い物を終え、僕らはPCショップに来た。最新のゲーミングPCや

モニター、色んな機材が売っている。格ゲーマーに限らず、世のゲーマーが

テンションが上がる場所だ。 


「うわ、なんでこのパソコン光ってるんだ。目がチカチカするじゃん…」


ふん。一般人にはわかるまい。これがかっこいいのだ。


「とりあえず優の欲しい物よくわからないから適当にぶらついとくわー」


「おけー。」


(そういえば最近プロゲーマーが開発したレバーが発売されてたな…あれば試しに

買ってみるか) 


アケコンパーツの事で胸を膨らませながら、ゲームパーツコーナーに向かったら

見覚えのある女の子がニコニコしながらアケコンパーツを見ていた。


「橘さん。こんにちは。」


「ひゃっ!… な、中山君…!?」


そんなに驚かなくても… 少し悪い事をした気分になった。


「ど、どーも。橘さんは何買いに来たんですか?」


「私は、新しく発売されたレバーが気になって見に来たんです…実物を見たかったので。」


そこには僕も気になっていたレバーが置いてあった。


「あー!これですか!僕も気になったんですよ!見た目結構かっこいいですね!」 


少し興奮していたら、橘さんがクスッと笑った。


「ふふっ 中山君って普段クールなのに格ゲーの事だと、興味津々なんだね」


確かに格ゲー以外興味はないが、橘さんに笑われて少し恥ずかしかった。


「た、橘さんは、このレバー買うんですか?」


「んーまだ、今のレバー調子いいし、少し気になってただけだから。」


格ゲーの話だと、普通な感じで喋るんだ。普段はあまり喋らない印象だったから

少し変な感じがした。


「そうですか。僕は買うつもりなんで今度使ってみますか?」


「え いいんですか… でも人のレバーを使わせてもらうのは…」 


そういいながら、目はとてもキラキラしていた。


「全然いいですよ。僕は気にしないですし、部活用で買うアケコンに取り付けるのでいつでも貸しますよ。」


「…じゃあ明日借りてみるね」 


早速明日、借りるのか。橘さんもやっぱり格ゲーが好きなんだな。


「じゃあまた明日、学校でね中山君」


少し話したからなのか、アケコンを借りれるのが嬉しいのかわからないが、笑顔で

手を振って駅の方に歩いていった。





「…おい」


振り返ると、なぜか怒っているじょうたろうが居た。


「あ、ごめん遅くなって。待たせたね。」


「そんな事はどうでもいい…」


「…?」


「誰なんだよ!! あの超絶美少女は!!女っ気0のお前がなんであんな仲良さそうに話してたんだよ!!裏切りか!?」 


「お、落ち着けよ。eスポーツ部の部員の人だよ…」


「は?…お前…」


俯きながら体をプルプルさせている。相当怒っているようだ。


「お前!部員はただのゲームオタクって言ってただろ!!あんな超絶美少女居るなんて聞いてないぞ!」


「いや、ほんとにゲーム好きの人なんだって。現にこの前対戦してまけ…」  


「ちょっとまて!!!」 


「…なんだよ。」


「もう一人居るって言ってたよな。まさか女の子じゃないよな?」


「…女の先輩だけど」


「お前!!eスポーツ部とか言ってめちゃくちゃハーレムしてるじゃんか!!

こっちは慣れない運動部で必死で練習してマネージャーにいいとこ見せようとしてるっていうのに!!お前は涼しい部屋でハーレムしやがって!!!」 


帰るまでひたすらじょうたろうは文句を言っていた。




ハーレムって… 格ゲーにしか興味ない僕に言われても困る。






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